2023年8月の選歌
裏庭にマンゴーの実の熟れゆくをマイナバードと競いて待ちぬ
筒井みさ子
途切れずに道を渡れる人々を待ちいる車に蝶とまり来る
鵜川登旨
公園の暑さに倦みた木々の中でクマゼミだけが夏を謳歌す
森田郁代
朝一番食べ頃きゅうりを摘み取ると「おはようさん」と顔出す青虫
伊藤美枝子
縮みし母童女のようなその笑みを午後の陽光(ひかり)がゆらりと照らす
六甲もこ
間違って顔につけてた整髪剤老いの顔には何事もなし
小島夢子
笹舟にコンペイ糖を五粒のせ川に押し出す母の三回忌
楽満眞美
何事もなかりしごとく胡蝶蘭の我を見つめぬ君なき今も
岡まなみ
枯れ株の中よりシュッとカトレアの新芽鮮やか緑のつるぎ
藤代敏江
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