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舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」
行ってきた。
先月怒涛の一気見をしたハリー・ポッターシリーズ。
興味があれば、是非こちらもご覧いただきたい。
その最後を締めくくるのがこの舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」である。
これを観て、あとはとしまえん跡地のハリー・ポッタースタジオツアーに行くだけだ。行くだけなのである。
はじめに〜プチあらすじ〜
「呪いの子」のあらすじ。
「ハリー・ポッターと死の秘宝」から19年後を描いた「呪いの子」。
ハリーは大人になり、子どもが生まれている。
その名もアルバス・セブルス・ポッター(次男)。
父親との関係に悩む彼が、ドラコ・マルフォイの息子スコーピウスと出会うことで、物語は再び動き出し、ハリーたちの元に暗雲が立ち込めていく。
とまあ、そんなストーリー展開にも触れつつ、今回のこの舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」について感想を書いていく。
基本的に感想についてはネタバレを気にせず書いていくので、ネタバレするところからの注釈はつけていく。
注釈がない箇所はネタバレがないと思っていただいて良い。
座席について
今回俺はC席を選んだ。
理由は安いからである。7000円。
ちなみにその他の座席は土日になると少し値段が上がる。
C席は土日でも平日でも7000円。
詰まるところ、この7000円が提示できる最低ラインということだろう。
ちなみに次に安いB席になると11000円になる。土日だと12000円。4000円あるいは5000円も値段が上がる。
結論を言う。普通にC席で大満足だった。なるべく安く済ませたいならC席でいい。そして、B席は絶対に取るな。A席もオススメしない。C席を取らないならお金出してでもS席以上を考えた方がいい。
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上記座席表を見てもらいたいのだが、A〜C席は基本的に2階の最後列である。
まず大前提として冒頭でも書いた通り、2階の最後列でも十分舞台は堪能できる。
それを踏まえた上で率直に言って、2階の最後列になるとAもCも大差がないと思う。
そりゃ多少は見やすさは変わってくるのかもしれないが、遠いことに変わりはない。
つまるところ、4000-7000円の差額に見合うだけの差がないと思うわけである。
メリットをあげるとするならば、平日のA席B席はそんな事情を知られているからなのかスカスカに空いていたので、ゆったり周りに誰もいない状況で観劇したい、その上で可能な限り安くしたい、という人にはオススメできる。
この公演は休憩込みで3時間40分もあるので、ゆったり観劇できるというのはそれなりに恩恵がデカい。
ちなみにストーリーに関わらない範囲でゆるいネタバレになるが、一部舞台上を広く使った演出があり、その演出をたっぷり浴びたい場合、1階席が必須となる。
が、2階席は2階席でその演出を俯瞰で見れるので、それはそれで悪くなかったりする。
なので、最大限に舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」を味わうとするなら、まずは1階席で見て、それから2階席で2回目を観る、というのが一番ベストな形であろうと結論づけたい。
そうは言ってもハマるかどうかもわからないし、1回でいいよという人も多いだろうから、それならまずは2階席で安く観劇してみるといいと思う。十分に楽しめる。
あとこれは最大の注意点なのだが、2階席最後列ともなると、オペラグラスは必須だ。必須の必須の必須だ。
1階席で一度観た人が2階席で二度目を観るなら、場合によってはオペラグラスを使わない楽しみ方もあるかもしれないが、手先周りで演技したり魔法を使うシーンなんかもそこそこあるし、表情も2階最後列だとあまり視認できないので、オペラグラスがあるかないかではだいぶ満足度が変わると思う。持っている人は持っていくべきだし、amazonで3000円ほどで買えるので、持っていない人は7000円+3000円のチケット代だと思って購入をオススメしたい。
(どうしてもオペラグラスを買いたくないなら、やっぱり値段を上げてS席以上の席を取るべきだ)
あと全体を通して若干声が聞き取り辛かった。
これはC席だからなのか、会場の問題なのかは不明。
スピーカーに近ければ遠くても聞こえるみたいなこともあるだろうし、場所次第ではC席より聞き取り辛い座席とかも下手したらあるかも。
舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」について(ネタバレあり)
ここでは「呪いの子」のストーリーではなく、舞台として「呪いの子」がどうだったのか?という感想について語っていきたい。
ここからがっつりネタバレる。
結論、とっても堪能させてもらった。
まるでマジックショーを観ているかのような「えっそれどうなってん!?」という演出もたくさんあったし"魔法学校が舞台"というハリー・ポッターの世界観をよくぞここまで現実のステージに落とし込んだな、と思う。
特に一幕のラスト、ヴォルデモートが勝利した世界でディメンターが場内を支配する演出なんかは、2階席で観ていても素晴らしくて、1階席で観ていたらさぞ没入感がすごかっただろうなあと思う。
それから二幕の終盤でハリーがヴォルデモートに変身するシーンなんかも、映画では出せない舞台だからこその迫力があって最高だった。
が、その一方でやっぱりどうしたって、それ舞台でやる必要あるんか?という部分もあったりして、これは本当に好みの分かれるところだろうなと思う。
のこのこ自分から舞台を観に行っといてこれを言うのはかなり野暮だと自覚した上で、自分のnoteなので書かせてもらうが、ドラコとハリーが部屋の中で戦うシーンのワイヤーアクションなんかはだいぶちゃっちいなと感じたし、列車に乗っているシーンではトランクを座席がわりにして列車を再現しているのだけれど、これを舞台ならではの演出として楽しめるのか、舞台の限界と取るのかで、だいぶ印象が変わる。
魔法とかも火がブワァン!って出たりはするんだけれど、当然映画のような迫力があるわけではなく、めちゃくちゃ冷める表現を使えば「火の線」でしかなかったりする。
俺は基本的に映像派の人間なので、これを映像で観たかったなーと思うシーンがなかったかと言えば、多々あった。
とはいえ、堂々巡りのようだが、改めて演出は目を見張るものがあって、ハーマイオニーの部屋の本棚にアルバスたちが吸い込まれていくシーンなんかは、あれを舞台で表現できるのすごすぎるというか、映画のCGを使わず本当に人間が本棚に吸い込まれていくならあんな感じなんじゃねえ!?というくらいだったし、二幕冒頭(確か)のパラレルヴォルデモート世界でデスイーターたちが並んで行進するシーンでは、暗闇とライトの明暗を利用して人間がまるでそこにいたかのようにパッと出現する演出があって、これも大変テンションがあがった。
が、じゃあそれを舞台でやったからなんなのか?という身も蓋もないことを結局また考えてしまうのが俺の悪い癖であって、結局のところは好みなのだということでこの話は終わりにしよう。
これはこれでいいし、映像は映像でいい。ということなのだ。答えはない。
キャストの演技もとても良かった。
今回観に行った回でハリーを演じていたのは上野聖太さん。
今のハリーをメインで演じているのは、吉沢悠さんと平方元基さん。上野さんは普段は別の役を演じていてハリーの「カバー」という立ち位置のようだ。
あまり舞台に明るくない俺は「カバー」という言葉を初めて聞いたのだけど、要するにメインキャストの二人が出れない時の代役ということらしい。
ハリーを舞台上で演じるのはどうやらこれが10回目とのことで、普段は他の役を演じながら、スポット的に主演であるハリーを演じると言うのは、これはこれでものすごくプロフェッショナルだなあと思う。
上野さんのことは今回初めて知ったのだけれど、変に知ってる人が演じるより良かったような気がする。
語弊を恐れずに言えば、メインキャストの回よりもカバーの人が演じる回の方がおそらく人気がない。ただあくまでもそれは知名度の差でしかなく、しっかりとした実力者が演じるわけなので、フラットに作品を楽しみたいなら、逆にこういう日こそ狙い目なのかもしれない。
他に印象に残ったのはスコーピウス役の浅見和哉さんと嘆きのマートル役の仲本詩菜さん。特に嘆きのマートルは完全再現でヤバかったな。あれはそのまま映画にハメこんでも違和感ない。
ストーリーについて(ネタバレあり)
なんかチラっと目にしたのだが、この「ハリー・ポッターと呪いの子」は作者による同人誌みたいな揶揄をされているらしい。
正直なところ言い得て妙だな、という感じである。
まず大前提として、ハリー・ポッターの全作品を観てないとこの作品は意味がわからないと思う(舞台演出は楽しめるが)。
「知らん人のために話整理してんなこれ」的これ見よがし説明セリフもないわけではないが、とはいえ知ってる前提でなんの説明もなく出てくる言葉も大量にあるので、全然ついていけないと思う。
俺が行った回は男子校の高校生たちが社会科見学的なイベントで大量発生していて、トイレで「ハリポタ観たことあんの?」「いや兄貴が見てたのチラ見したくらいでぇ」みたいな会話をしていたが、兄貴が見てたのをチラ見してたくらいの彼はそこまで楽しめなかったと思う。
そうなるともう中身を理解するというより"感じる"しかない。
なので、絶対に全部観てから行こう。
そして「死の秘宝」から19年後の世界を描くと銘打つ通り、完全な後日談なので、別に「あの時のアレがああだったんやぁ!」みたいなのもない。
なので、この舞台を観たことによって、これまでのハリー・ポッターへの理解が深まるとかはない。
これまでの知識に「呪いの子」がプラスされるだけ。
(もしかすると細かく言い出せばあるのかもしれないけれど、ライト層には気付けない)。
だからまあ、言ってしまえばなんでもアリなのだ。
今作はアルバスとスコーピウスがタイムターナーを使って過去を改変したことによって、未来が変わってしまうという物語なわけだが、19年後の世界でもいい関係を築いているロンとハーマイオニーが離婚してたっていいわけだし、その挙句にハーマイオニーとハリーが再婚してたっていい。
ある意味今回の「呪いの子」も19年後の世界のひとつを描いているに過ぎないのだ。
身も蓋もないことを言っているのは重々承知だが、そういう意味でこの「呪いの子」が作者による同人誌と揶揄されるのもわからないではない。
その上で、ハリー・ポッターの前提知識がない状態の「呪いの子」が作品として面白いのかと言うと、極めてベタな物語だ。
期間限定ハリポタ味の「時をかける少女」である。
それでも、舞台演出の良さと掛け合わせて「ハリポタ味の時かけ」に価値がないかと言えば、全然あると言える。
また、ハリー・ポッターシリーズを全作観たからこその深みというのは確かに存在して、例えば両親がいないまま育てられたハリーが子育てに悩むというのは、とても現実味があっていい。
その苦悩を絵のダンブルドアに打ち明けるシーンなんかは、まさに全シリーズを観てきた人にしかわからない重みがある。
また、ハリーの次男アルバスは、話は聞かないし無鉄砲だし、だけど心根は優しい、ハリーの生き写しみたいな人間なのに対して、ドラコの息子スコーピウスは気弱で、オタク気質で、ドラコとは似ても似つかない少年として描かれている。
そんな二人が「英雄の息子」「ヴォルデモートの息子(あるいは元デスイーターの息子)」という正反対の立ち位置で互いに孤立し、理解し合うというのはとても味わい深さがある。
ハリーとドラコ、二人の歴史があってこそ成り立つ関係性だ。
そういう意味でも、同人誌と言えばそうなのかもしれないけれど、シリーズ全作を味わったからこそ"作者本人が紡いだ同人誌"を存分に堪能させてもらえた。
結びと余談(ネタバレあり)
ちょっと気になったこととして、いくつか。
ハリー・ポッター一気観の記事でも再三に渡って言ってるんだけど、自身もデスイーターであり、ヴォルデモートの第一部隊みたいな活動をしていた親父を父に持つドラコが、こんなにのうのうと暮らしてていいの?
「スコーピウスはヴォルデモートの息子なのでは?」の前に、ドラコの息子であることがまずエグいだろ、と思わずにはいられない。
が、それをこの世界で言及するのは野暮なんだろうな。
それから、アルバスとスコーピウスが同性愛者であるかのような構成だったと思うのだが、これは勘違いではないよね?
はっきりとは描いてはいなかったけれど、ダンブルドアがゲイであることを考えると、アルバス・ダンブルドアの名前を引き継いだアルバス・ポッターがゲイであるというのもある意味リンクしてんのかな。
LGBTの認識がずいぶん浸透してきた今、アルバスとスコーピウスが同性愛者であっても何も不思議ではないし、普通に暮らす中で二人が普通にそうなることだってあるだろうが、そうは言っても同性愛者は世間一般的には少数派なわけで、それをあえて匂わせたことに、どういう意味があるのかは気になるところである。
あと、アルバスがまさかのスリザリンに振り分けられるところから物語が始まるわけだけど、これはスコーピウスとの関係性のためなんだろうな。
舞台を見た限り、アルバスは本当にハリーの生き写しみたいな感じでスリザリン感はあまりなかったし。
スリザリン感がないと言えば、スコーピウスにもあまりスリザリン感はないんだけど、パラレルヴォルデモートワールドでは、ドラコマルフォイ2みたいになっている点からして、その素質はあるのかなっていうのと、アルバスをグリフィンドールに入れるということは「ドラコの息子」をグリフィンドールに入れるということなので、それは無理があるってなったのかなと思う。二人の関係を構築するためにはアルバスをスリザリン寮生にするしかなかったんだろう。
そんな感じ。
さて、これでハリー・ポッターシリーズ制覇。
スタジオツアーいくぞー!!!
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