普通の販売員はもう要らない
「普通の販売員はもう要らないと思います」
ネット通販が勢いを増し、リアル店舗が苦戦するファッション業界。
こんな時代に、販売員としてどんなことをモットーに仕事をしていますか?という問いに、大阪にある某商業施設のファッション専門店店長が、こう答えてくれました。
「普通の販売員はもう要らない」という言葉の裏には、顧客が求める接客でなければ、逆にうっとうしがられてしまう、そんな販売員はこれからの時代に生き残れないという、強い危機感があります。彼女自身も元々接客されるのが嫌いだったそうです。
「だからこそ、ネット通販ではできない、お客様の心を動かすような接客をしたい」
「ミュージシャンのライブで気持ちが揚がるように、そんな感動と喜びを洋服の販売を通して与えることができるはず」
「店のスタッフにも、店頭でパフォーマンスができるようにアドバイスしている」といいます。
彼女は、“関西一の売り上げ”を目標に掲げ、1年後に達成した敏腕店長です。「売り上げ達成は、スタッフのモチベーションしだい」といい、店長業務のなかでも、スタッフのモチベーション管理をとくに徹底しています。
そんな彼女を敏腕店長に育てたのが、ブランドのエリアマネージャーだそうです。マネージャーの仕事に対する姿勢やアドバイスの一言一言が、彼女の意識を変え、人生観にまで大きな影響を与えました。
そのせいか、取材での対応も完璧で、言葉を選びながらこちらの質問に的確に答えてくれました。店長の立場で伝えるべきこと、会社の考えはもちろん、自分の思いもきちんとわかりやすく相手に伝えられるのも、普段から目的意識が高く、自分のすべき役割に対して真摯に取り組んでいるからなのでしょう。
20代の若き店長に、ファッション業界が今後歩むべき姿をかいま見ることができました。
この会社の広報担当者に聞くと、同社には、人間力と指導力のある魅力的なエリアマネージャーが何人も揃っているのだとか。
インターネットを中心とした情報化社会に対応できず、既存のアパレル業界はいま瀕死の状態と巷間伝えられています。そんななか、業界が今後復活できるとすれば、20代の彼女がいみじくも伝えようとしていた「人間力」が重要なキーワードになるのでは。
人手不足やコストなどの問題ばかりに気を取られ、企業にとって一番大事な「人を育てる」ことを軽視してきたアパレル業界も、早く意識を変えないと、ホントに“誰かに殺されてしまう”のではないでしょうか。
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