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シード時の仮説を証明。RekMAがより必要とされる時代に。ジェネシア・ベンチャーズがHaulへ追加投資を決めた理由
株式会社Haulは、国内初となるAI x SaaSで採用成果を向上させるイネーブルメントソSaaS「RekMA」を提供する、コンパウンドスタートアップです。今回の対談では、シードに続きプレシリーズAも弊社事業に出資頂いているジェネシア・ベンチャーズの河野優人氏 (以下、河野)に、出資を決めた理由や投資判断に影響したポイントについて、Haul 代表取締役 CEO 平田と対談を行いました。
プロフィール:河野優人(ジェネシア・ベンチャーズ Principal)
2013年インドに渡り、現地スタートアップ、インドテックメディアYourStory、サイバーエージェント・キャピタルでの事業開発及びスタートアップ投資に従事。日本ではEdtechスタートアップQuipperでコンテンツ開発を担当。2017年ジェネシア・ベンチャーズ参画。2019年インドネシアオフィス立ち上げ、2020年ベトナムオフィス代表を経て、2023年より日本オフィスを拠点に活動。日本・東南アジア・アフリカで約30社のシード投資支援を実行。早稲田大学/社会科学部卒。
シード期のピッチから感じた「こだわりの強さ」
ーー初めに出会いのエピソードに触れさせてください。
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河野:初めて平田さんとお話させていただいたのが2023年3月でした。投資先のMOSH株式会社CEOの籔さんからご紹介いただき、田島(ジェネシア・ベンチャーズ代表取締役)と一緒にZoomでお話させていただきました。
その時のプレゼンの濃度というか、ピッチ資料のページ数やデザインも含めて非常にしっかりと作られてるなと思い、こだわりの強さが感じられました。お話させていただいてる時の平田さんからも、起業家としての芯の強さを感じたのを覚えています。
田島が「平田さんの起業家としてのポテンシャルの高さを感じたので早く進めよう」とプッシュしてくれたこともあり、即座に投資委員会へ進めました。
ジェネシア・ベンチャーズが重視するポイントは「市場の変化の方向性」「成功への執着」「欲求のベクトル」
ーースムーズに社内で検討を進めて頂いたと思いますが、 ジェネシア・ベンチャーズがファンドとして大事にされてることや、河野さんがご一緒したいと思える起業家像を教えてください。
河野:様々なベンチャーキャピタルがある中で、ジェネシア・ベンチャーズがユニークな点の一つは、 ビジョンとミッションへのこだわりです。
ビジョンは「すべての人に豊かさと機会をもたらす社会を実現する」、ミッションは「アジアで持続可能な産業がうまれるプラットフォームをつくる」を掲げています。テクノロジーは社会を良い方向へ変化させることが多いですが、必ずしもそうではない。だからこそあるべき世界の実現に本気で取り組むスタートアップとご一緒したいと考えています。
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その上で、投資を判断する際に重視している1つ目のポイントが、「市場の変化の方向性」です。断面図的な市場規模の数字の話というよりは、その市場が今後どう変化していくのか、変化の方向性と変化速度、そしてその変化の要因を重要視しています。
2つ目のポイントは、「欲求のタンクの大きさ」です。言い換えると、「成功への執着」に近いと思います。スタートアップは、基本的にまだ誰も実現できていないことに挑戦することになります。その過程では多くの困難に直面するため、「強い欲求や執着がなければ最後まで成し遂げられない」と考えています。だからこそ、起業家の方が大きな欲求や成功への執着を持ち合わせているかは、投資判断する上で大事にしているポイントです。
3つ目のポイントは、「欲求のベクトルが社会に向いていること」です。起業家の方が社会や他者にベクトルを向けているのか、 自分自身の欲求や自尊心を満たすことにベクトルを向けているのか、という点は見るようにしています。
ジェネシア・ベンチャーズではこれを「水の透明度」でよく表現するのですが、欲求のタンクがいかに大きくても、欲求のベクトルが自分だけに向いてしまっているとチームメンバーや社外のパートナーの方々を巻き込み、応援してもらうことはできません。もちろん利他と利己は0か100かではなくグラデーションであり、時に2つが混ざり合うものでもあります。ただ、主語を自分だけでなく仲間や社会にまで広げられるからこそ実現できることがあり、人や社会に応援してもらえる志や想いがあることが重要だと考えています。
ーーシード出資いただいた時、Haulの事業や私 (平田) への印象はどうでしたか。
河野:事業に関しては、「RekMAのプロダクト価値を正しく理解頂ける人はどのくらいいるだろう」と、最初は正直感じていました。Haulの掲げる『候補者体験』や『再現性のある採用力』という概念の重要性は、採用や組織に対する感度が高い方であれば、理解頂けるであろう一方で、すべての方がその価値に気づけるわけではない。そのため、本事業においては理想の採用プロセスとは何かを市場啓蒙することが必要となると考えていました。
また、HR Tech市場は急成長市場である一方、市場に存在するプロダクトの数が非常に多いです。これからの時代は複数のSaaSを統合していく世界観となるはずであり、その統合をする側になるのか、される側になるのか。これはHR Techに限らず、SaaSスタートアップへ投資させていただくときに重視している観点です。統合する側になるためには、顧客基盤を急速に拡大し、顧客データを集約するプラットフォームとなる必要があります。
RekMAのプロダクト価値を磨き、『候補者体験』や『再現性のある採用力』という概念の重要性を啓蒙していけるか、 そしてプラットフォームとして周辺領域まで統合していくことができるか、これがシードの投資判断において重視したポイントです。
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結果として、以下の2つはクリアとなりシード投資の判断に至りました。
まず、1つ目の「RekMAのプロダクト価値を磨き、『候補者体験』や『再現性のある採用力』という概念の重要性を啓蒙していけるか」について、投資検討の過程で何度か平田さんと質疑応答をさせていただく中で、回答の解像度が非常に高く、1つ聞いたら10返ってくるような感覚があり、力強く市場啓蒙していける方だと思いました。また、市場に関しても人材不足で雇用流動性が高まることで、企業は人材を選ぶだけではなく、人材に選ばれる時代となっていきます。今がまさにRekMAのプロダクト価値が大きく高まっていくタイミングだと考えました。
2つ目の「どのようにプラットフォームになるのか」に関して、企業が採用力を高めていくには、自社の採用力をメタ認知する必要があると思っています。候補者から見た自社の強みや弱みを客観的に正しく認識できなければ、全ての努力やアクションが間違った方向に向かってしまう危険性があります。採用力のメタ認知に必要な候補者データは、これまで採用担当の主観に依存しており、定性的かつ属人的でした。Haulのプロダクトは候補者データを収集・構造化し、採用力を高めるために本当にやるべきことを炙り出すブレインの役割を担えるという意味でもプラットフォーム化できる条件が揃っていると感じています。
ーーシード時の印象で、Haulの芯の太さはどんな時に感じられましたか。
河野:まずプレゼン資料のロングバージョンが200ページあり、それでいて無駄な情報があるのではなく、1ページごとに明確なメッセージがあったことに驚きました。また、海外事例の調査も徹底されており、世界を分母にプロダクトを考えていることが伝わりました。そして、メッセージを伝えるための資料のデザインにも強いこだわりを感じましたね。
平田:前職でも、新しい市場を立ち上げることにチャレンジしていたので、グローバルな情報に触れることもそうですし、常に事業を世界地図で捉えることは意識しています。そこを評価いただけたことは大変嬉しく思います。加えて、自社のバリューにも入っていますが、ラーニングアニマルになることはすごく意識していて、私自身が率先して体現していくべきなので、そういう点も評価いただき嬉しいです。
河野:もう1つ私たちが見ているポイントは、 「大きなキャンバスに緻密な絵が描ける起業家」かどうかです。志高く大きな構想を持っているという意味でキャンバスは大きいが、その実現に向けた戦略や戦術の解像度(=絵の緻密さ)が低い方がいれば、逆に緻密な絵を描くことはできるが、構想力のキャンバスが小さい方もいます。この両方を兼ね備えて、大きなキャンバスに緻密な絵を描ける起業家は稀です。その点、平田さんはABEJAでのHR部門の立ち上げ、その後HRBPとして多数の急成長スタートアップのHR支援に手を動かして取り組まれてきた経験がありながら、グローバルな視座で大きな事業構想を持たれており、「大きなキャンバスに緻密な絵が描ける起業家」であると感じました。
シード期における仮説証明、熱量のあるチームの構築がプレシリーズAの投資ポイントに
ーー今回、プレシリーズAの投資をしていただきました。投資判断に影響したポイントやシード投資時からHaulの変化を感じる点を教えていただけますか。
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河野:大きく分けると3点あります。
1つ目は、シード投資時の事業仮説が計画通りに進んだことです。特にオファーレターとアトラクトレターの両プロダクトが採用感度が高く、 影響力のあるシンボリックカスタマーの方々に導入いただいて内定承諾率の向上などの成果をしっかりと出せていることは大きかったです。シード投資のタイミングではまだ仮説だった部分が、しっかりと証明されていました。
2つ目は、プラットフォーム化への明確な道筋が見えたことです。1つ目の事業仮説が証明されたことに加えて、国内外のHRTech市場の綿密なリサーチを通じて、今後の事業戦略がより詳細に描けるようになりました。
さらに、短期的な戦略だけでなく、中長期的なロードマップも精緻に策定できたことは、非常に重要なポイントです。具体的には、プロダクトロードマップ、GTM戦略、データ活用の方向性など、成長戦略を明確に描くことができ、ビジョンと実行計画が高い解像度で結びついた状態になったことが、投資判断を進める大きな要因となりました。
3つ目の理由は、組織作りです。シード投資時は平田さん一人でしたが、そこから1年で、スタートアップ経験者や上場企業の役員経験者など、素晴らしいメンバーを各部門で採用できている。そしてメンバーの方々が、Haulの目指すビジョンやプロダクトのあり方に共感して、熱量高く働かれていることもすごく重要な要素です。経験豊富な方々が集まりながらも、 熱量高く成果にコミットメントできる。ここを両立できていることもHaulの大きな強みであると感じています。
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平田:採用力を強化するプロダクトを提供している会社である以上、初期フェーズで良い人材を採用することは、私自身も苦労しましたが徐々に実現できていると感じます。
これまでのキャリアや取り組んできたことに対して、「経験が多くあり熱量が低い人」と、「経験は少ないが熱量が高い人」、どちらと一緒に働きたいかというと、やはり後者の方です。様々な企業の採用をサポートしてきた立場から、何十社と組織を見させてもらいましたが、いつも成長の起爆剤になる人材は、冷めたシニアというよりは熱量のある若手が作り出していることをすごく感じました。そういうことを体現する組織にしたい、そういう方々に集まって欲しいと考えていて、実際にその仲間を集めることができました。社外の方から、 “若さとシニアさが融合したバランスの良い稀有な組織”とよく言っていただいています。
また、スタートアップ2回目以降の方も多いので、 理想と現実の両方を理解しながら事業を進められています。理想があることを認識した上で、現実からどう動かすべきかのギャップに対しても的確に向き合っていける。初期フェーズは様々な役割が溢れていくのですが、それぞれのメンバーが自主的に越境していき、 マルチプレイヤーになってくれる。そういう人材が初期のフェーズで来てくれたのは非常に大きかったです。
ーープレシリーズAの投資を決めていただいた理由を3つ答えていただきましたが、判断に影響した他の要因やポイントなどはありますか。
河野:私自身はベンチャーキャピタルとして働くことを通じて、 本当の意味で社会に大きな価値を生み出す会社に投資させていただきたいと思っています。
シード投資後、Haulのビジョン・事業・組織に対する理解度が深まるにつれて、私自身のビジョンとHaulのビジョンの重なりが大きくなる感覚がありました。平田さんがHRBPとして多数のスタートアップの現場で採用力強化に取り組まれて培ったノウハウをプロダクトに落とし込むことで、多くの企業が採用力を高めることができる。そして、企業と人のマッチングの場である採用プロセスが進化することで、一人一人の可能性が解き放たれる世界へと繋がるはずです。
私自身がその実現に貢献したいという想いが強まったことも追加投資の判断において大切な側面でした。
平田:シード投資いただいてから作りたかったプロダクトが形となり、当初の計画通り、プロダクトを通じて提供できる価値や成果も、複数の事例を創出できました。私自身もシードからプレシリーズAに至るタイミングで仮説検証も進み、経営・事業戦略の中長期的なビジョンがより鮮明になった期間だと実感しています。
生成AI×HR市場のカテゴリーキングになり得るプロダクト、大きな挑戦がHaulならできる
ーー最後に、これからHaulの候補者・転職者に向けて、メッセージをいただけますか。
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河野:ジェネシア・ベンチャーズとしても私個人としても、Haulのポテンシャルの高さを強く感じてるからこそ、シード・プレシリーズAで2回の投資をさせていただきました。人材不足の深刻化、働き方の多様化、雇用流動化などの大きな市場変化によりRekMAのプロダクトがより強く必要とされる時代となっていきます。そして、大方針の事業・組織ロードマップもしっかりと描けているため、あとは高い熱量で共に挑戦できる仲間が必要です。
また、Haulのユニークな点は、採用プロセスに質的な変化を生み出せることです。テクノロジーで採用業務を効率化することも重要ですが、効率化だけではない世界があります。AIによって採用や組織作りの業務効率化は進んでいきますが、人と向き合い心を通わすことはAIには代替できません。人と人の関係性の質をいかに高めていくかという点は次の時代のビッグテーマであり、ここに挑戦できることもHaulの魅力だと思っています。
今後の事業戦略においても、現在のオファーレター、アトラクトレターにとどまらずに複数の新規プロダクトローンチを予定しており、生成AI×HR市場のカテゴリーキングを目指せるスタートアップです。本当に大きなチャレンジができる環境だと思っているので、そこがHaulをおすすめしたいポイントです。
平田:創業当初から、人とテクノロジーの最適な役割分担はすごく意識しています。人の介在価値は絶対になくならないと思っていますし、人間のコミュニケーションすべてを代替する気はまったくありません。人にバリューがずっと残り続ける部分と、テクノロジーで分担した方がいい部分があると思っていて、その点は常にプロダクト化する上で意識しています。
そして、RekMAというプロダクトは私としても、大きなビジョンを持って、 中長期で取り組んでいけるテーマ設定と時間軸で経営をしています。RekMAは、採用のエクスペリエンスを向上させ、企業と候補者間のエンゲージメントを上げ、最終的には企業の採用活動をイネーブルメントしていく。さらに採用自体のマーケティング化とオートメーション化を進めていく。そういった領域のカテゴリーキングになるという願いを込めて「RekMA」というプロダクト名にさせていただきました。
実現したいこと、やりたいことは本当にたくさんあります。良い仲間が続々と集まっていますが、ビジョンやミッションを実現していくためには、まだまだ仲間が足りません。経験と熱量を併せ持つ仲間がもっと増えるといいなと思っています。
河野:我々としてもHaulのこれからの更なる発展を非常に期待してます。
平田:本日はどうもありがとうございました。
▼Archetype Venturesとの対談記事はこちらから
ジェネシア・ベンチャーズ コーポレートサイト:https://www.genesiaventures.com/
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