死亡フラグがたちました 〜 死の想起が人々をどのように変えるのか? (2021)
大阪経済大学 経済学部 服部ゼミ: 田口 航輝・清水 快斗・横川 達哉・川合 翔一郎・井ノ倉 光・金谷 幸紘
概要
本研究は「人が死の存在を認知したとき、どのような心理状況の変化が起こるのか」を検証するため、オンラインアンケート (N=196) を用いたランダム化比較実験を行いました。具体的には、被験者を (i) 死の存在を想起させない(基準となる)『コントロールグループ』、(ii) 身近にある死の存在を想起させるグループ(『すぐ死ぬかもグループ』)、(iii) 自らにとって遠くにある死の存在を想起させられるグループ(『いつか死ぬかもグループ」』の3つのグループにランダに振り分けるという処置により、被験者の消費行動や様々な選好に及ぼす効果を検証しました。
実験結果から(1)自らにとって遠くにある死の存在は人々の現在の消費性向を高める (p<0.1)、(2)身近にある死を想起するとリスクに挑戦的になる (p<0.1) (3)死の種類に関わらず、死の想起によって未来への展望を悪くする (p<0.05)、ということが明らかになりました。
また、これらの結果は被験者の自尊心の程度によって調整され、(1)自尊心の高い被験者は、死の想起でより「リスク回避的」に (p<0.05)、自尊心の低い被験者が、「身近な死の想起」によって強くリスク挑戦的になる (p<0.05)、(2)自尊心の高い被験者は、遠い死を意識したときのみ将来への展望が悪くなり (p<0.1)、自尊心の低い被験者は死の想起により将来への展望が悪くなる (p<0.05) ということが明らかになりました。
これらの結果から、例えば会社で新しいプロジェクトを行う際は、社員に死生観を問う質問など、死を想起させる質問を行うことで臆病にならずに挑戦しやすくなるなどといった応用方法が考えられます。