牛乳のシンプルなお話
いま、皆さんに牛乳を飲んで欲しい!っていうキャンペーンが大々的に行われていますが、このあたりの事に触れる前に、そもそも、牛乳や乳製品についての基本的なことをまとめてみることにしました。
できるだけシンプルに。ややこしいことは抜きにして。
牛乳の基本的な計算式
牛乳は、”水”、”乳脂肪分”、”無脂乳固形分” この3つに分けられます。
無脂乳固形分については、後ほど詳しく説明します。
さて、この3つをどないかしてバターやらチーズやらができあがるわけですが、
バターはおよそ4%前後、無脂乳固形分は9%前後と考えてください。
バター = 乳脂肪分
バターは乳脂肪分100%。まじりっけ無しです。
バターを増やすと必ず、”脱脂粉乳”が増える
牛乳を原料にして取れるバターは約4%程度。バターを取ったあと、水分を飛ばすと無脂乳固形分が脱脂粉乳として残ります。
脱脂粉乳ってなに?
ここに詳しく書かれていますが計算式にすると
脱脂粉乳 = 牛乳 ー 乳脂肪分 ー 水
こんなふうに、牛乳から乳脂肪分を除き、水分を飛ばしたものです。
無脂乳固形分の粉末みたいなものです。脱脂粉乳は長期保存が可能。
また、バターも脱脂粉乳ほどではありませんが、長期保存が可能。
だから、バターと脱脂粉乳は需要と生産の調整弁としての役割を普段から果たしている訳ですが、冬場どうしても牛乳が余剰気味になってしまうのは、次の理由が大きいと思います。
乳牛は寒さに強く、冬場は乳量が増加気味になる
乳業メーカーの各生産ラインは簡単に変更できない。処理能力には限界がある
学校が冬休みになって給食用の牛乳需要が消える
おおよそ、この3つの要因が毎年繰り返されるのですが、これに加えて今年はコロナ禍が続いてきた事による業務用の需要低下による在庫増が積み重なってきた為に、生乳を処理しきれなくなってしまう可能性が出てきたということ。
酪農家にできる生産量を減らす工夫
酪農家はこれまで増産基調でやってきましたが、今はそれが厳しいので、早めに乾乳(=分娩前の牛は乳を搾らない)にしたり、配合飼料を牛の体調に影響が出ない範囲で調整して乳量を減らす等の工夫をしています。ただ、それでも、毎日必ず搾ってあげないと病気になるので搾乳自体を止めることはできません。
みんな、今の枠組みの中でできることを頑張ってる
乳業メーカーもどうにか処理量を増やそうとあれこれ工夫してくれています。ただ、それでもやはりできることには限界があって、どうにか冬休みが終わって、子供たちの給食が始まる頃までの牛乳・乳製品をより多く消費して欲しいというのが、実情です。
ファットスプレッド・マーガリン
「パンにはやっぱりネオ○○○」って有名なCMがありますが、僕もずっと今までマーガリンだと思っていたら、ファットスプレッドに分類されるんですね。
”価格”よりもバターを食べる喜びを
元々マーガリンやファットスプレッドはバターが高級品で手に入らない時に代替品として開発されたもの。価格はバターよりも安価で手に入ります。
しかし、乳脂肪分100%のバターをパンに塗って食べる味わい・喜びはマーガリンとの違いがすぐに分かります。バターの一般家庭での消費が増えれば、乳業メーカーも一般向けの製造ラインを大きくすることができるので、より多くの生乳を使うことができます。
増産一辺倒からの方向転換
酪農はここ最近、TPP対策や酪農農家数の減少に対応するために大規模化・増産基調でやってきましたが、こうして経済全体の規模感がコロナで縮小し、少子高齢化でさらに市場も小さくなっていくことを考えると、そうした小さな経済の中でも生乳を無駄にせずに済むような方法を改めて考えるべき時期にいるのかも知れません。答えが簡単に出る問題ではありませんが、いずれは向き合うべき課題だと思います。
今日も牛達は元気です
牛は、こうしてゴロンと寝ている時にお腹の中で生乳を作っています。一番働いている時と言っていいかも知れません。
見た目には寝ていますが・・(笑)。いろいろと大変なことがありますが、牛達は今日も元気です。コロナが落ち着いたら、またこうした現場にも触れて貰える場所を提供していきたいですね。実際に現場を見てもらうときっと、牛乳やバターを見る目が大きく変わると思います。