テイルズオブアライズ雑感
テイルズオブアライズクリアの感想
以下、シナリオのネタバレを含む。
テイルズシリーズは久しぶり、ベルセリア以来。
というか、ベルセリア発売2016年から5年ぶりの新作だったのか。
個人的にはヴェスペリアこそが至高だったが間違いなく並んだ。
ゲーム時間約45時間。おそらくラストダンジョン2つ前。
アラサーになると、2週目3周目の気力が沸かないのは仕方ないにしろ、この60時間は妥当な長さ、ボリュームに感じる。
戦闘周り。
メリハリの効いた戦闘の設計。
もはやTPといった概念は存在せず、AGゲージたるキューブにて管理。これの初出はリメイク版ディスティニーだったか。特に連携を「術技」「奥義」といった階層で分けずに、通常攻撃すら間に挟める繋げ方は非常にスマート。適当なボタン連打でも当然遊べるし、かといって何も考えずに攻撃しても苦戦する。
また、ブーストアタックという操作可能キャラ6名全てが各々特徴を持つサポート技も存在し、敵の特徴に合わせて技を放つことで戦闘をよりスムーズに遊べる。
大きな刷新、過去作との違いとしては、「CP(キュアポイント)」と「BS(ブーストストライク)」が特徴的。
CPはパーティ全体で共有する「回復技や補助技発動に必要」なポイント。
御馴染みのファーストエイドやレイズデッドなどの回復技を放つ度に消費していく。
これが戦闘にアクセントを加えている。
特に体力回復技に関しては消費ポイントが高めに設定されており、かつてのエステルとは違い、AIもこまめに回復してくれる関係上枯渇しやすい。被弾回避の意識を持たないとあっという間にリソースが切れる。
これは、ボスへと至るダンジョン攻略中に起きれば進行が厳しくなることを意味し、対ボス戦ではCPが枯渇した段階で戦線が壊滅し、全滅するバランスを生み出している。
ならグミを食べれば良いじゃないとなるが、CPを30%回復するシリーズ御馴染みのオレンジグミは1こ3000ガルドする。システムの項目で後述するが、ガルド(お金)が非常に手に入りにくく、シナリオをある程度まで進めないと店舗に並ばないという徹底ぶり。戦闘難易度を上げている要因。通常攻撃などでも回復しないのがなかなかにシビア。
ただ、ゲージ管理のコツさえ掴んでしまえば、ストレスなく受け入れられる。常に見張っていなければならないものでもなく、無尽蔵に回復が打てるのもつまらないのでとてもよいシステムに思えた。
BSは敵体力とは別に管理されるゲージが貯まると発動する連携技。専用演出が割り込まれ、ザコ敵なら残り体力関係なしで確定で倒す技になる。
ゲージは連携(連続ヒットかつbreak状態)を積んでいけば溜まっていくが、敵が起き上がると0に戻る仕様。一度目のタイミングを逃し、二回目のタイミングぐらいでだいたい倒せるので凄く適切なバランス。パーティ全体のレベルが低くとも、ワンチャンスを丁寧に狙えば十分戦える。
問題があるとすれば、演出。6人パーティのうち、2人で放つ技なのだが、一人を任意選択し、あとはランダムで決定する。反射的に押すボタンを決めてしまえば同じ技ばかりカットインしてしまう。全15パターンもありながら、主要なシステムのため飽きてしまう。
ただ、演出自体はどれをとってもかっこいい。バチバチにテンション上がる。戦闘の流れを切ることなく導入されるのはとても素晴らしい。一度でもシオンとロウの「灼熱のバーンストライク」は見たほうがいい。
戦闘は難しいとされるが、要はシステム馴れさえすればとても面白い。体感的にはモンスターハンターとゴッドイーターの文脈でテイルズをやっていると考えれば、スムーズな戦闘がこなせる。
シナリオ。
実は前情報を入れておらず、顔の半分を仮面で覆った男と姫が映る一枚絵しか見ていなかった。
遊んだ感想としては言うならば「痛覚も記憶も持たない奴隷なオレが呪いの姫と一緒に世界を壊すRPG」と表せる。
シナリオ内容は事件に巻き込まれながらも自発的に動いて、ちゃんと自分の意見や考えで進んでいくのはストンと腑に落ちる構成。細かい部分にツッコミを入れたくなるたびにシナリオ上でちゃんと言及があったり、そういやこう言ってたな、みたいなフォローが充実していた。気になるキャラをサブクエストで補完という方法もあるだろうが、シナリオ本編で書き切ろうとするのはとても良い。
主人公アルフェン達は、5つに分かたれた自分の国を支配階級の人間たちから開放する旅をするわけだが、国ぞれぞれの「特色」が別れているのも良かった。「奴隷と支配階級の在り方」について様々な形があり、それが国の特色、火山帯のような土地や昼のない極寒の地域、豊かな大地に根付いた地域と結びついているのも説得力がある。重箱の隅をつつくようだが、結論は「復讐ではなく共存を」ありきなのがブレなさすぎかな、と思う。あと、テュオハイムの国「奴隷と支配階級」ではなく「労働階級と善き経営者」というある種のゴールに対して、むしろお手本と捉えたままシナリオが進行していくのはちょっと違うじゃんとは思った。「2種族の共存と協栄」という美しいところばかりに目を向けて枠組み的にはやはり「奴隷と支配階級」をはみ出ない在り方をおざなりに進んでいき、横やりに入った雑魚ボスの話でお流れってのは少し不満。それをガッツリやったのがリバースであるが、そこまで正眼に構えるのも今回のテーマ的には違うのかもしれない。
システム。
フィールドの描画が綺麗。正直なところ、テイルズシリーズはヴェスペリアのようなカトゥーン調で進化していくと思っていたが、リアルでありながらアニメっぽさも残るグラフィックで、見てて疲れないし、自然に感じる。シリーズ恒例のスキットはマンガのようにカットインでキャラが動く方式に切り替わったが、なれてしまえばコレが当たり前のように感じる。驚きや悲しみをセリフだけでなくそのリアルな表情や目線の動きで描写するのもより没入感を深めてくれる。キャラの見た目を変えるアタッチメントも反映されているのが嬉しい。これまでならイベントシーンには反映されていたが、スキットでは固定のビジュアルだったので、お気に入りを見つければ、その姿での会話劇が見られる。
ファストトラベルが充実。テイルズの悪癖だった移動距離稼ぎが殆どない。アライズにもスキップさせない為の徒歩移動もあったが、そんなに多くないし、至るところにファストトラベル地点があるわけでもないので程よいバランスだった。
メインシナリオやサブシナリオも一覧で閲覧でき、目的地設定もできた。30のオッサンには、つどつど街をまわって○ボタンを連打するのは苦行でしかない。このゲームのあとに違うシリーズを始めたらきっとストレスで禿げる。そもそもとしてシナリオ都合上、同じダンジョンを繰り返し攻略する、といった場面がないので考えられているんだなぁと。あれはあれで「あのときの俺たちは~」みたいなカタルシスがあるから好きなのだが、そういった場面も立ち寄る街などで体験できるようにはなっている。
だからこそ全体マップというものが存在せず、各地域がどんな風に繋がっているかが理解できないままシナリオが進むのはなんとなく嫌だった。ラタトスクの騎士(シンフォニアの続編)ではかつてだだっ広いフィールドを歩き回ったからこそファストトラベル形式で良かったのだが……。
圧倒的ガルド不足。今回は敵を倒してもガルドを獲得することができず、換金アイテムのドロップ品を街で売るスタイル。そりゃ、魔物(ズーグル)を狩ったら現金が手に入る、というRPGのお約束なんてクソくらえスタイルは良いのだが、ドロップ率がちょっと辛い。魔物の落とす素材が武器生成に必要というシステムともあって、中々たまらない。
また、CP回復アイテム(オレンジグミ・パイングミ)がなかなかに高価なのも相まって、金がたまらない。サブクエストを攻略することでスキルポイントやお金がもらえるのだが、それでも足りなくなる。レベルアップに必要な経験値が固定ではなく、レベルと敵とのレベル差で変動する設計なのも合わさって、ガルド稼ぎとレベリングがなかなかに同居しなかったりする。
パーティの防具は、店舗販売。具足もなく、胴着だけなので、管理が楽。武器に関しては敵のドロップ素材を集めて作成していくスタイル。後々になってロングソード・改のように作成に前の武器が素材として要求されたりしだすので、下手に売ることもできない。
アクセサリーは素材を拾って生成するシステム。レアリティの高い素材からランダム生成される追加効果を開放していく。厳選要素もあるが、しなくても充分な性能。
雑感。
アルフェンとシオン。ロウとリンウェル。キサラとデュオハイムといった公式が推すカップリングがとてもとても刺さった。もちろんパーティの仲もよろしく、雰囲気も弛緩仕切るわけでなく、凝り固まるわけでなく。
ゲームを通して思ったのが「バランスが良い」という感想。
シナリオや戦闘、システムといった各々の塩梅がめちゃくちゃ練り込んであって、高水準で纏まっている。どれだけ調整を重ねたんだろうか。そりゃ5年は間隔が開くよね。
とりあえず、リンウェルかわいい。リタ・モルディオの系譜を継ぐ「以下省略」は個人的に刺さる。
長々と書いたが、どれもこれもイチャモンレベルだし、好き嫌いで片付けられる範囲。ただ、どうしても駄目な点あるとするならば、戦闘でのオーバーリミッツ(OVL)周り。
どうやら与ダメ被ダメで蓄積されるらしく、アルフェンのような前衛キャラならちょくちょく貯まるのだが、シオンやリンウェルだとあまりたまらず、そして秘奥義に繋がらない。
また、OVLはプレーヤーがどのくらい溜まっているかが確認できず、発動自体もディスティニー2のように自動発動なので戦闘に組み込めない。
戦いの締めを秘奥義で~なんてロマンを追い求める遊び方が非常に難しいのは、良くないなぁと。
アンリアルエンジン4たる新しい規格システムを用い、海外や新規ユーザーへのアプローチを試みた今作は間違いなく面白い。システム周りの刷新においても、「まとまった時間ゲームをする」という文化が廃れゆく昨今の事情に対応し、細かく刻んでも楽しむための工夫と言える。
手放しでオススメできる良いゲーム体験だった
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?