晴れるや!
午前5時5分。隣町のコインランドリーに向かう。
外気温は 華氏59度。この冬の最低気温だ。
高台に向かって走っていると 温度表示が57度になった。
昨日の早朝から 波のサイズが上がりだし 休日の今日は
波乗りをしないと 昨日のうちから決めていた。
年末年始と 2週間の休みを取った皺寄せなのか 仕事始めから
ノンストップの2週間。先週は仕事に使うシーツが もう少しで
なくなる所だった。そんな時のために 多めに用意してはいる
のだが、忙しいと洗濯のタイミングがずれて 先延ばしにして
いるうちに 予備のシーツがどんどんなくなっていく。
そんなこんなで 週明けの今週月曜日に 10回分の洗濯を終えた
ばかりなのに ここ2日 予定外の予約が入り 来週月曜日まで
待つと 再び かなりの量になりそうで 今日洗うことにした
のだ。
だから 今朝5時少し前に目覚めたときには 躊躇することなく
身支度を済ませ まだ暗い中を隣町まで 車を走らせた。
久しぶりに ラジオのスイッチを入れると なぜか聞いたこともない
ステーションにセットされていて ソフトロック調の曲が流れてきた。
歌詞を聞いていると どうやらクリスチャンのチャンネルらしい。
救済や赦しという言葉があちこちに散りばめられている。
そして 「ハレルヤ!」。この言葉が 何度も繰り返されていた。
次の曲に移っても また「ハレルヤ!」という言葉が 何度も
出てきた。
そして イメージの中に 「晴れるや!」という字が浮かんだ。
ハレルヤは実は日本語なのか?それとも ヘブライ語に当て字をした
ものなのか?
この、神を讃えるヘブライ語である Hallelujah。
日本には ハレとケガレという言葉がある。
穢れ(ケガレ)は不浄を意味するが 気枯れと書けば 気の欠如を表す。
気の流れが滞ると 浄化が停滞し 不浄になる。
神への賛美を怠らなければ 気は常に流れているが それを怠けると
気の停滞が起こり 不浄を招く。
ハレとケという概念の歴史はまだ調べていないが コインランドリーに
到着するまでの間 そんなことを考えていた。
話しは変わるが コインランドリーは 私にとって銭湯のようなものだ。
家にも洗濯機があり それを使うこともできるのだが 同じ敷地内に住む
ご近所と共同だから 仕事で出る洗濯物は なるだけコマーシャルサイズ(商業用)の洗濯機を取り揃えているコインランドリーですることにしている。
そうすると10回分の洗濯物でも2台で一気にやり終えることができる。
私個人の生活は 至ってシンプルで 猫と暮らしているから 時々 人間の世界が気になり 銭湯ならぬコインランドリーで 人間ウォッチングをする。
そこで 見ず知らずの人たちと笑顔を交わし ときに言葉を交わし 稀に
肩が上がらないなどという人が 洗濯かごを持ち上げれないでいるのを
手伝ったりする。
何より 共通の目的のもとに みんなが集い その共通の目的のために
誰もが行動するのを見ているのは なんだか気持ちがいい。
かといって 軍隊の行進には 何も感じない。制服に身を包むことで
個が剥奪されているからだ。
話しはさらに逸れていくが 今冬は初めて 日本チームが ダ・フイの
開催する パイプラインコンテストで優勝した。
チームの1人 松本浬空は まだ10代。
17歳で単身インドネシアのメンタワイにわたり8ヶ月間サーフィンに
明け暮れたという経歴を持つ。
そのせいか 彼のチューブライディングのスタイルは 往年のジェリー
ロペスを思わせる 禅スタイルだ。
その彼がもらってもよさそうだった個人優勝は 地元のコア・ロスマンが獲得した。彼は彼の兄ともども 歴代の大波コンテストの勝者でもある
のだが 同時に主催者の息子でもある。
今冬のワイメアコンテストの勝者は主催者ではないが大会ディレクターの息子だった。波乗りのような大会は 選手のライディングを判定する審判によって スコアが左右されることがある。
球技のように得点を入れて結果が出るスポーツに比べると 曖昧な部分が多い。この2つのコンテストの勝者は どちらも実力のある個人ではあるのだが 賞金の絡むコンテストで こうも関係者の息子が選ばれると 私のような妄想家にとっては 妄想の元になる。
が 時は止まらない。
流れていくのみだ。
混沌が 世の常であるこの世界で 松本浬空の禅スタイルを見るたびに なぜか心は「晴れるや!」と 私を笑顔にしてくれるのだった。