2022年5月の選歌
大空に吸はれるやうな薄青き桐の花咲く旅立ちの朝
近藤秀子
二年(ふたとせ)をただ吾(あ)を待ちし父に会うドライアイスに眠れる父に
鵜川登旨
「おはよう」と未だ言えない二歳児はハグで返して朝は始まる
伊藤美枝子
新任の教師にきびしき教頭のガリ版の字の尖りていたり
藤代敏江
上海は不思議な街よ古きもの底に抱きて光り輝く
小島夢子
眠れずに裸足のままで庭に出てしじまの中で見る蒼い月
六甲もこ
鈴生りのレモンの挟間に見えし碧ナポリの海の輝き消えず
原 葉
雨雲を貫き飛び立つ小型機は海を旅するヤリイカのよう
六甲もこ
夜遅く着く我待ちて娘(こ)の作りし熱き茶漬けの海苔の香やさし
岡まなみ
憂きニュースに俯きかげんの春の日よツツジはいつしか満開となる
森田郁代
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