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YS横浜戦レビュー~逃したチャンス、掴み取ろう再び~
<メンバー>
・松本山雅
常田・外山が出場停止から帰ってきて、徐々に戦力が揃いつつある山雅は橋内、佐藤に代わってこの2名がそのままスタメンに復帰。前節右WBに入った中山は本職に近いIHでスタメン継続となった。
ベンチにはTPJ、住田に代わって、怪我の状態が不安視されていた横山が復帰。前例から考えるとかなり早期での帰還と言えるだろう。
・YSCC横浜
スタメンは2人変更。不動の存在だったCB宗近の代わりに花房、シャドーの神田の代わりには元日本代表の松井が入り、ボランチとしてプレー。フットサルとも兼任となる松井は8月の17節・今治戦以来の出場となった。
<記録>
・ゴール数(34)
10:横山
6:外山
5:小松
3:住田、常田、榎本
2:ルカオ
1:菊井、宮部、下川
・アシスト数(22)
4:外山
3:菊井
2:常田、佐藤、ルカオ、下川
1:住田、濱名、ビクトル、小松、横山、野々村、浜崎
・累積(43)
4:パウリーニョ<1>、住田<1>、外山<1>、常田<1>
3:菊井、ルカオ
2:村越、佐藤、前、榎本、大野、宮部、横山
1:米原、浜崎、安東<1>、小松、野々村
<総評>
■気持ちが先走る前半
・先手必勝・山雅のプラン崩しに徹するYS横浜
ここまで最下位に沈むYSCC横浜(以下、横浜)。
保持面ではGK+最終ラインでの繋ぎにシュタルフ体制からの積み上げもあり、今季もそこまでは得意としていたものの、敵陣ゴール寄りになればなるほどその先に苦労。得点面でも伸び悩んでいる現状があった。
横浜対策としては「深い位置から繋いでくるCBにハイプレスをかけて奪うor蹴らせて回収」か「深い位置の繋ぎは無視して中盤でコンパクトを保ちつつ、縦に差し込んできたところで奪う」のどちらかを軸にゲームを進めるチームが多い。
対して、横山のいないここ数試合は早い時間からハイプレスをかけ、先手必勝のゲームプランをはめていた山雅。両チームのチーム状況もあって、この試合も早めに先制点を取ろうと前者の選択をする。
これまでの基本形は2トップでボランチを監視しつつ、サイドにはIHが1列上がり、3枚で合わせる形。特に菊井が積極的に出ていき、もう1枚がバランスを取るということが多くなっており、この試合も最初はその形で試合に入っていた。
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しかし、「横浜がかなり低い位置から人数をかけて繋いでくるのを基本としていること」や「ハイプレスがうまくハマらなかったこと」ではやく奪って得点を奪いたい山雅は全体が徐々に前がかりになっていく。このあたりからもうすでにチーム全体に焦りやイライラした様子も見え始める。
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そうなると上図のように後ろで繋ぐ(GKを含めた)6枚を捕まえなければならない。
特にへそに入るボランチはマストで捕まえなければいけないポイントだったが、前がかりになったことで2トップがボランチのマークを放して、代わりにアンカーのパウロがヘソの位置に入るボランチを捕まえることに。
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ただし、この試合の横浜の序盤は「河辺の裏抜け」を執拗に狙ってきていた。アンカー役のパウロがいないため、後ろは数的同数。しかも手前のスペースをケアする選手がいなくなり、下りていくシャドーにHVがついていくとその裏のスペースにロングボールを蹴られるという展開に。
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直接そこからピンチに繋がるというシーンはなかったが、何度かサイドに流れる河辺と大野が1対1になるという状況が生まれたので後ろからするとラインを上げるに上げられないという状況になっていた。
横浜にとって河辺の裏は1つのストロングになっているが普段はここまで露骨に狙うことはあまりなく、裏を狙った後の形もそれほどあるわけではなかった。特別、リスクを冒して決定機を作りに行っていたわけではなかったので、まずは立ち上がり好調の山雅の狙いを外しながらペースを乱していくというのが真の狙いだったかもしれない。
・戦略的撤退を選ぶのも強さ
ただ、どちらもシュートチャンスは作れていない中で、相手の作ってきたプランにまんまとハマりに行ってしまった感は否めない。
もちろん、「好調なチームが自分たちのやり方を曲げずに押し通す」のは方法論としては間違ってはいない。だが、そこに付随する心の余裕や手応えがあったかというとそれは感じられなかった。
相手の裏抜けの狙いが明確になるにつれて、パウロや中山は相手のボランチに行くだけではなく、CB前のケアが必要になってくる。
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その結果、途中から「前がハマらないとアンカーより後ろを前に押し出せない」⇔「アンカーより後ろが前に出ないと前がハマらない」というループにハマり始めることに。ピッチでもここで意見が割れてしまったよう。
これまでの試合も守備でうまくいってる試合の共通点は「FWを中心にしっかりボランチを捕まえられている」ことで、逆に負けた試合の多くはボランチから左右に展開され、中が締めれてない時。前からプレスをかけ続ければミスが起こせるという感覚があったのかもしれないが、早めに一度割り切って、「戦略的撤退」を選ぶのも賢明だったかもしれない。
結果的に前半終了間際に前線からプレスに行ったことで前から剝がされていき、失点に繋がってしまっている。
■覆水盆に返らず
・余裕ができた横浜と2点が必要になった山雅
本来ならばHTで仕切りなおして、本来のフォームを取り戻した上で後半まずは1点を狙いに行きたかったが、1つも勝ち点を落とせない山雅は失点をしてしまったことでさらなる焦り、横浜側は普段リードして折り返すことはこれまでほぼないので心理的・戦略的には余裕が生まれることになる。この1点リードがこの試合では大きな差を生んでしまった。
まずは虎の子の1点を守り切りたい横浜は、焦れる山雅に対して2点3点と狙いに行く姿勢はそれほど強くなく、まずはリスクを冒さないボール回しで山雅を焦らつかせにかかる。
対して、少しでも早く同点に持っていきたい山雅は攻撃の時間を増やす必要性は増していた。そのため、後半頭からプレスをかけ始める。
ボランチは菊井が監視して、2トップはサイドを限定しつつ、前から追いかける形に。追い込んだ後はパウロor浜崎がボランチを預かり、3枚で追うことで前半抱えていたボランチの受け渡しの問題は多くが整理される。
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だが、相手も追い込まれてもボールを捨てる選択肢ができるため、ショートカウンターはなかなか難しく、CBがロングボールを拾ってから攻撃を組み立てるという流れがしばらく続く。
前半よりは増しになったとはいえ、1点が遠いまま。61分には精彩を欠いていた前線の3枚(横山・榎本・菊井)を横山・榎本・佐藤に3枚替え。前線を全員替えるという、今年にしては珍しい、思い切った交代策を行う。
・横山復帰も……時すでに遅し
高さ・速さという分かりやすい武器を持った2人にシンプルに強みを出してもらうという意図は分かりやすかったが、ゴール前を固める相手にこの組み合わせがうまくハマらず。どちらかというと彼らの弱みとする面が目立つように。
怪我明けの横山はサイドにパウリーニョと浜崎が底で組み立て、横山はサイドに流れるもスペースのない中央で受けられるのは佐藤のみ。比較的守備の薄いサイドは運べてもボックス内には榎本と佐藤、たまにWBが入るくらいなのでなかなか迫力のある攻撃は繰り出せず。
途中からは宮部をWBに投入し、ボックス内に積極的に人数をかけにいくもそれでも仕留めきれず。結局、ボックスの外に出た横山のミドルが一番可能性のあるシュートになったのも必然だったように思う。
また、後半頭から徐々に良い流れができていた守備ではまだ本調子ではない2トップのところで追い込み切れずに逆に運ばれてしまうように。自陣に帰ることになると横山が最前線に残り、榎本が低い位置まで戻るようなタスク分けになっていたため、カウンターに出るときに時間が作れないというタイムロスができてしまう。
結果的には本調子でない横山にベットするには早すぎたというのが終盤の1つの結論にはなりそうだが、結局こういう交代カードを切らなければいけなかったのも前半の体たらくからの失点とメンタル面での安定感無さが全て。どちらかでもなければ盛り返すチャンスはあったかと思うが自らフイにしてしまった。
■今一度見つめ直す最後のチャンス
今節は鹿児島が鳥取に大敗。
勝てばいわきとともに頭1つ抜けることができたが、そのチャンスを逃し、前日上がっていた順位も再び3位に。選手もその状況は分かっていたからこそ、試合後には期待と落胆の落差が一気に訪れたことだろう。去年の敗戦ともまた違う独特な雰囲気なように思えた。
ただ、これまでとは違ってそう時間もない。
最下位に敗戦を喫してしまったのは事実として受け入れ、謙虚に戦っていかなければいけないが、新たなことをしたり、大きく修正を加えるというよりも自分たちのやってきたことを信じ、良い意味での自信を取り戻すことが重要になってくるはず。
次節もまずはしっかりと守備で穴を開けず、強かに戦っていき、大勝よりも先制点を確実に取っていくようなここ半年間やってきたことを丁寧に行っていきたい。
そして、次節の相手も順位的には昇格争いとは無縁の位置にいる沼津。アンカーを中心にポゼッションを高めたい雰囲気は持っているが、それ以上に脅威があるのが縦に早いカウンター攻撃。エースの渡邉が移籍した以降は前線の最適解を決めあぐねているが、それ故に横浜のように先制をするようなことがあれば勢いづいたり、1点を守り抜く戦い方を選択してくる可能性は高い。
嫌でも横浜戦のことはフラッシュバックしてしまうので、まずはしっかりと相手の良さを消して、先制点を与えず、逆に攻撃では相手の嫌がるエリアやボールの動かし方をしっかりと行っていくことを心掛けたい。
自動昇格は再び消滅してしまったが、1つ1つ勝っていけば再び活路は見えてくるはず。チャンスをピンチに変えてしまったのが今節、次はこのピンチを飛躍するためのチャンスに変えていけるか。自分たち次第である。
どのチームもメンタル的には選手・サポともにシーズンで一番プレッシャーのかかる時期だと思うが、強い気持ちをもって最後はみんなで笑えるような結末に持っていこう。
END