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人にシステムを合わせる時代へ
今日は休日。
GWの北海道の田舎町にも遠くのナンバープレートを付けた車が沢山やってくるし、僕たち行きつけのカレー屋さんはきっと大行列。
このインデアンの強みは”お客さんのリクエストには基本的に全て応える”姿勢。
ルーの種類、トッピング、辛さ、様々な組み合わせが自由自在に注文する人の好みに合わせて。
その注文内容を基本的には鍋を振っている1人が全てこなしていく。
こんなの、絶対に自動化できないし、してほしくないし、猫型ロボットには絶対ムリ(笑)。
ただ、こうした現場の自動化はできないとしても、その現場を支えるバックボーンの仕組み自体はいくらでもITを活用して効率化したり、データ活用の場面を増やすこともできるはず。
”属人化すべき箇所” と”ITの力を活かす箇所” の棲み分けをどう捉えるかが経営者の矜持や姿勢に明確に現れると思う。
と、前フリはさておき、以前から僕が違和感を感じ続けていたことへの決定打みたいなことがいま、実際に起きているのでその話題について。
よくある”悪者探し”の記事は苦手なので、そもそも、なぜこういうことになってしまったのだろう? ということを僕の目線で考えてみます。
※グリコ本社からの公式発表等が非常に少なく、想像の範囲で喋っている事も少なくありませんので、その点はご了承を。
ERPはデータを統合し一元化することに最大のメリットを生む仕組み
今回、ERPパッケージソフトのSAPと某コンサルティングファームが槍玉に挙がっていますが、そもそもの原点を見ていくと、当初は別会社だったグリコ乳業をグリコ本体に吸収合併したことが原点にあると思います。
組織を一体化したのであれば、販売や生産の現場でもシナジー効果を生むためにできるだけ情報の一元化とデータ分析・活用力を上げることを目指すのは当然の流れ。
そんな中で、SAPの導入が図られ、紆余曲折はあったにしても安定稼働していたんだと思います。
そして、SAPがクラウド主体のバージョンへの変更を強いられるなか、当初別会社だった2社が動かしていた別々の仕組みをこのタイミングで統合化しようとしていたのではないかと。
いま出荷ができていないチルド商品=元グリコ乳業での扱いだとしたら、システム障害による影響範囲にも納得がいきます。
ERP(Enterprise Resources Planning)の中でもSAPの場合は、世界規模で調達・商売しているようなグローバル企業が”我が社のシステムはこれだ!”と現場よりも強い権限で導入を図ることによって成り立つような仕組み。
データを一元管理し、生産から販売、会計へと一気通貫できると非常にシンプル。しかし、そのシンプルさを求めすぎると現場に必ず歪みが生じます。
システムの堅牢性が現場の柔軟性を失わせる
ERP統合型パッケージソフトはデータの一元化が力の源泉。その一方で現場で生み出されてきた様々な工夫やちょっとした個別対応などはことごとく”例外処理”として切り捨てられるか、どうしても必要な部分は”アドオン機能”として加えられていく。しかし、このアドオンを多発させると大本のパッケージソフトとしての強みが消えていってしまうので、システム導入を進めるベンダーは基本的にはシステムの堅牢性を優先し、現場はそれに合わせて業務フローを改善するように求められる。これによって導入コストと期間を予定通りの納期に合わせることができるからです。
一昔前の世界経済だったらこの流れでも良かったのかもしれません。大量生産・大量消費が基本。”規模が正義”とも言えた時代。
しかしいまは、都会よりも地方。大ヒットよりも個人の嗜好がヒットに繋がっていくような時代。
現場の持つ強みや知恵をいかに活かしていくかが大切だし、切り捨ててはいけない部分。
そう考えると、SAPのようなERPパッケージをシステム優先で導入しようとすることが本当にお客さんの喜びにつながっていくのかどうかが甚だ疑問に思えてきます。
いかに現場に落ちている”お客さんからの声”や”知恵”を拾い上げて社内で共有し、活かしていくか。
デジタル・アナログ両面で情報系の仕組みを整えると共に、ERPパッケージが得意なバックボーンとなるような処理系の仕組みは属人化しないように最大限効率化を考え、ITの力を活かしていく。
何でもかんでもITを中心に据えるとろくなことにならないっていうことを今回のグリコのシステム障害の事例は教えてくれているのではないかと思う。
昔はスーパーでプリンを買おうと思っても売ってなくて、あのプッチンプリンは憧れの的でした。
でも、いまはコンビニでももっと美味しいプリンを沢山売ってるし、それよりも子どもと一緒に美味しいプリンを作るためのレシピだってネットで探して、作るところから楽しむこともできる。
だからこそ、プッチンプリンにできることもきっといろいろあるはず。ただの販売データ上の数値として扱うのではなく、その先にいる子供達やお母さんがどんなシーンで食べてくれるかを想像したり、提案したりできるようなITの利活用がいまは本当に必要なシステム化に繋がるんじゃないかと思う。
人にシステムを合わせる時代
”効率化”・”一元化”の名の下にシステムに人を合わせる時代がずっとつづいてきましたが、これから先は”人にシステムを合わせる時代”。
そうなってほしいとずっと願い続けてきて、ようやく時代が変わってきた気がします。
先日、NHKで放送していた探検ファクトリーで登場したオタフクソース
”お好み焼きが主役で、その主役を引き立てるのがソースの役割”と言い切っていた言葉がとても印象的でした。
ITは主役ではありません。
本当に引き立てるべき主役は何か?
今回のシステム障害を他山の石として捉える為にも考えておきたいお話です。