0002 お茶

私は幼少期から、飲み物はお茶か水か牛乳を選んでいた。突然だが、私のお茶遍歴を聞いて欲しい。
母が近所のお茶屋で買っていた麦茶。粒が大きく、食べられそうな見た目をしている麦を煮出して作っていた。冷たければ冷たいほど良いと思っていたのだが、小4の夏休み、キンキンに冷やされた部屋で飲んだ熱々のほうじ茶に魅了され、新学期から「お茶が熱いまま学校に持って行きたい」とねだった。「熱いお茶がうまいんよ」とか友達に言いながら、残暑に熱いお茶を飲んでいた。
ある日家に帰ってルーティンの冷えた麦茶をがぶ飲みしていると、ん、なんだか味が違う。あんま美味しくない。すると、「麦茶終了のお知らせ。お茶屋さん閉店しちゃった。」と母が言った。麦茶ってお店によって味が違うんだ…この麦茶なら飲まなくていいやと心に決めた小4の冬だった。と同時に熱い麦茶ブームが去った。
熱いお茶が飲めるようになった私には選択肢が増えた。和菓子と飲む緑茶、お寿司屋さんで飲む粉末茶、祖母が食後に出してくれる玄米茶、金曜夜のロイヤルミルクティー、父がコンビニで買う烏龍茶、ケーキのお供の紅茶。大人と同じものを飲んでることが嬉しくてくすぐったかった。
中学生になり、部活が始まった。毎日麦茶当番が全員分のお茶を準備するらしい。ジャグに水を溜めて麦茶のパックを入れると。なるほど、簡単に作れるんだな。休憩のときにはちょうど良くなってるのか。よっしゃ、練習頑張るかー。
休憩になり、先輩にお茶を配った後、一口。

なんじゃこれ。うっす!

隣の友人に耳打ちすると「こんなもんよ」
信じられない。今思えば美味しくないものを口にして腹を立てた初めての出来事だった。
帰宅し、母にこのことを伝えると、水出し麦茶の存在を教えてくれた。なんでもいいから美味しいお茶を学校に持って行きたいと懇願すると、嗅ぎ慣れない香りのお茶が出てきた。色は赤く、草のような香りがする。ルイボスティーである。「飲めば肌が綺麗になった」という宣伝文句に引き寄せられた母と私はルイボスティーを6年間飲み続けた。
ルイボスティーとの、別れは突然やってきた。私は大学生になり、弁当と水筒の準備を自分でするように母から命じられたのである。計画的にお茶を作らない私は水を飲むことにした。それは就職しても続き、コーヒーにはまったことも相まって気付けばお茶を飲む機会が減った。

そんな私が、今年、知覧茶アンバサダーになった。

人生何があるか分からないものである。

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