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『目覚めるアメリカ仏教』を読む5.参照:●『目覚めるアメリカ仏教』ケネス・タナカ(武蔵野大学名誉教授)著

“その他の仏教徒/仏教共感セレブたち     他に仏教と深い関わりを持つ各界の有名人としては、芸術家のミルトン・グレーサー、ジャズ・ピアニストであり作曲家のハービー・ハンコックなどが挙げられる。また、世界的に有名なゴルファーのタイガー・ウッズは、タイ国出身の仏教徒の母親を持ち、彼自身が仏教徒であることを認めている。そして詩人のゲイリー・スナイダーはビートニク世代を代表する詩人だが、アメリカ仏教におけるキーパーソンである。彼については後に詳述する。
その他の注目すべき仏教徒として、フィル・ジャクソン(一九四五〜)を挙げておこう。NBAバスケットボール監督として長年マイケル・ジョーダンのいるシカゴ・ブルズを率い、その後ロサンゼルス・レイカーズの監督にもなり、優勝一〇回という前代未聞の成果をあげている。彼は自身を「仏教徒である」とは断言しないが、「ブディスト・クリスチャン」(仏教に共感するキリスト教徒)と自称している。後に説明するナイトスタンド・ブディストである。
彼は監督として、仏教、特に禅を拠り所とした。彼は選手たちをリラックスさせ、集中力を高めるのにメディテーションを導入している。そしてマインドフルネス(念じ、深く注意すること)というメディテーションの効果をこう説明している。
“マインドフルになるためには、鈴木(俊隆)老師が言われる「初心」、いわゆる自己中心的な考えから解放される「空」の心の状態を養成しなければならない。老師は『禅マインドビギナーズ・マインド』という本に、「心が空であれば、いつでも何にでも対応でき、あらゆることにオープンでいられる。「初心」にはたくさんの可能性があるが、「専門心」にはほとんどない」と述べておられる。
現代アメリカ社会では、一般に「負けること」は、ある意味で「失敗」と見るため、試合に負けることや、その苦についての深い哲学はあまりない。しかし彼は、負けることは失敗でも恥ずかしいことでもなく、勝つことと同様に試合の一面である、と指導した。それは死を受け入れ、生きることを発見する、という仏教の考えによると述べている。
仏教精神の理念に基づき、「苦」こそが成長の要因であることを提唱し、実践に生かすことで、マイケル・ジョーダンやコービー・ブライアントのような天才選手たちを巧みに指導し、チームをまとめて偉業を成し遂げたのである。”

画像はナショナルジオグラフィックより。

■アメリカは言わずとしれたプラグマティズムの国である。神聖不可侵の神の領域以外では、徹頭徹尾、実益性が評価される。仏教といえども、その冷徹な視線を受けなければならない。そしてすでに、1世紀に渡りチベット仏教が西欧知識人のバイブル化していると考えられる。日本仏教は大陸と半島を経て、高度に思想哲学性を高めた、根本仏教(釈迦牟尼世尊直伝仏教)周辺の仏教的な思想哲学をコアとする信仰・教義・儀式宗教である。釈迦牟尼直伝仏教が9世紀に直接インドから、偉大なパワーを持つパドマサンバヴアによりもたらされたチベット仏教のような、成ブッダ技法の維持発展面では、全くかなわない。唯一、パドマサンバヴアやミラレパに匹敵する仏教者は弘法大師空海と数人の密教僧のみである。その密教にしてもこの1世紀、ヨーガ、瞑想、より釈迦牟尼直伝仏教に近いチベットやブータンの仏教から成ブッダ技法エッセンスを取り入れた原点回帰の研鑽改革を怠ってしまい、霊力法力面での衰退は否めない。このまま日本仏教が、逆輸入されるZENやマインドフルネスにあぐらをかくだけならば、チベット仏教の深奥にある脳や体内経絡開発により、初歩的ブッダ技法に達した超人的白人僧侶に弟子入りすることになるだろう。ま、それもいいか。日本人らしい。

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