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ロンドンの商人グラントから、今日の衛生統計が始まった

武田鉄矢さんの「朝の三枚おろし」というラジオ番組を聞くと、毎日賢くなります。

ある朝「人口統計を始めたのが、イギリスの戸籍係だったんだってね」と聞いて、腰を抜かしました。
なんと、英国で始められた衛生統計の話でした。

朝からラジオで公衆衛生の話とは、すごい!

英国王のヘンリー八世は、ローマのカトリックと対立しました。
今の皇后と離婚して、別の女性と結婚しようとしましたが、カトリックの総本山は離婚をゆるさなかったのです。

激怒したヘンリー八世は、ローマのカトリックと縁を切り、独自の路線を歩むことになりす。

ヘンリー八世は、従来までのカトリック教会による住民支配をやめさせます。
宗教上の地域単位だった教区は、行政の末端機構に組み替えてしまいます。

例えば、これまでは生活貧困者の救済は教会の役目でしたが、救貧監督官という役人を置いて、貧民の救済を行わせました。
教区に住む住民に新たに課税して、その財源で教区内の貧民の救済を行うようにしました。

貧民かどうかは、労働ができるかどうかで区別をしました。
労働能力のない者は生活費を支給し、労働能力のある者には強制労働をさせました。

また、各教区からは毎週、死亡表の記載提出させました。
この死亡表の研究から、ひとつの偉大な成果が生まれました。

ロンドンの商人ジョン・グラントが、1603年以降の50年分の死亡表のデータをもとに、生命に関する最初の統計的分析を行ったのです。

グラントは。当時の英国の人口の急激な変動の諸要因を分析しました。
女性よりも男性の方が出生数は多いことが初めてわかりました。

また、グラントは生命表を初めて作成しました。これが現代の生命保険の基礎となっています。
その手法は、近代的統計学的研究方法や人口学的手法のさきがけでした。

グラントには、ペティという医師でオックフォード大学の教授の友人がいました。

ペティ教授は、社会現象も自然現象と同様に数量的観察によって合理性を明らかにできると、社会経済の数量的研究を行った人です。
「政治算術」という本を出版しています。これは岩波文庫で読めます。

可視化の鬼とも言えるベティさんが、友人だったこともよかった。その影響を相当受けています。
もし羊飼いのペティさんが友人だったら、死亡表の分析のような面倒臭いことはしなかったでしょう。

ロンドンの商人が独自で始めた研究から、今日の衛生統計が始まりました。
ヘンリー八世とペティ教授といった強烈な個性を持ったキャラが生まれた英国だからこそ、発祥したのだと思います.

公衆衛生は医師や研究者のものではなく、誰がやってもいいのです。
公衆衛生は自由なのです。

ハベレオ通信は毎朝7時に発信されます。
読んだ後に、武田鉄矢さんの「朝の三枚おろし」を聞けば、さらに賢くなるかも?
妄想も自由です。


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