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一人でもレジオネラ症の患者の届出があれば、考えずに感じよ!

2002年の6月20日から7月23日に、宮崎県日向市にある日向サンパークお舟出の湯で295人のレジオネラ感染者と7人の死亡者が発生するという、我が国最大の事件がありました。
この事件がきっかけで、循環式の浴場の基準が改正され、宮崎県の条例は日本一厳しいものとなりました。
その後、宮崎県内の浴場での集団発生はなくなり、レジオネラ患者発生数も、国内でも最も少ない県の一つとなっています。

お舟出の湯には、14カ所の浴槽があり、5つのろ過系統で給湯されていました。
系統別の浴槽のレジオネラ菌検出状況は、
150  万 CFU
  68  万 CFU
   4.7万 CFU
   2.6万 CFU
   10未満 CFU

と差があったのです。
どの浴槽に入ったかで、その後の運命が決まりました

循環式の浴槽は、定期的な洗浄消毒、60℃以上の温度管理、残留塩素濃度の維持がなされないとレジオネラ菌が繁殖します。
レジオネラ菌は、アメーバの中で育ちます。
いわゆる「ぬめり」の中にいるのです。

公衆浴場の施設の管理者は、こうしたレジオネラの特徴をしっかりと知って、対策を取らなければなりません。

レジオネラ症の発見者は、医療機関の医師です。
医師は、患者に肺炎の所見があったら、必ず鑑別診断としてレジオネラ症を思い浮かべる必要があります。

レジオネラ症の肺のレントゲン像は、なんでもありです。
両側性のすりガラス状の陰影を見ると、「即新型コロナか?」と思いますが、レジオネラ症でも起こします。

レジオネラ菌は体内では、好中球やマクロファージといった食細胞に食べられますが、死ぬわけではなく、食細胞内で生き続けます。
食細胞は隠れ蓑となり、ペニシリンなどの普通の抗生物質は食細胞の中にはいらないので、効き目がありません。

また、通常の培養では生えてきません。
ブドウ糖ではなく鉄を食べる「鉄菌」ですので、特別の培地でないと検出できないのです。

さらに、肺の病気ですが、尿の抗原検査でレジオネラかどうか判別できます。

まず疑って尿検査を行い、レジオネラ症と判定されたら、保健所に届ける必要があります。
早期に診断し、レジオネラに効果のある薬剤による治療で救命率がアップします。
医師が気がつかなければ、原因不明の肺炎として死に至る恐ろしい病気です。

お舟出の湯の場合は、日向市内の医療機関の医師がレジオネラを疑い、保健所に届け出たことで発生原因を早めに解明することができました。

一人でもレジオネラ症の患者の届出があれば、考えずに感じることです。

循環式の風呂には、レジオネラが潜んでいるリスクが高い。
施設の管理者がレジオネラのことを知らなかったら、何もしないで放置するかもしれない。
そのような危険な循環式風呂に入った人は他にいないだろうか。
患者発生の報告がないのは、医療機関の医師が気がついていないのではないだろうか。

保健所は、施設の管理者が実施する定期検査の結果と、医療機関の医師の診断結果が届けられます。
二つの情報がシンクロする「ヘルス・インテリジェンス(健康情報)機関」です。
こうしたエージェンシー(機関)に勤務しているということで、情報に人一倍敏感になる必要があります。

Don't think,Feel!
Be water

考えるな、感じろ、水になれ、というブルース・リーの言葉は、健康情報機関のエージェントの胸に響くと思います。

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