クオンタム・スパイダー読書 『法力とは何か~「今空海」という衝撃』老松克博著を読む 3.
『法力とは何か』
“〜〜繰り返しになるが、語りの理解にはユング心理学の枠組みを用いる。法力を探究しようとするなら、言葉の字面をなぞるのでは足りず、語りえぬものの象徴的な現れを捉えなければならない。ユング心理学は、個人に由来するあらゆる表現のなかに象徴を探し、深層における不可視の文脈を見出すことに長けている。~~
いきなり「象徴」といってもわかりにくいと思うので、今は次のことを知っておいてもらえばよい。個人の心は個人的な内容だけでできてはいない。深層に降りていけばいくほど、心は非個人的、超個人的な色彩を帯びてくる。誰もが共通に持って生まれてくる、さまざまな心的要素や活動パターンがつまっているのである。それらは言語以前のものであり、象徴によるのでなければ表現することも経験することもできない。宗教性にまつわるあれこれはそのような水準に属している。
象徴として見出される深層の文脈は、その語りに秘められている普遍的な意味合いを指し示す。本書で扱う法力は、X阿闍梨という一個人をめぐっての現象であるにはちがいないが、ユング心理学による理解は、その超個人的で普遍的な本質を照らし出す。
阿闍梨に会いにいく
〜〜〜
彼女が先に私から話すように促してくれたので、その言葉に甘えて、阿闍梨にいきなり行や法力に関する質問をした。詳細は割愛するが阿闍梨はていねいに答えてくれた。~~~
けれども、弘法大師像は異質だった。何の気なしに正面に立った瞬間、厨子の奥の漆黒に見える像から予期せぬ強烈な圧が来て、身が竦んだ。”
■画像はヤフー法力画像、好奇心画像、弘法大師画像より。