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2023年3月の歌  「波」   


夜の露天風呂

年上の友の語りたる来し方に引き込まれたり波瀾に満ちて     
温泉に肩まで沈みて見上げればおぼろに光る冬の星座よ      
森田郁代

悲しみの波引くこと無く一年ぞ今宵は一人思ひでの中    
うつむきて寒風に向かひ歩く道ふと見上げれば香る白梅   
山下ふみ子

春の海の波間たゆたう流れ木は吾(あ)の夢乗せてさすらいゆかむ
雪解けに若草色の蕗のとう春の陽射しに香り漂う
楽満眞美

くるぶしを軽く小突いたさざなみに足を取られて照れ笑いする 
墓参り柄杓の水も凍りかけ我を見守る冬毛の白猫 
六甲もこ

ハワイでは冬の寒波も楽しみにタイツとブーツの出番となりぬ 
兎年跳ねてみたいが膝痛にそろりそろりと亀歩きする 
伊藤美枝子

茜さすハワイの海辺朱く染め怪しく映えるがじゅまるの樹   
どこまでも進化としたしパラダイム LGBT法案世紀を掛けて
今森貞雄

ホノルルに寒波来たれり寒がりの骨身にしみる摂氏二十度 
被災地に凍える人らを憂えつつ温き布団にまた潜り込む  
鵜川登旨

雨風に泳ぎあぐねる波の間にホヌが顔出し我を励ます
青年にサウナで席を譲られて戸惑う若いつもりの私 
大室やよい

床ずれにならぬようにと波うてるベッドに夫は海の夢見るやも    
目を病みて塞がるまぶたを引力に逆らい開ける大変さを知る
岡まなみ 

コロナ明けゆれる人波におののくも搭乗待ちの若きの後ろに
歳重ね初めてわかるもののあり紅梅白梅華やかなりし
小野貴子

若き日を思い出させるカタマラン波間に揺れるワイキキの海   
ワイキキの波も少しは高くなる二月の浜にうっとり座る    
小島夢子

波音は聞こえなくなり読み続く「老人と海」の世界の中に  
屋久島は自然遺産になりしとう共に歩きし人は今逝く
近藤秀子

沖合の三角波が寄せて来る今は静かな冬の青空  
スーパーに漂う甘き焼き芋のかおり無視してカート押し行く
関本なつ

我が出す高次の波動引き寄せるすべてのことがうまくいきだす
涙うって引き寄せ返す海の音静かな波動感謝の嵐
田中えり

 ビッグウェイブ・サーフィン大会
そそり立つ波の面にちっぽけなサーファー達は挑み続ける    
純白の雄鶏庭に通いきてキッと顎上げ猫をあしらう
筒井みさ子

波の音ききてねむりし北の町亡き父、母のありし遠き日   
縄文の里と名づけし裏庭に熟れしリリコイ光りを放つ   
原 葉

五月晴れ波音ひがな聞きながらハマヒルガオはちょっぴりピンク
ちゃんづけで呼び合う里の古き友いっしゅんで時まきもどり来る
藤代敏江

兎年ライオンダンスの始まりでハワイで祝う旧正月は       
ライオンのアクロバットのその妙技演ずる二人の息よく合いて   
三浦アンナ


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