Gounod "Faust" Overture
グノー 1818-1893(生年と没年)
ワーグナー 1813-1883
ヴェルディ 1813-1901
この三人、ほとんど同時代人なんですよね。ロラン=マニュエルの「音楽のたのしみIII」で指摘されていて、改めてずいぶん作風がちがうよな、と思った次第。関係ないけど、ヴェルディで検索するとサッカーチームが出てくるんだよな。別にいいんだけど。
R-Mも言っているけど、グノーは「ご近所のとっても親切なおじさん」であります。時代性もあってそれなりの音はしてるんだけど、やっぱり「親切なおじさん」。お別れをしようとすると、周りのだれかれ全員に接吻をして回るのですごい時間がかかる。
さて歌劇「ファウスト」序曲であります。ドイツ人は絶対「ファウスト」って言わないらしいですな。「マルガレーテ」っていう。こだわるなぁ(笑)
序曲の最初のところをピアノ譜に落としてみました。
それとなく劇的な始まりではあるんだけど、やっぱり「軽い」。①のところは音としてはF7だけど、D#は導音でしょうね。B7(b9)(b5)で、根音抜き。
短三度上で(Abで)もう一度同じことを繰り返す。②からも対位法的に見せかけているけれども、実は和声的で、あまり過激なことはない。③のところで最後のバスを8分音符でCに上げれば素直にC7-Dbという進行になるのだけれど、これをAbにおきっぱなしにしたのが工夫といえば工夫でしょうか。AbM9 aug5 omit 3 ??
④から⑤にかけてが面白いところで、④はDbm7(b5)になってますが、トップがe f fis gと上って、⑤のところがC7になれば、トリスタン和音ですよね。ここでは④の最後の8分音符がきれいにDb7になって、平行5度をいとわずに三和音のCに抜けたため、まことに普通になっています。
⑥からも、バスからソプラノにかけての「入り」が、それぞれc f c f となっていてそれっぽいのですが、やっぱり対位法的というよりは和声的です。
⑦のところ、タイがかかっているから掛留かと思うとさにあらず。むしろアルトの倚音であるa の音がやや新鮮な響きです。ほとんどV7-IあるいはV7-VIという形の素直な反復進行でことは進み、⑧からはCのペダル上で型どおりの上行する反復進行になります。35小節めからは下行してきますが、ここも反復進行でさすがに一応掛留を持たせていますね。
ちょっとしゃれているなと思うのが⑨のところでC上のF Majorをおいたところ。そのあともう一度F minorになりますが、⑪でAの音がはっきりあらわれてF Majorになって主部に入ります。音階はハープがオクターブで演奏しています。
やっぱりグノーは「親切なおじさん」でした。