織田信長、消防士の編
織田信長は現代で消防士をやっていた。火を操るのではなく、火を消す方だ。だが、それがまた妙にしっくりきている。朝、消防署の詰所に入ると、そこには信長の上司である明智光秀がいた。タイムスリップ先でこんな再会があるなんて誰が予想しただろうか。
「信長、今朝も異常なしだな」と光秀は無駄に厳しい表情で言った。相変わらず眉間にシワを寄せたまま、書類を持ってこちらを見下ろしている。どうにも好きになれない表情だ。信長は軽く敬礼しながらも、内心「もっと笑えよ」と思う。いや、笑われても逆に怖いか。
その日、通報が入った。住宅街で火災発生だ。信長たちは迅速に現場に向かった。そこは一軒の家が炎に包まれており、もうもうと煙が上がっていた。
「また放火か…許せん!」と、現場で拳を握りしめる光秀。信長はホースを構えながら、思わず心の中でツッコミを入れる。
(お前が言うなよ。許せんって、お前がな。)
だが、信長は何も言わずに、ただ黙々と水を撒き続けた。火を消すのに集中だ。隣で怒りに震える光秀を横目に、彼は心の中で呟く。
(まあ、お前がやったのはちょっと大規模すぎたけどな。)
炎は次第に消えていったが、光秀の怒りは収まらない。
「信長、絶対にこの犯人を捕まえねばならん!世のため、人のためだ!」
信長は再び心の中で突っ込む。
(ああ、世のため、人のためって…お前が…お前が…)
だが、その言葉を飲み込みながら、信長はただ笑顔で頷き、次の現場に向かうのだった。
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