“専門職大学”のこと、知ってますか 2
1では、専門職大学の概要と、創設される背景について触れましたが、その実態はどうなっているのでょう。
管轄する文部科学省のホームページによると
「医学、歯学、6年制の薬学、獣医学の分野を除き、専門職大学の職業分野は限定されていないが、いわゆる成長分野などが中心になると想定される。例えば、観光、食と農業、IT・コンテンツなどの分野が考えられる」といいます。
では、もはや危機に瀕しているといわれているファッション分野についてはどうなんでしょうか。関係者の話によると、いまのところ、専門職大学の設置申請をするのは、学校法人日本教育財団(旧モード学園)だけのようです。同校は、医療などの分野で複数の専門職大学を申請し、ファッション分野では「国際ファッション専門職大学(仮称)」を開校するようです。
なぜ、他の専門学校は専門職大学の申請をしないのでしょうか。その理由はハードルの高い設置基準にあります。
文科省のホームページによると、専門職大学の教育内容は「その専門性が求められる職業についている者、関連事業を行う者の協力を得て、産業界と連携した教育を実施することが義務付けられている」
したがって、卒業単位の3~4割程度以上が企業実習等にあてられ、4年間で20単位以上が必要と決められています。
また、ここからが重要なのですが、「必要な専任教員数の4割以上が実務家教員とし、その半数以上は研究能力を併せ有する実務家教員とする」ということです。
実務家教員というのは、例えば、ファッション業界で5年以上、該当する専攻分野の実務に携わってきた人のことを指します。販売、バイヤー、MD、VMD、マネージャーなど5年の実務経験があれば、教員資格があります。ところが、その半数は大学などでの教員歴、修士以上の学位、または企業などでの研究上の業績を有する者でなければならないととされています。その理由は、1にも触れたように、専門職大学では、専門学校とは異なり、技能だけでは対応できない応用力が求められるからだといいます。
この設置基準だと、服飾専門学校が専門職大学を開設するのは、非常に困難になってきます。ファッション業界でいま活躍している人のなかに、大学の教員歴がある人や修士を持っている人がどれだけいるでしょうか。最近は、ファッション業界にも経営学修士(MBA)を持つ執行役員や現場リーダーが増えてきましたが、それでも人材不足は否めません。この設置基準が緩和されないかぎり、実務家教員を必要数確保できないのが現状です。
さらに、学生一人当たりの敷地面積や校舎の面積なども、基本的には大学と同等かそれに近い設置基準が求められています。
「こんな厳しい設置基準では、専門学校では対応できない」と、ある服飾専門学校の関係者は話します。専門学校の社会的地位向上や学生数の確保などを狙い、新たな学校運営の柱として専門職大学の開設を検討してきた学校は多いようですが、ここにきて設置基準の面で断念した学校も多く、学生側からすれば、選択肢が限られることになります。
ただ、少子化社会にもかかわらず、雨後の筍のように私学の大学が増えたことを考えると、学校数が限定されるのは悪いことではないかもしれません。大切なのは、学校数ではなくて、創設された学校でいかに充実した教育サービスを受けられるかということです。社会人にとっても、学び直しの場にもなるので、今後、注目していきたいと思います。
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