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「そのNDA、本当に大丈夫?」スタートアップが抑えるべきNDA(秘密保持契約)のポイント

営業上または技術面の秘密情報やデータの取り扱いや秘密保持義務、開示された秘密情報の利用目的や範囲を定めたものが秘密保持契約(NDA:Non-disclosure agreement)です。

機密保持契約や守秘義務契約なども同様の内容ですが、企業間の取引においては検討段階から必要な情報を共有できるよう、NDAを結んでおくことが一般的とされています。スタートアップにとっては大企業との取引や商談において、相手方に協業を検討するために情報を提供するためにNDAを結ぶことで、自分たちの秘密情報の流用を防ぐというメリットがあります。

しかし、NDAは決して万能な契約書ではなく、要点を抑えなければ目的を果たせない場合もあります。また、チーム内に法務の専門家がいない場合には、知らず知らずのうちに不利な条件で契約してしまうリスクもはらんでいます。
スタートアップがNDAを結ぶ上で知っておくべきポイントを、HAX TokyoのメンターでEY弁護士法人パートナーの伊藤多嘉彦氏に伺いました。

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NDAは秘密情報を開示する側と開示される側の間で取り交わす契約ですが、スタートアップの多くは前者に該当するでしょう。

情報を開示する側から見た際のNDA契約のポイントは以下の3つです。

秘密にする情報は明示し、幅広くカバーする

秘密情報は紙だけでなくデジタルデータや商談の中でのやりとりなど、共有する方法はさまざまです。秘密情報は必ず紙で渡すことで、開示する情報や対象を限定する方法もありますが、あまり現実的ではありません。

また開示する対象も不必要に多いと、将来の事業に支障をきたす可能性があります。既に公になっているものや契約前からお互いに知っていることなどは対象から外すなど、秘密情報の範囲は事前に定める一方で、提供する情報のフォーマットもメールなどの電子媒体や口頭でのやりとりも含めて、抜け漏れがないようにしましょう。

また、開示する情報を選別することも重要です。例えば、技術情報を開示する際にも取引に必要な一定の情報は開示しつつも、「秘伝のタレのレシピ」に該当するような、重要な設計データやアルゴリズムの核心部分はあえて開示しないなど、開示範囲も慎重に決めましょう。

契約期間と、契約終了後の取り扱いを明記する

NDAの保持期間は、さまざまですが、開示側する立場からは3〜5年が一つの目安です。それより短い条件が記載されていた場合には、期間を変更するように交渉したほうが良いでしょう。
また契約終了後のデータの取り扱いについても、基本的には廃棄する旨を明記し、廃棄されていない情報に関しては契約終了後も守秘義務は続くと記載しておくようにしましょう。
デジタルデータによる開示が最近は多いので、廃棄が徹底されないケースもあるかと思いますが、NDAにあらかじめ廃棄に関する条項を明記しておくことで、契約終了後の情報漏洩の対策になります。

スピード感を損なわないよう、契約の内容を検討する

NDAを締結する側が大企業の場合、契約が完了するまでに数ヶ月かかることもあります。その間に商談ができず、事業が進まないという事態を避けるためにも、秘密情報にならない範囲で提供できる情報を予め決めておくことも重要です。

またNDAの契約内容についても、双方がこだわりすぎると締結までに時間がかかってしまう可能性があります。妥協できないポイントは抑えつつも、双方にとって納得できる落とし所に早く着地できるよう、弁護士にレビューを依頼するのも良いでしょう。

また最近ではAIが契約書をレビューするサービスもあります。専門家のレビューと比較すると万能ではありませんが、全く何も対策しないよりは良いかと思います。

スタートアップにとって頼りになる弁護士の選び方

一言に弁護士と言っても、万能ではありません。契約書のレビューを早く対応してくれる弁護士や知財に強い弁護士など、スタートアップが求めている要件にフィットする弁護士に相談することをおすすめします。

特にシード期のスターアップの場合は予算も限られていますので、弁護士事務所が設定しているミニマムなプランで契約し、お試し期間を設けて相性を確認しましょう。また、良い弁護士を見つけるには既に起業している知人から紹介してもらうのが有効です。最近ではスタートアップと取引実績がある弁護士も増えていますし、要点を抑えたアドバイスが受けられるよう、スタートアップの先輩やメンターとして日頃から相談している先に紹介してもらうのがいいでしょう。

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