サンタクロースの存在証明(企画没ネタ)
最近、読む人さんの推理ゲームに参加させていただきました。
先ほど解答編が公開されたのですが、なるほどの結末でとても勉強になりました。自分はミステリーをあまり読まないこともあり(小説自体そんなに読まないんですが)いまいち解き方の定石?を知りません。
なので、読んでいて引っかかった部分、つまりストーリーとしては省いても成立するが、わざわざ描写されている部分に着目するという、メタ思考の読み方をしてみました。
そのおかげで着眼点はあってたんですけど、やはり応用の仕方で躓いていましたね。
そういった意味でミステリーに苦手意識を感じる部分は、答えが一つであるという点ですね。
自分はアイデアを出すのは得意なんですが、きっちりとした回答をするのが苦手です。なので答えを解くのではなく、創る方が楽しいですね。
というわけで「創ってみた」のが、後で出てくるこの記事の「解答編」になります。そもそも、読む人さんの推理ゲームは今回が2回目の開催で、1回目が昨年のクリスマスにあったんですよね。
その時は読者が解答編を書くと言う形式で、それを受けて私はプロットを書き上げました。なんですが、考えたトリックが成立しないことが判明したため、あえなく没になりました。
という訳でその時の残骸が下の「解答編」という名のショートショート風アレンジになります。はっきり言って元ネタに対して失礼なほど稚拙な内容なのも投稿をためらった原因です。それだけ突破不可能なロジックだったということで目を瞑っていただければ...
逆にショートショートでこの形式を使って、舞台設定とか前半の内容だけを作り、他の人にオチを書いてもらう試みとかも面白そうな気がします。
そして最後に、なんでこのタイミングでこれを公開?というのはもっともな疑問なんですが、今日を逃すと一生noteの下書きに放置されたままになる気がしたからですね。あと深夜テンションです。眠い。
『解答編』 サンタクロースの存在証明
わたしはもう、笑うしかない。
ついに、私の目の前で、待望の事件が起こってくれた。
いたのだ、サンタは本当に。
いや待て待て、探偵を志すものがこんな簡単に諦めてしまっていいのだろうか。もう一度、昨日の出来事を推理し直してみよう。
まず、プレゼントが届いたという事実から3つの可能性が考えられる。
1つ目は、ベランダの窓からプレゼントが運ばれた。
2つ目は、部屋のドアが破られた。
3つ目は、それ以外の方法が存在する。
1つ目の可能性から考えよう。もし窓からプレゼントが運ばれたならベランダをよじ登ったり、プレゼント自体を吊り上げる必要がある。ならばこれはどうだろうか。
『ここから車を飛ばすなら(片道三十分以上はかかる)』と昨日わたしは考えた。
つまりわたしのお父さんは車を物理的に飛ばすことのできる念動力(サイコキネシス)の使い手だったのだ。それならばプレゼントを運ぶことも容易い。
というのは流石に無理がある。寝起きで夢と現実の境界が曖昧になっていたようだ。朝シャンですっきりするか、コーヒーをせがんで眠気を覚まさないといけない。
コーヒー!わたしはその存在を思い出し、2つ目の可能性を推理し始めた。つまり、わたし自身が自分の部屋のドアを開いたのだ。
わたしは夕食の時間に、スティックシュガーを一本まるごと入れたコーヒーをカップになみなみ注ぎ、さらにはりんごジュースまで摂取している。そして、血液中のカフェインと糖分が生み出すのは利尿作用である。ダメ押しにわたしは、昨日の夕方四時以降トイレに立ち寄っていない。
つまり夜中にトイレに行きたくなった、わたしとすれ違うようにお父さんがプレゼントを投げ込んだのだ。
いやその可能性はありえない。いくら寝ぼけていたとしても、むしろ寝ぼけているならば、自分の仕掛けでつまづいて鼻を赤くしているはずである。何よりもコーヒーの事を思い出してから、今にも決壊しそうな乙女の尊厳がその可能性を全否定していた。私は急いでトイレに駆け込む。
トイレで一息つきながら、他の可能性について考えてみる。例えば、私自身がプレゼントを持って部屋に入ったというのはどうだろう。そこで、私はあることに気が付き、暗い階段を駆け下りて、一階のリビングにいた両親の前で叫んだ。
「わたしまだクリスマスプレゼントを貰ってない!」
昨日のクリスマスは、サンタの事を考えすぎてすっかり忘れていた。何もプレゼントをくれるのはサンタさんだけじゃないのだ。いやこれは、それぞれの家庭によって違うのだろうが。
もしかすると、わたしは考えに夢中になっている合間に両親からクリスマスプレゼント渡され、それをサンタさんからのプレゼントと勘違いしている可能性もある。
だがその考えはあえなく否定された。「おはよう」と声をかけてきた両親から貰い忘れた分のプレゼントを渡されたのだ。開けてみると、『名探偵ナンコちゃん』の最新刊とモンポケのメモ帳が入っていた。
「夜更かしでもしていたのか?起きるのが遅かったじゃないか。」
とお父さんに言われ、時計を見るともう9時前だ。
「あれお父さん、仕事は大丈夫なの?」
わたしがそう質問すると、お父さんは困った様子で
「仕事もなにもなあ。」
とぼやいて、お母さんと顔を見合わせる。
そこで丁度テレビから天気予報が流れた。そういえばわたしはテレビにはあまり興味がない上に他のことで頭がいっぱいだったので、昨晩のニュースは見てなかったっけ。
『それでは今日の天気です。日本列島は大型の寒波に包まれています。』
だがわたしは、テレビに映ったその光景を見て、引き戸を閉めるのも忘れて階段を駆け上がった。
ついに答えが分かったのだ。お父さんはサンルームの通気窓から、わたしの部屋のベランダまで歩いて来たのだ。
『特に北関東では観測史上最大の大雪になり、』
私は部屋まで辿り着くと、床に置かれたプレゼントを開けて、中に入ってた小型カメラを取り出し、カーテンを開いた。
『2~3mの積雪とのことです。』
わたしはもう、笑うしかない。
ついに、私の目の前で、待望の事件が起こってくれた。
いたのだ、サンタは本当に。
クリスマスの夜にこの景色が私の下に届いたという事実こそ、サンタクロースの存在証明である。
窓の外は見たこともないような銀世界。
わたしは証拠写真をパシャリと撮った。
という「降り積もった雪の上を歩いてベランダを渡った」という話を練っていたのですが、ここまで書いた段階で本文をよく見返してみると『雪国でもないのに(珍しく二重構造になっている)』という記述があることを発見し、最後の抵抗として東北地方以南の北関東の最大積雪量を調べてみたところ異常気象時でも70cmとあったので完全にボツになりました。
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