2023年9月の選歌
黒焦げのバニヤンの木の声がする泣いてたまるか再び芽吹くさ
関本なつ
「気をつけて」車道の我に言いながら目の前の棒にぶつかる夫
大室やよい
電線に掛かりて朝の月淡し「昨夜(ゆうべ)はごめん」と夫にメールす
鵜川登旨
手を触れればブルーベリーのホロホロと落ちてバケツの重み増し行く
岡まなみ
秋風を待ちきれぬのか虫の声熱気の冷めぬ夜の庭より
森田郁代
蔓さきに目のあるごとく絡みつつ塀に咲きたる鉄線の花
近藤秀子
客足を新幹線に奪われて長崎本線ほそぼそ走る
筒井みさ子
輝きて赤いしずくの落ちるまで線香花火を見つめた日の遠く
森田郁代
どこまでか 境界線を探りつつ子との会話を笑顔で進めん
小野貴子
訪問日暦に線入れ待ちし母そそくさと去る我に手を振りし
山下ふみ子
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