連作小説【シロイハナ】3

優先することはこれからの生活だ。母が退院できたときに生活が儘ならない状態であれば、それこそ不安が募り、より一層母を苦しめることになってしまう。目の前の母の痛みに寄り添うことは確かに大切なことだ。ただ、それを続けていてもこれから先も続いていく生活が保証されることはない。

一刻もは早く自立しなければ、せめて母が病気を抱えながらも経済的にだけでも安心できるように成長しなくては、そうだ、それが、俺にできること。自分を成長させてしっかりお金を稼いで安心できる環境を作ること。よし!やるぞ!

一口だけつけた、すっかり冷めきったコーヒーを口の中に一気に流し込む。ゴクっと飲み込むと冷たく感じたがその分身体は引き締まった。丸められた伝票を手に取り、席を立つ。思いの外勢いがよかったのか、近くにいた店員に肘が当たる。「あっ、すみません!」いえいえ。といってくれたのだろうか。どこか優しい笑顔で会釈をしてくれた。

母が入院をしてから2週間が経とうとしていた。休みの日の日曜日、その日は1週間ぶりに母に会いに病院へと足を運ぶ。病院に着き、車を降りる。少し寒いなと父かもらったマフラーを首に巻く。どこか上手く巻けていない気がして、運転席の窓ガラスで姿を確認する。検査入院なのだ。お医者さんも近くにいてくれている。前よりは良くなっているにちがいない。枯れ葉が地面を這う音を聞きながら両手をポケットにしまい、足早に病室へと向かう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?