税務署仕事術:こより

みなさん、仕事で「こより」を使ったことがありますか?

こよりとは、和紙を細長く切って糸のようによりをかけたもののことです(コトバンク)。

ほとんど見かけない「こより」、私が税務署で働いていた頃は、よく使っていました。何に使っていたかというと、税務調査後の書類のファイリングです。
普段は、申告書や関連書類はホッチキスで留めます。分厚いものは、当然サイズを大きくして大きなホッチキス。ところが、税務調査に関わる書類だけは、なぜか「こより」で束ねていたのです。これが全国的な慣習なのか、それとも福岡国税局管内だけの伝統なのかは、今でも謎です。
当時は当たり前の光景だったので、特に疑問にも思わなかったのですが、転職してからは一度も「こより」を使ったことはありません。

調査の総括書や証拠資料、提出された申告書や修正申告書、調査で取得した関連書類など、時には電話帳ほどの厚さになるこれらの書類を、こよりと千枚通しを使ってぎゅっとしばるのです。最初の頃は加減がわからず、ゆるゆるになってやり直しを命じられたこともありました。

「こりゃ売れるばい」と言っていた上手な先輩がいました。その人は、いつもピシッと綴じており、見事に仕上がっていました。
しかし、便利な文房具がたくさんあるにも関わらず、なぜあえて「こより」なのか。今考えても不思議で仕方ありません。

税務署の、ちょっとした謎のひとつです。

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