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葉山アロマンス調香師 森日南雄②

調香歴50年以上、日本調香技術普及協会の理事を務め、香りの啓蒙活動にも取り組んでいるHAYAMA AROMANCEの調香師、森日南雄のご紹介です。

Q:森さんはHAYAMA AROMANCEの調香のお話をいただいた時にどう思われましたか?

3年前でしたか?ある日、誰の紹介もなしに突然尋ねて来られて驚きまた。
お話を聞くと、私がたまたま日経BPの取材を受けた記事「香りとブランドづくり」をお読みになって来社されたのがきっかけでした。

真海さんが参考品として持って来られたのがサンタマリアノベラでした。
しかし、その時はまだお考えのイメージが湧かないので、葉山のお店にお伺いし町周辺を案内していただきました。

Q真海さんから森さんへ作っていただきたい香り、最初は「ルリバージュ」と「インペリアルヴィラ」の2種ですが、言葉と画像でイメージを伝えサンプルを数種類試作で作っていただいたとのことですが、森さんは最初、どんな香りを作られたんですか?

前置きが長くなりますが、私は東京生まれですが、幼少時神奈川県の秦野に引っ越し、丹沢連邦の懐に抱かれた自然豊かなところで育ちました。
丘陵の裏山が遊び場でした。とは言っても夏場は、真鶴、小田原、大磯方面へ海水浴や釣りでよく行きましたが、葉山はあまり馴染みがありませんでした。

今回、アロマンスの仕事でHAYAMA MARINAのお店を尋ねたときが初めてでした。第一印象はグラースで研修をしていた場所から、コートダジュールまで車で30分位の小さな港カンヌのメージにとても似ていました。
葉山はニースよりは小さな港まちカンヌの方がイメージに近いかな。
もちろんカンヌは葉山より大きな港町ですが、葉山は都会の喧騒から離れて佇む、後ろに丘陵が迫り、海側からは遠くに富士山を望める素敵なこじんまりした港町で、一目で気に入りました。

さて、ご質問の香りについてですが、最初お見せした香りは出来合いのもので、頂いたコンセプトとは違うものでした。
「インペリアル・ヴィラ」は御用邸のイメージに近い、歴史的名香ウビガンの「フゼアロワイヤル」(1882年)、「ル・リヴァージュ」は海岸通りのイメージに合った、いわゆるアクアティックな流れを汲んだイッセイミヤケの「Eau d'Issey」やディオールの「Eau Sauvage」などの香りからヒントを得ました。
もちろんコピーではなく、現代的な新しい素材に置き換え、葉山アロマンスのイメージに合わせて作りました。古きをたづねて新しきを知る、いわゆる「温故知新」ですね。

Imperial villa

Q最初に誕生した「ル・リバージュ」と「インペリアル・ヴィラ」の香り、そして昨年誕生した香り「アロマンス・オードリー」、それぞれの香りを先ほど会場の皆さんに試香していただきましたが、改めて調香された森さんから使用された香料やハーモニーについて解説をお願いできますか?

「インペリアル・ヴィラ」は先ほど申し上げたフゼアロワイヤルはラベンダーが主成分で男性的なイメージが強い香りなので、これを減量し、女性にも好まれるローズマリーを加えたり、土臭いパチュリは、洗練されたパッチョリの匂いがする、ニューケミカルClearwoodで代替したり、天然ジャスミンはへディオンなど、いわゆる換骨奪胎して作り上げました。

「ル・リヴァージュ」は葉山の海岸に吹く風に乗って漂ってくる海辺の匂いをアクアティック・マリンノートとして、フローラゾン、ヘリオフレッシュなど、グリーンノートとしてトリプラール、ステモン、当初オードイッセイに使用されたキャロンを入れたのですが、真海さんや杉岡さんからメロン臭いと言われ、上記品に置き換えました。
またアロマンスのアイコンであるミモザアブソリュートも使い、全体を透明感のあるアクアティック・フロール調に仕上げました。

Le Revage

「アロマンス・オードリー」は大学の近くにあった神楽坂の映画館佳作座で観た「ローマの休日」で演じた彼女に一目惚れ!キュートでお転婆なところと、凛とした佇まいを備えた彼女の人生を香りで表現してみようと思いました。
晩年は国連のユニセフ親善大使として、最貧国の恵まれない子供達のために世界中を飛び回り尽くした人格者であるからです。

トップノートは青春の息吹を感じさせる、ガルバナム、スミレ、カシス、ミドルノートはミュゼ、ブルガリアローズ、アイリス、ベースノートは心を癒す、上品なパウダリー感のあるシダーウッドウッドムスク、神秘的なフランキンセンスで表現しました。

aromance Audrey

Qナチュラルレイヤードアロマについては、森さんはどんな点が面白いと思っていらっしゃいますか?

NLA(ナチュラルレイヤードアロマ)のコンセプトは前作3点と全く違う観点から、天然精油100%の2〜3種の精油を組み合わせたアコードを作り、既存の香りに重ねて使用できることにしました。
現在のハイファッション・シーンの中で、ファッションの世界でもテーラードとレイヤードを組み合わせた、ニューレイヤードルックが脚光を浴びています。

2024年秋冬コレクションでも、サカイ、ルイ・ヴィトンのメンズ、ヨージヤマモトプーオンムでも披露されています。
香りでも、テーラードとして「インペリアル・ヴィラ」や「ル・リヴァージュ」に好きなNLAを重ねて、好みの香りを作ってみてはいかがでしょう。

Natural Layered Aroma

HAYAMA AROAMNCE 


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