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声だけでもセクハラってされます
コールセンターで働いていたことがある。
少しだけ。
某サービスの一次受け部署で、かかってきた電話を自分で処理するか、専門的なことなら他部署にまわすという役割を担っていた。
こっちからかけることはない、いわゆるインバウンドってやつですな。
ネットで問い合わせも出来て、更にAIがチャットでお返事してくれるご時世、電話をかけてくるのはそこそこ年齢いった方が多い。
少なくとも私の働いていたところではそうだった。
特にお年寄りが多くて、お話長くてどうしようかとよく思っていた。
本題に入るまでが長い。
なんのために自分が電話をかけてきたのか、本当だったら真っ先に開示すべき情報の前に、近況とか天気の話をしだすのやめてくれ。
と思いながらも声には出さず(顔には出してた。電話の向こう見えないからね。眉毛吊り上がってることしょっちゅうだったと思う)、にこやかに電話応対をするのはなかなか精神にくるものがある。
実際その仕事をしているときはちょっと痩せた。
大体毎日胃が痛かったもんで。
パソコンを見ながらヘッドセットで口元にマイクを持っていった状態で電話を受けるのね。
で、登録してる顧客の方の住所なんかは電話出た時点で画面で確認できるようになる。
問い合わせ内容の記録も残すから、キーボードカタカタしながら電話を受け、お話を聞き、通話時間を見て「ああ今日のノルマ(もちろん仕事なので受電件数にもノルマがある)こなせそうにないな」と思ったりしてる。
色んなストレスエピソードがあるけど、私が忘れられないのは「うちにおいで」おじいちゃん。
このおじいちゃん、要件大したことじゃなかった。
口調もはきはきしてて、話もまともで、「楽な一件だ」と内心思ってた。
クローズトークで「他にお困りごとはございませんか?」って聞いたの。
そしたら「ああ、他にもある」って言われて、そうなると「どういった内容でしょう?」って聞かざるを得ない。
そしたら、「どうも電話が遠い、お姉さんの声が良く聞こえない」って来る。
嘘吐け。
今まで普通に話してたじゃないか、と思いつつ「そうですか。それはお困りですね」と一応受け入れる。
そしたら「だから家に来てくれ」と言う。
しかも「お姉さんが直接」と。
うちはねえ、そういう店じゃないんだよ。
呆れて次の言葉を続けられずにいると、「俺の住所分かるだろ? 茶菓子用意して待ってるからな」と電話切られた。
茶菓子て。
今時小学生でもそんな誘いのらないって。
もちろんかけ直すことはせず、経緯だけ記して対応終了した。
その後そのおじいちゃんの電話対応せずに退職したからどうなってるか知らない。
もしかして「約束したのに来ない」って怒ってるかもしれないけど、それはそのとき電話受けた人が「約束してないし、なんなら会話録音してるからな」ということを上手くオブラートに包んで伝えてくれたことと思う。
お姉さんを直接家に呼びつけたいなら、最初からそういうサービスに電話して欲しい。
ワンチャンとかないから。
電話でお話弾んでいるように感じるのは、それはクレームにしたくない、顧客満足度をあげろと言われてる対応者側の業務内容の一環だから。
でも、こういうこともあるんだなあ、と社会勉強になったのも事実。
声だけでもセクハラってされるんです。
お姉さんだというだけで誘われるこの恐ろしき世界。
愛想良くしないと怒るし、良くすると勘違いされるし、接客業って難しい。
今もふと思い出すことのある、忘れられないエピソードである。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次回以降もお付き合いいただけると嬉しいです。
それではー。