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葉山アロマンス調香師 森日南雄①
調香歴50年以上、日本調香技術普及協会の理事を務め、香りの啓蒙活動にも取り組んでいるHAYAMA AROMANCEの調香師、森日南雄氏のご紹介です。
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Q:森さんは大学卒業後に国内大手香料会社に入社、1975年に渡仏し、南仏グラースにある香料会社ルールベルトランデュポンの香料学校で研修生として調香を学ばれたということですが、その頃のエピソードや、どんなトレーニングをされたのか、教えていただけますか?
香料会社のルールベルトランデュポンは、現在、世界最大の香料会社ジボダン の前進の会社です。1975年前後の当時、すでに日本人の研修生は何人かいました。日本の香料会社は当時フランスに比べある意味、後進国扱いで香料を買ってくれるお客様扱いで優遇されました。
学校では(故)主任調香師のジャン・カール氏が確立した近代的メソッドによる調香方法に従って学びました。
現在ではISIPA、GIPなどの民間の香料学校がありますが、それまでは調香を体系的に学ぶ学校はありませんでした。
単品香料(天然・合成)の記憶から始まって、各種フローラルアコード、ジェーマ、歴史的名香のコピーからクリエーションまで一通り学びました。
また、学校でラベンダー畑やジャスミン、ローズの畑の見学会や、研究所、パリの合成香料の製造工場などの見学もあり、体が自然に香りを覚えていきましたね。
このほかロベルテでも3ヶ月、研修させてもらいました。
一年足らずの滞在でしたが、よく学び、よく遊び、グラースの香しい空気を吸うことができたことが何よりの思い出となり、現在のクリエーションの肥やしになっています。
50年以上経った今でも、改めて思うことは、なんと言っても一つ一つの素材の匂いを覚えることが如何に大事か、これ無くして新たなクリエーションは生まれません。
「調香は素材に始まり素材に終わる」の一言に尽きます。
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Q:日本に戻られてからも香料会社で調香師として、国内外の多くの香りのお仕事に携わっていらっしゃったとのことですが、どんなお仕事を担当されていたのでしょうか?
最初に入社した香料会社では、香水だけではなく香りにまつわる様々な製品、例えば、芳香剤、入浴剤、ヘアケア、トイレの消臭剤の基材などの研究もやりました。いわゆる二足の草鞋を履いて仕事していました。
これらの製品は香水と違って大きく違う点は、例えばヘアケアや石鹸、消臭剤などは基材ごとに酸性からアルカリ性までphが異なり、香料の安定性を求められます。
アルカリ性であれば香料によりますが、加水分解により変臭、分解を起こすものもあります。またphだけでなく、温度、光(紫外線)により、変色、変臭も起こします。
これらの製品の香りを作るときは、それぞれの基材に安定な香料素材を選択して調香します。大学で化学を学んでいたので役立ちました。
一方香水は基本的に、アルコールと水と香料のみで作るため、上記のような制約があまりないので比較的楽です。ただし、香料の安全性について留意する必要があります。IFRAという国際的な香料規制に従って調香することが義務付けられているからです。
もちろん、これは香水に限ったことではありません。
海外の仕事は、欧米はもとより、東南アジアを中心に海外出張へはよく出かけました。
また1996年から半年ほど、パリで駐在を兼ねて、欧州全域の大手香料会社やP&Gなどのグローバル企業へ、スペシャリティケミカルを売り込みなどもやっていました。オペラ座の近くのホテルに一人住まいで、延べ50回以上、出張を繰り返しました。
当時はメールがなくファックスでのやりとり、電話も携帯がなくオペレーター経由でした。大変でしたが、今となってはいい経験をさせてもらったと思います。
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手がけたフレグランス製品の中に思い出に残るのは1980年代、資生堂との共同研究の一環として売り出されたシャワーコロンのジャスミンの香りや、カネボウの香水「レディエイティ’80」も懐かしいです。
今も、ブランド名は出せませんが皆さんご存知大手サロン系ヘアケアー製品の香りも作っていますよ。
フレグランス製品以外でもトイレの消臭剤でJohnson Waxの”シャット”が思い出深いです。
当時は水洗が普及していない汲み取り式でしたが、悪臭を化学的に中和し、香りもそれまでにないフレッシュミントの香りで大ヒットしました。
それまでは、樟脳油のようないわゆる便所臭い製品が多かったです。そんな訳で、ウンチの臭いの研究では蘊蓄があります。
なんでもやるオールラウンドパヒューマーです。
香料会社を辞めて、3年前からフリーランスとして独立し活動していますが、自分の思い通りの香りを創れるのが楽しいです。
HAYAMA AROMANCEの香りは真海さんや杉岡さんとキャッチボールをしながら作り上げています。
一人では独りよがりになってしまうこともあるし、マーケットに出る製品は嗜好性がありながらも個性も持たなくてはいけないので、ここに並んでいる製品はHAYAMA AROMANCEチームワークの結晶です。
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葉山マリーナ