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アロハ通信#29           空に浮かぶ空港 カタリナ島 今森貞夫

人間は他の動物と違って、何歳になってもスリリングなことや恐怖感を体験してみたいという性癖が濃厚である。私がカタリナ島の空港で、何度も体験した、スリル満点の離陸の経験を話したい。

カタリナ島は加州ロスから40マイルの南西洋上にある、かって銀幕のスターたちが集まった避暑地だった。その島の崖上(標高630m)には小型飛行機のセスナが離着陸できる900メートルの滑走路が一本のみ走っており、一日に数機がやってくる。崖上の空港の滑走路は坂になっており、その幅は60フェートと比較的狭く、離陸が特に難しいと言われている。

カタリナ空港の滑走路

私は、加州に住んでいる時、ふとしたことから、セスナのパイロットと知り合いになり、ご一緒に各地へ同乗させてもらった。カタリナ島もその一つである。ロスアンジェルスからセスナで20分程度という距離の近さもあって、カタリナ島へは何十回も同乗させてもらった。

カタリナ島アバロン

その頃は、飛行機に乗ることが目的であり、目的地に着いても、当地の観光などあまりしていなかった。カタリナ島への訪問もその例にもれなかったが、空港の周辺に茂っている亜熱帯の草や木に癒され、レストランで食事をしながら、壮大な太平洋を展望したりして、大いに楽しんだものだ。

セスナ機

やがて夕陽を背に受ける時間も来て、いよいよ機長と私は、機内に乗り込み
帰路につく。エンジンが起動して助走し、二分もしない間にテイク・オフ。
ふあ~と、全体が宙に浮いた感じなのだ!瞬間、周りを見たら、滑走路の端。崖の先端が切れて、崖が後ろに走っているのだ、どんどん遠のいていく・・スリリングな離陸だ。遠のいて行く。

今振り返ってみると、カタリナ空港からの離陸は危険に満ちていたといえよう。崖が切れる前にテイクオフできなければ、それで一貫の終わりということになっただろうからだ。その当時は若かったこともあり、勢いに任せて飛んでいたが、後になって空港の場所や地形を考えてみると、よくぞ無事でと、怖くなることがある。今まで、カタリナ島からの離陸を含めて、さまざまな危険な場面を体験したが、生き延びて、今に至っている。

太平洋に落ちる夕陽

当地ハワイに住む人が、将来ロスアンジェルスに行かれたら、是非このカタリナ島に立ち寄ってもらいたい。セスナで行かなくても、ヘリコプターや船で行ける。カタリナ島の崖上の飛行場から見下ろす、コバルトの大海原はどこまでも広く青い。夕方になれば太陽が日本の方向に沈んでいくのが見られる。日帰りでも十分楽しめるが、一夜、島で過ごしたい方には、港町のアバロンまでバスで行けば、宿泊施設も色々とあるので、ぜひ行ってみてほしいものだ。*




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