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ニシタチで、フィッシャーのランダム化比較試験を実施したら、出入り禁止になる
疫学の発展に寄与したフィッシャーという英国人の統計学者がいます。
フィッシャーは、ランダム(無作為)化を用いて因果関係を確率的に表現する方法を編み出しました。
ケンブリッジ大学を卒業したフィッシャーは天才的な頭脳を持っていましたが、偏屈で人付き合いが上手ではありません。
大学での人間関係に疲れて、20代の終わりから40代の前半までの期間、イギリスの片田舎にある農業試験所の統計家として過ごしています。
ここで得た研究成果をまとめて、1935年に「実験計画法」を出版しました。
この本は、その後、さまざまな分野の研究者のためになくてはならない本となりました。
フィッシャーには、有名な「ミルクティ実験」というものがあります。
あるとき、ミルクティにうるさい婦人が言いました。
「私は、紅茶を先にいれたミルクティか、ミルクを先に入れたミルクティか、味が全然違うからすぐに判る」と主張したのです。
その場にいた英国紳士たちは、婦人の主張を笑い飛ばしました。
紅茶とミルクが一度混ざってしまえば、何ら化学的性質の違いなどないではないか。
しかし、その場にいたひとりの小柄で分厚い眼鏡をかけて、髭を生やした男だけが、婦人の話を面白がります。
「その命題をテストしてみようじゃないか」
この男こそ、現代統計学の父フィッシャーでした。
ティーカップをずらりと並べて、婦人に見えない場所で、二種類の違ったいれかたのミルクティを用意しました。
そして無作為に、婦人にミルクティを飲ませ、婦人の答えを書き留めた後で、確率の計算をするという実験を行いました。
これが世界で最初に行われたランダム化(無作為)比較試験と言われています。
婦人が5杯の全てを言い当てたなら、
2の五乗分の1の確率で、
32分の1 =0.03=3%
10杯の全てを言い当てたなら、
2の十乗分の1の確率で、
1024分の1=0.001=0.1%
このように5杯や10杯を言い当てられる確率はかなり低く偶然とは思えないので、婦人が、味がわかるというのは正しいと言ってもいいでしょう。
似たような人は、たぶん宮崎のニシタチにもいます。ニシタチは宮崎市の西橘通りの繁華街です。
焼酎にうるさい人は「俺は先に焼酎を入れたお湯割りか、先にお湯をいれたお湯割りか、味が違うからすぐ判る」と主張します。
居酒屋の店長が「お客さん駄目だよ、先に焼酎をいれちゃあ。お湯をいれてから焼酎を入れないと、味が変わるんだ」というかもしれません。
そのようなときは、フィッシャーのランダム化比較試験を実施して、5杯を全て言い当てたなら「あなたは正しい」と賞賛しましょう。
空気を読まないフィッシャーのまねをすることは、出入り禁止になる確率も極めて高いので注意が必要です。
東京でよく行っていた宮崎料理屋では、
「当店では焼酎のお湯割りに梅干しを入れることはしておりません。焼酎の香りだけで味わってください」
という紙が貼ってありました。
さすが焼酎王国宮崎!
私も焼酎にはうるさく、梅干しを入れた焼酎のお湯割りと梅干しを入れない焼酎のお湯割りは、味が違うからすぐ判ります。
フィッシャーの無作為較試験をやっても大丈夫です。
でも梅干しを潰さなかったら判らないかも……。
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