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ちゃんと書いたら、言葉が憧れの人との出会いを連れてきた話


自分の言葉でちゃんと文章を書いたら、憧れの人に見つけてもらえた話をしようと思う。


仕事柄、なかなか気軽に遠くの土地へ旅に出たり、そこにいる人に会いに行ったりというのはスケジュール的に難しい。そのストレスの反動もあって、昨年も今年も約10日ほどの夏休みをまるごと、”会いたい人に会いに行く旅”に費やした。

この夏は、北海道で出会った友達が地元でイベントをするというので会いに行った。友達の紹介してくれた妙蓮寺の本屋で店主の方と知り合った。数か月前に塩尻のマルシェで知り合った安曇野の喫茶店へ、ふらっとアポなしで伺ったら顔と名前を憶えていてくれた。

憧れのライター・編集者の方とランチもした。ちょうど1年前に、その方が二拠点先で営むお店に行って知り合った。知り合ったのはその時だけど、僕はその方の文章を長らく好きで、つまりただのファンがファンとしてお店に行ったわけだ。でもその後、たまに連絡をとることがあって、タイミングよくランチの約束に至った。最近買った本の話で盛り上がったことと、メッセージのやり取りの距離感がなんだか友達っぽくなっていたことが嬉しくて、足音が軽くなっていた。


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一度会って話をしてみたいと思う人や、憧れ持つ相手がたくさんいる性分だ。二度目をはやくと思う人も多い。SNSが発達した時代なのでネットを介して連絡を取るなどはできるかもしれないけれど、そういう憧れの人はきっといろんな人から会いたいとか話してみたいと連絡を受けていそうなので、その有象無象のうちのひとつになるのはなんだか癪だなあ、としょうもない欲をくすぶらせている。


そんな僕の自己顕示欲、承認欲求を満たしてくれるような出会いを、数か月前に経験した。同じ業界の中で著名であって、それも憧れの人が、Twitterで僕のnoteを紹介していた。

佐伯夕利子さんはスペインで活躍するサッカー指導者で、現在はスペイン1部のビジャレアルというサッカークラブ所属している。それに合わせて、今年の3月までJリーグの常勤理事という役職を全うされていた方。

ちなみにビジャレアルというクラブは育成の分野で注目を浴びていて、「教えないスキル」という著書は、話題を呼んだ。


忘れられがちだけど、実はサッカーコーチが本職なので本は読んでいたし、いつかお話をしたいと思っていた。それがまさか自分の文章、それもサッカーとはまったく関係のないものを読んでさらに紹介してくれたのだ。スマホの通知欄を二度見し、一度Twitterを開いてツイートを確認して、画面を消した。「ちょっと後にしよう…」と追われているわけでもないのにいったん逃げた。



佐伯さんが『素敵な言葉が散りばめられています』といってくれたのは、そのさらに1年前に書いた、「頑張って」という言葉についてのエッセイ。

いつも話を聞いて励ましてくれるその人に一度だけ、「もう頑張ってるよ」と返したことがあった。いま思うとその頑張りは全然足りていなくて、ただ当時は自分なりに一生懸命にはやっているつもりだったし、そのくせ「成果が出ないうちは努力とはいえない」みたいにいって、その自己矛盾にひとり勝手に追われていた。
「わたしが言う『頑張って』はね、言葉通りのもっと頑張れっていう意味じゃなくて、『あなたの頑張りがどうか報われますように』という祈りみたいなものだから。だから、頑張って。」
あれから、自分が「頑張れ」「頑張って」という言葉を使う時も、同じような祈りを込めている。


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同僚の方から「ほんと、あけっぴろげね」と評されたこのエッセイには、サッカーの話は全くと言ってない。コーチングの話もない。当然、佐伯さんと僕には面識はない。

それを、どんな経緯かはわからないけど見つけて、読んで、共感してくれた。SNSを辞めたいと常日頃思いながら踏み切れずに数年いるが、ここに来てインターネットの世界の良いところを身をもって体感した。

佐伯さんにDMを送って、紹介してくれたことへの感謝を伝えると、

『とっても素敵なブログに心が震えました。Jリーグの職員数名に早速ブログを紹介し、祈りを込めた「がんばって」を伝えさせて頂いたりしています。本当にありがとうございました。』

そんなことあるのか、という返事が来てしまった。

しかも、すぐ後の水戸でのホームゲームにいらっしゃるとのことで、ご挨拶したいとまで。こちとら役職も実績もないただのいちコーチですよ。わたしの方がすっ飛んでご挨拶に参りますという気持ちでお約束をした。


お会いした当日にもらった言葉をずっと覚えている。

僕が、サッカーと全然関係ない記事を読んで紹介までしてくれたことへのお礼を伝えると、

「それが大事なんです。サッカーじゃない話ができる人は多くなくて、それがとっても大切なことなんです。」

といわれ、佐伯さんに見つけてもらえたことを感じ取った。自分のあり方が肯定されていた気がした。

ご挨拶に伺った時、「会いたかったです!」と言って立ち上がってくれた瞬間、初めてお会いできたあの瞬間を忘れないと思う。

またお会いしてお話したいなあ。


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文章を書くことは、とりわけ僕にとっては、重要なコミュニケーションツールらしい。時々、自分のことを話すとついついマシンガントークみたいになってしまうのだけど、そういう時はだいたい「見つけてもらいたい」という気持ちでいっぱいで。

だから書いた方がいい。ちゃんと書いた方がいいと、いつも思う。まずは気にかけてくれる人と、それから未来の自分へ残すためにちゃんと残そう。

そしてまたどこかで、佐伯さんがnote読んでくれて出会えたみたいに、書いた文章が縁を繋いでくれるかもしれない。残した言葉が、僕がいま会いたいと思う人にも、未来で会えてよかったと思う人にも繋いでくれるかもしれないわけで。


僕は、ちゃんと書こう。という何度目かわからない決意を、ここに置いておきます。



この夏にランチをしたライターの方に初めて会った日、恐れ多くも「自分も文章を書いたりしていて」と言ってお渡ししてみた。すると、読んでくれたうえに「特にこれが好きでした」とメッセージまでもらえて、当時(もちろん今もなんだけど)ただのファンだった僕はもっと近づきたいと思った。

そういえば、あの時も「ちゃんと書こう」って思ったんだった。これは入り口かもしれないと思って。まずはその日、その海の見える本屋で言葉の世界の入り口に立った気がしたあの気持ちを書こう、と思ってからもう1年経ってしまった。

近いうちにちゃんと書いておこうと思う。

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佐伯夕利子さんの著書





▼海の見える本屋というのはこちら(ここまで読まずに分かった方がいたら、仲良くなれそう)



▼なんならヘッダーの写真はここの玄関(これに気付いていたらスゴイ。仲良くなってほしい。)






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板谷隼(Hayabusa Itaya)
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