2024年4月の歌 題「風」
小雨止み雨の匂いを包みこみ星星軋む夜の風鈴
真夜に降る激しき雨は何時しかに潮騒に変わりきこえくるなり
原 葉
暴れては鉢なぎ倒した風は今日知らん顔してそよそよと吹く
フリースのジャケット着ても短パンで素足にサンダルハワイのロコは
藤代敏江
風に乗り見えない敵がやってきた目薬マスクで凌ぐ三月
陽を浴びて草取りすれば手の中でひんやり冷たいハコベの若葉
森田郁代
一生に一度はしたい気まま旅いき先決めず風にまかせて
春時雨気分を変えて外出し春のブラウス衝動買いする
山下ふみ子
水仙を微風(そよかぜ)に乗せ届けたれば白寿の友は春を抱きしむ
野ざらしに朽ちゆくを待つ老ピアノよタンポポの花が足もとに生ゆ
楽満眞美
汗拭いピョンと飛びこむ樹の下でそよふく風に息吹き返す
西風に背中を押されジェット機はハワイ目がけて全力疾走
六甲もこ
雲ひとつゆっくり空を旅してる見えない風に守られながら
ひな祭り着物にはしゃぐ初孫は首を傾げて写真に収まる」
伊藤美枝子
樹下に立つ天平美女の屏風絵に今でも残るほのけき色香
朝凪の青澄みとほる春の海に心満ち足る初夢愛し
今森貞雄
また今日も脳裏をよぎる原風景 ままごとのゴザに桜舞い散る
故郷に桜咲きぬと聞きしより胸の疼ける日々の過ぎゆく
鵜川登旨
赤ちゃんの吐息のように甘やかな春風受けて泳ぐ海原
先生と二台のピアノで弾くショパン老眼鏡も音も揃って
大室やよい
軒下につるした南部の風鈴はごつい体に可憐な音(ね)を出す
餌袋に頭をこするタロウくん気持ちわかるよ吾も減量中
岡まなみ
南風砂舞い上げて飛ばしゆく明日へ進めと我をおしくる
あきらめし河原なでしこ芽吹きあり春はめぐるきっと来るのだ
小野貴子
そよと吹くハワイの風がラナイにて本読む我を吹き抜けてゆく
いつか読むつもりで買いし万葉集ひらけば風がまた閉じてゆく
小島夢子
青空に届けとばかり山桜枝を広げてみつばちをも呼ぶ
とろとろのハワイの風はやさしくて涙のしずく日差しにとかす
関本なつ
風音にとおき故郷の裏山の深き竹林まなかいに揺る
豊作を祈る風日(かざび)の鉦(かね)ひびき提灯の列山裾に続く
筒井みさ子
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