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宮崎県高千穂町土呂久は、公衆衛生の原点である

宮崎県高千穂保健所では、土呂久地区の住民健康観察検診を行っています。

旧土呂久鉱山の操業による公害健康被害の地域指定を受けている高千穂町土呂久地区の住民を対象として行われている健康観察検診です。
慢性砒素中毒症をターゲットにしています

昭和48年以降、鉱山創業時の居住者を対象とする「大検診」と、大検診の結果から健康状態の経過をみることが必要とされた方を対象として実施する「第二次検診」を交互に実施しています。

内容は、臨床検査、神経内科・内科・呼吸器科・皮膚科・眼科・耳鼻科診査です

高千穂保健所の一階と二階を使って、また健康づくり協会の検診車も参加して、高千穂保健所が保有する設備・人員の総力を挙げて実施します。

医師や検査技師は、宮崎大学医学部の各科からの協力を得ており、看護師は地元から公募しています。
宮崎県の各保健所に勤務する保健師も参加しています。

慢性砒素中毒症の主な症状は次のとおりです。

第一 初期症状  
鼻炎、結膜炎、胃腸炎、上気道炎、気管支炎

第二 中間期症状 
色素沈着・白斑・角化症、末梢神経障害、レイノー現象、肝臓障害、腎臓障害、貧血

第三 遅発症状  
脳梗塞・心筋梗塞・肢端壊死、皮膚がん・肺がん・肝臓がん

全身的に症状があることから、複数の科の医師による専門的な診査が必要になります。

飲料水の汚染による慢性砒素中毒では、無症状のままに経過し、ある日気がつくと皮膚が黒くなり、手のひらや足の裏にイボイボ(角化症)が生じていた、というのが典型的なパターンです。

慢性砒素中毒で最も重大な問題は、数年~数十年後に出てくる遅発症状です。
血管がつまることにより脳梗塞・心筋梗塞・指や足の壊死が起こります。
がんは、最初に皮膚がんが発症し、次に肺がんが発症することが多いのです。

慢性砒素中毒の最も軽い初期の症状は、口腔粘膜の色素沈着です。
口の中の粘膜の一部が、黒くなります。 

これは専門医でなくても、誰でも容易に確認できます。
発症の初期段階で把握することができ、汚染水を飲まない対策をとることで砒素中毒の進行を阻止できます。

世界には、飲料水となる地下水が自然界にある砒素に汚染されている地域があります。

このような土呂久で得られた知見をもとに、広くアジア各地で予防活動を行っている研究者や団体がいます。

公害の経験を学ぶことは、公衆衛生の原点です。

高千穂町岩戸神社の道標

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