はるかぜ

だれかに優しくなれる短編を書きます。

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  • はるかぜがはじめましての人へ。

    今までにあげた作品の中で、とくにお気に入りの子達です。

最近の記事

【短編】 おじいちゃんバイク

ぼくのおじいちゃんはいつも、 「うーーうーー」 とひとりごとを言っている。 それがまるでバイクが走る音みたいだから、いつしかぼくは『おじいちゃんバイク』と命名した。 ぼくのおじいちゃんは優しいけれど、すぐに色んなことを忘れる。一緒にお風呂に入るとシャンプーとリンスがわかんなくなったり、僕に買ってくれるはずのおもちゃをそのまま持って帰ろうとしたりする。でも、会うたびにお菓子をくれたり、僕が近づくとおーーっとニカッと笑ってくれるのが嬉しくて、やっぱりおじいちゃんが好きだなぁと

    • 【短編】 三日月とうたうたい

      会社勤めになると、私の周りには仕方がないことばかりになった。 あんまりやる気になれない仕事も、もはや形だけになった趣味のカフェ巡りも、学生の頃までの『私』として過ごす時間がなくなってしまった。 チームはみんな家族、って雰囲気の会社の飲み会。 あんまりイマドキじゃないよ、と思いながらも、自由参加(強制)だったから行かざるを得ない。 みんなは、何かを諦めたみたいに仲良くしてる。 まるで「昨日は楽しかったね~」って言うための、儀式みたいな飲み会だった。 私もパァ~(  

      • 【短編】 僕ら、空のこどもたち

        「あの、すいません。」 渋谷の交差点で、彼女はそう告げた。 世界一混み合うこの交差点は、誰もが皆、何かに急かされるように小走りで歩いている。その一人一人が向かう先を、僕は知らない。  「えっ?」 僕は咄嗟に聞き返す。この交差点は騒がしいから、か弱い彼女の声は僕以外には届いてなかった。 「優しさは、いりませんか。誰かに優しくなれます。平和に過ごせるんです。」 信号がチカチカと光り、その存在を主張する。僕も向こうへ渡らなければならない。 「いりません。」 僕は振り返ることなく進ん

        • 【短編】 ブルーモーメント

          『さよなら』に色をつけるなら、それはきっと青色だと思う。 きっと、なにより脆くて美しい言葉と色だから。 清く澄んだ水平線の青。 優しく艶やかな空のセレストブルー。 すっと伸びるあの子のワンピースの水色。 ぜんぶ、私にはもう届かない幻の青色。 それでも私は命綱みたいに、『さよなら』の四文字に縋り付いている。 … 日が沈んでいく間のほんの一瞬。 青空と夜空が混ざりあって、淡い群青色の空が生まれる瞬間がある。 薄明。あるいは、ブルーモーメント。 10分にも満たないその現象

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        • はるかぜがはじめましての人へ。
          3本

        記事

          【短編】 破損を縫って

          今朝、布団に穴が開いた。五年前に亡くなった母が上京するときにくれた、最後の形見みたいなものだった。 「大学生になって忙しくなるんだから、せめて布団くらいはしっかりしたのにしなきゃね。」と、一緒に買いに行った母は言ってくれたのに、いっこうに大学は忙しくならないまま終わり、母だけが帰らぬ存在となってしまった。 だからこそ、五年経って破れてしまった布団がまるで、楽しかった頃の母の思い出ごと穴が開いて無くなってしまうような気がした。私に出来るのはただやるせないまま、朝を過ごすことだけ

          【短編】 破損を縫って

          自己紹介 | はじめてのnote

          はじめまして、はるかぜといいます。 社会人1年目で、関西のどこかでホテルマンをしています。 趣味は文章を書くことです。 最近は小説に触れることが多いですが、昔は詩もやっていました。 最近は近所のカフェでモンブランを食べながら、ひたすら小説を書いてたり。 どこかでモンブラン食べながらパソコン開いてる人見かけたら、あいつか!!ってひっそり思ってください。 …声はかけないでね。こわいからね。 これからは、ゆっくりと自分の書いた文章をあげようと思います。 ここ数日には

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