非当事者研究への脚注その1
まず言っておかねばならないのは、「当事他者」は私の造語ではありません。哲学者廣松渉が用いた言葉です。ここから「当事他者」の哲学的出自を確認できます。
「当事他者」は廣松から始まりました。廣松は、新たな共同性を模索する運動が「連合赤軍事件」という無残な結末を迎えた当時の時代状況を背景にして、共同性について原理的な思考を展開した論文「共同主観性の存在論的基礎」の「第二節 役柄的主体と対他性の次元」で、「当事他者」を集中的に使っています。
廣松は「当事他者」を、私に役柄遂行を呼び掛け、対他的あり方を期待する者としています。「当事他者」は「当事者」に関わることに加え、「呼び掛け、応答を期待する者」と言えるでしょう。