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『Life is Strange 2』の歩きかた

『Life is Strange 2(ライフイズストレンジ2;以下LIS2)』はフランスのゲーム開発スタジオDONTNOD Entertainmentによって製作された、選択肢を選んでいくことによって物語が分岐し進んでいくいわゆるアドベンチャーゲームに分類されるゲームで、同スタジオが開発した前作『Life is Strange(ライフイズストレンジ;以下LIS1)』の2作目にあたります。ちなみにフランス人が作ったゲームですが舞台は現代アメリカです。正確にいえば2作の間に別会社による開発の外伝的続編『Life is Strange: Before the Storm (ライフイズストレンジ ビフォアザストーム)』があり、こちらはアメリカのDeck Nine Games開発となっております。個人的には本家シリーズに劣らない傑作のひとつだと思っているのですが、それについては別の機会があれば。

これを書き始めたきっかけは、自分でゲームをプレイした後に、他の人はどう考えて何を感じて遊んだのだろうという好奇心から他のプレイヤーのプレイ動画をいろいろ見たことでした。そこで思ったのが「このゲームの本質に触れて遊んだプレイヤーがそれほど多くないのではないか」ということです。それがこのゲームの失敗であり、盛り込まれたテーマを伝え切れていない残念さだと思います。ここではぼくなりのLIS2のレビューと、こういうことを考えながら遊ぶとより楽しめますよというちょっとしたアドバイスを書いていこうと思います。まだこのシリーズを遊んだことのない人、あるいは遊んだけどいまいちピンとこなかった人が遊ぶ前にちょっと知っておいたほうがいいよ、他のゲームとは遊び方がちょっと違うんだよということを教えます。

このゲームの大きな特徴は「正解がない」ということです。何をどう選ぼうとストーリーは続きます。そして選んだ選択肢は決して正解や不正解という言葉で区別されるものではありません。ハッピーエンドやバッドエンド、そんな概念をまず頭から消し去りましょう。そしてこのゲームにおける選択肢の意味とは、正解の道を選ぶ作業ではなく、「あなたはこれに何を思い、どう行動しますか」という制作者からの問いなのです。これがまずこのゲームで製作者が伝え切れていなかったことで、なぜゲーマー的損得思考で多くの人がこのゲームを遊んでしまうかといえば、その一つの理由が前作LIS1にあると思います。遊ぶ楽しみは奪わない程度に少しだけ前作と今作のストーリーに触れますと、前作の主人公マックスは時間を巻き戻せる能力者でした。プレイヤーはマックスを操作し、時間を自由に巻き戻しながら情報を集めたり未来の危機を避けたりします。そしてゲーム的には能力の使用に何のペナルティもありませんが、力を使いすぎることでマックスの体に異変が起こったり、世界がめちゃくちゃになっていくといった演出が多く含まれていました。そしてLIS2、主人公ショーンの弟ダニエルは念力で物を動かすことのできる超能力者です。製作者のミスは序盤の展開でダニエルの体調不良のシーンを入れてしまったことでした。ここで多くの前作プレイヤーが、また2から遊んだ人も「なんか体に悪そうだし使いすぎるとバッドなエンディングに行きそうだしあんまり能力使わんとこ」という思考に誘導されてしまっています。正直このシーンをなぜ入れたのかぼくにはさっぱり分かりません。ダニエルの病気はまともな生活をしていなくてろくに体調管理もできない兄弟2人が悪かっただけで、薬を飲んでしっかり休養をとったら何事もなかったかのように治るものでした。結果このイベントをシナリオの序盤に挟んだことで、それ以降ダニエルの超能力を使うかどうかの選択には「使いすぎは良くないに違いない」思考によって本来語られるべきテーマに気づかないプレイヤーが多かったのだと思います。このゲームのメインのシナリオは兄弟2人の逃避行ですが、その道中全体に流れるテーマは、自分とは違う異質な他者をどう受け入れるか、あるいは大多数の他人とは違う自分をどう受け入れるのかという、まあ言ってしまえばマイノリティ差別とどう向き合うのかという問題です。ダニエルの超能力に関しては、それがダニエルという人間の個性であり能力を受け入れて使うことを否定しないのか、力を使わせずに大多数の他の人と同じように生きていくことを求めるのかという二択になるべきであって、マイノリティとどう向き合うかという本作のテーマを貫くのであれば、能力の副作用だの見つかったらまずいだのその後のシナリオ展開を考えたゲーマー的思考で選択肢を選ばせるゲームにしちゃいけないのです。ここがこのゲームで一番失敗した点だとぼくは思っています。ゲームオーバーとかバッドエンドとかは無い、選択肢はプレイヤーへの問いかけだということを頭の片隅に置いてプレイすると、変な損得感情に囚われずにLIS2の世界をより楽しめると思います。

本作においてマイノリティとどう向き合うかというテーマは、これはもうはっきり言って詰め込みすぎたという一点に尽きます。主人公兄弟2人に襲い掛かるメキシコ系移民問題に始まり、ゲイやバイセクシャルなどの性的マイノリティ、その他とにかく世間から浮いた存在とかはみ出し者のキャラクターばかりわんさか出てくるんですよ。これはエピソード形式で一話ずつ配信して販売する方式を取ったことによる弊害もあるのかもしれません。各話単体でも見られるように、また次エピソードへの期待を持たせるためにっていうのもあるのでしょうが、それぞれで盛り上がる展開や新しいキャラクターを出しては出会って別れてなので、全部通して遊んだときに最終的に「これダニエルの超能力者設定いる?」って話になってしまっています。移民にしろ同性愛者にしろ超能力者にしろそれぞれが深く掘り下げられないままストーリーが進行してしまうので、メインは全編通して共通の兄弟の逃避行の結末に絞られてしまって、本来主題であるべきマイノリティ問題がロードムービーの味付け程度に薄まってしまい、ダニエルの能力が道を塞いだ邪魔な岩をどかす能力程度の扱いで終わってしまっている結果になったのです。これは先ほどの病気イベントと並んでストーリーの構成の失敗だと思いました。

そんないろいろ失敗した本作ではありますが、語られているテーマは浅いものの、そういうテーマが全体にあるということを知った上で遊んで欲しいと思います。そうすることでただのシナリオ分岐アドベンチャーゲームではないということが分かり、このゲームの面白さの一端に触れることができると思います。兄としてダニエルに何を教えどう接するのか、そして旅の途中で出会ったアメリカという社会の中でそこに馴染めない自分に気づきながら生きていく人々とどう触れ合い何を思うのか、それが『Life is Strange2』というゲームの本質であり、選んだ道の先に必ず結末が訪れ、その結末はどうであれそれを見届けた自分だけの大切なものなのです。

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