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廃墟と猫〜後編の前編

猛暑日にはひんやりした文章を!!

駄菓子屋のおばちゃんのなんて事ない日常のショートエッセイ

「廃墟と猫」
後編の前編
あらすじ
家の近所にいつからか経っている廃墟で見た白い影の正体は‥。

廃墟の窓の隙間から、ボロボロの階段へ足を下ろしたのは1匹の猫。

黒に茶が混じったその体は、近所で良くみかける野良猫だった。


ある時は、最寄りのパーキングに鎮座していたし、ある時は、近所の家の庭をすました顔で闊歩していたし、ある時なんかは、うちの玄関を庭で日向ぼっこをしていた姿を数年前から観察していた。誰かがご飯をあげているようで、ちょっと近づいたくらいでは逃げないくらいに、人間慣れしている。


野良猫に親しみやすい名前をつけるの、同罪だよなぁと思ったので、あえて可愛らしくない呼び名で、〝アイツ〟と呼ぶ事にし、心の中や家族間での会話に登場することもしばしばあったりしていた。


そうか。もしかして、あの白い影はアイツだつたのかな?
「アイツの住処」
廃墟に別名がついた日。

しかし、あの影がアイツだったのかの確証はない。もしかして、別の生き物が同居している可能性も捨てきれない中で、一体何をどうしたら良いのか?私にはわからずにモヤモヤした気持ちを抱えながら帰宅した。


数日後、廃墟の前を通ると、事態が急変した事に気がついた。
なんと窓の隙間に透明のビニールテープが幾十にも重ねられて貼られていたのだ。

一体誰が?
野良猫の出入りに気づいた人物がいるのか?
それとも‥?!

私の他にこの廃墟を注視している人物がいる事を知った瞬間。

知らぬ間に、町の皆の注目を集めていたのか廃墟よ。廃墟は私だけの廃墟ではなかったのだ。
(そりゃそうだ。はじめから私の廃墟ではない🙇)

とにかくアイツの安否が気になったが、その後、いつものパーキングでアイツを見かけたので、ホッとした。


それからまた月日は流れた。



今年の春。
アイツは、今日もいつも通り、町を闊歩していたし、窓に貼られた透明のテープは幾十にもにも重ねられて、剥がされる気配はなかった。

この廃墟の事を何かしらに記してみたい気持ちを持ちながらも、行動に移せずにいた私は、近所の道端に生えている雑草をぼんやりとした顔で抜いていた。



突然。2台の大型トラックがやって来て、これから抜こうと思っていた雑草の上に停車した。

何て邪魔なんだ。
しかし、怒りよりもなぜかこの時は、やたらと胸騒ぎがして不安になった。

トラックから降り立った作業員の人達は、一体どこに行くんだろう?

霊感は宿っていないとは思うが、こんな時の感は当たるから不思議だ。なんだか寒気もした。

おじさんたちの足取りは、確実に廃墟に向かっていたのだ。
ほどなく、大きな音が響き出した。
ついに廃墟の解体がはじまったのだった。

後半の後半に続く

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