「早池峰と賢治の展示館」浅沼利一郎さんの魂(前編)
「早池峰と賢治の展示館」の浅沼利一郎さんが、去る10月21日にお亡くなりになられました。浅沼さんはこのnoteの記事にも登場いただき、このnoteの記事の内容の多くは、浅沼さんから教えていただいたお話です。
いろいろと整理がつきませんでしたが、やっと記事を書くことができました。なお、「早池峰と賢治の展示館」は、今も変わらず元気に開館中です。
花巻市の大迫に暮らした浅沼さんは、10代の頃から早池峰に登り始めて以来、早池峰への登山回数が3000回を超えたという、早池峰の生き字引のような方でした。
早池峰の自然や大迫の歴史についてはもちろんですが、花巻出身の偉人・宮沢賢治についても造詣が深く、賢治と早池峰や大迫との関係性について、地元の方々と一緒に考察を深め続けました。
早池峰と賢治の展示館は、そんな浅沼さんや大迫の方々が、本や資料から、そして自らの足を使って調べた成果や収集物が並べられた施設です。展示の切り口が他の施設とは異なる部分も多く、賢治作品の理解に大きな刺激を与えてくれます。
山や自然、歴史や信仰などに深い興味や理解を持っていた賢治にとっては、生まれ育った花巻エリアの東に鎮座し、自然や信仰の歴史など、様々な魅力に溢れた山が早池峰です。これまでは、盛岡エリアの北西に位置する岩手山やその麓の小岩井農場と賢治の関係が多く取り上げられがちです。しかし、同じ花巻エリアにあって岩手を代表する霊山・早池峰と賢治の関係が取り上げられる機会は少ないのは、とても不思議にも思えます。
そのような状況に疑問を感じ、長年にわたり地道に、早池峰や大迫と賢治の関係について探求し、その成果を紹介し続けたのが浅沼さんや・地元大迫の方々です。
浅沼さんの視点は、自らの足で山に登り風を浴び、かつての賢治も感じたであろう早池峰の霊気に触れて見つけたものです。浅沼さんは、多くの賢治ファンに対しても、まずは山へ、早池峰へと入り、自らの足を使いながら体で感じることを、常に勧めていました。
私自身も浅沼さんの薫陶を受け、訳も分からず暴風吹き荒れる早池峰への登ったことをきっかけに、その後、岩手や東北などの山へ登る機会を得ました。浅沼さんの登山歴と比べると無きに等しい私の登山体験ではあるものの、平地ばかりをウロウロしていたこれまでの体験と比べ、知らない世界の扉が開いたような気がします。
・・・後編へと続きます・・・