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習い事、決める前に知っておいて欲しいこと

さて、こどもの「なぜ?」に成長発達の視点からお答えするコーナーです。
今日のテーマは「楽器を習わせる前に知っておいて欲しいこと」です。

子どもたちが登下校する風景、
ひとりで歩いている子、友達と追いかけ合っている子、おしゃべりに夢中になっている子、
いろんな子どもたちがいます。そして、持ち歩いている持ち物の中に懐かしいものを見つけました。鍵盤ハーモニカ。
私が生まれ育った長野県ではピアニカと呼ばれていました。

このピアニカ、というか鍵盤の楽器にですね、実は苦い思い出があります。
小学校の3、4年生くらいの時ですかね、音楽の授業でも演奏がだんだんだんだん、高度になってきて、右手だけではなく、左手を一緒に使う、という課題が出てきた時のことです。
何の曲だったかは、すっかり忘れてしまったんですが、メロディだけは覚えています。

らーんららんらんらんらんらーん♪

で始まる曲、
最初は右手だけでそのメロディを弾いているんですけど、途中からですね、左手が二拍子で重なるんですね。
右手の四拍子だけ、というのもできますし、左手の二拍子だけ、というのもなんとかできたんです。
だけど、それを同時にやろうとすると、なんかこう、まるで魔法にかけられたみたいにですね、
どちらかの手のリズムに、反対の手がひきずられてしまうんです。
もう何度やってもできませんでした。
この曲は、最初のメロディを弾いた後、
途中からその、左手が、出てくるんですね。
うまくいかないもんですから、くるぞ、くるぞ、くるぞ!って
こう、なんか妙に意識してしまってですね、左手になった瞬間に、
あ、やっぱりだめだった、みたいな、まあ本当に魔法にかけられた、っていうのが、すごく、わかりやすい言い方でですね。
なんかできないんですよ。
とはいえ、授業は時間がたててば終わるものですから、
課題自体は何回か続いたかもしれませんが、それ以降のことはあまり覚えていません。

実際に、同じように四拍子と二拍子を、別々の手で扱えるようになったのは、中学に上がるか上がらないか、そのくらいだったと記憶しています。

今となっては笑って話せる思い出ですけれど、その時は、他の子はできるのに自分だけできない!と、随分みじめな思いをしたように覚えております。

これって、右と左の協調運動です。
左右を強調させて動けるようになるためには、その前の段階にいくつかのステップがあります。
両手両足を同時に動かせる段階、そして右なら右、左なら左、どちらかだけを上手に動かせるようになる段階、
その先に、左右を上手に協調させて動けるようになる段階です。

食事の例だと、もう少しわかりやすいですかね。
利き側で箸を持ち、反対の手で茶碗を持ち、姿勢をまっすぐに保って、食事をする、というのも、左右の協調運動がじゅうぶんに育ってこそ、できるようになることです。
だから、食事中に箸を上手に扱えない、ということだけではなく、器に手を添えられない、姿勢を保って食事ができない、というのも、丁寧に発達の順番を見てあげる必要があるんです。

もし、そのことを知らなかったら、周りの大人はどうするでしょうか?

きっと一番多いのは、言葉で注意する、ということだと思います。
言葉で注意して意識させれば、一瞬はうまくできるようになります。
でもすぐに乱れてしまう。
そして、何度言っても、できるようにならない。
すると、できるはずのことを、意識してやっていない、
つまり、やる気がない、注意したのを無視されていると、
大人の人が感じてしまうことがあります。

私も、この発達の視点という考え方を持つ前は、同じように考えていましたから、気持ちはよーくわかります。
そして同時に、やろうと思ってもできないカラダのままでいる、子どものみじめさもわかるんです。
その顕著な例が、あの鍵盤ハーモニカを、右手と左手を協調させて弾けなかった思い出に、つながっているんです。
そういうお子さんは、いくら言葉で注意しても、きっと、簡単にはできるようになりません。意識してやろうとすればするほど、疲れてしまいます。
意識しないで自然とできる大人とは、ちょっと事情がちがうんです。

音楽の授業だけではなく、習い事に楽器を選ばれているご家族も、多いのではないでしょうか。
ピアノやエレクトーンといった鍵盤の楽器。ギター、バイオリン、弦楽器。リズム楽器のドラムとか、太鼓を選ばれている方も、いらっしゃるかもしれません。
どの楽器も、姿勢をしっかり保ちながら、左右を協調させて演奏します。
もし、苦手さが見えるのであれば、言葉で注意して意識させるだけでは、上達のスピードが遅いままかもしれません。楽器の指導をしてくださる先生方にも、このような、子どものカラダの発達の順番、知っておいてほしいと思います。

そして、左右の協調運動が苦手なお子さんに、試してみてほしい遊びがあります。

両手両足を同時に動かす動き、たとえばカエルの動き。
床に両手をついて両足でジャンプ。両手をついて、両足でジャンプ。
前へ進んで後ろへ戻る。そんな遊びを増やしてみてください。
もっと簡単なら、親御さんと一緒に何かあるごとに、
両手でハイタッチ!するのもいいですね。
とはいえ、楽器が上達しないのが、左右の協調運動だけにあるとは限りません。
だから、うちの子はどうなんだろう?と気になった方は、ぜひ、個人相談、ご利用ください。

今回は「楽器を習わせる前に知っておいて欲しいこと」というテーマでお送りいたしました。

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