【FGO考察】マリスビリーそこまで考えてないと思うよ
人理継続保障機関フィニス・カルデア。
魔術だけでは見えない世界、科学だけでは計れない世界を観測し、人類の決定的な絶滅を防ぐために成立された特務機関。
しかしその実態は非人道的な研究が横行し、そうして得た技術は外法とまで称されるほど。
そんな曰く付き組織、カルデアを立ち上げた初代所長マリスビリー・アニムスフィア。物語が佳境へと向かう中、いよいよきな臭くなってきた人物である。
ゲーティアによる人理焼却、そして異星の神による人理編纂という未曾有の危機にあって、どこまでが彼の計算の内なのか?彼が果たそうとしていた根源到達方法とは?
本考察ではマリスビリー・アニムスフィアに焦点を当て、彼の本当の目的ホワイダニットを追究していく。
vs異星からの侵略者?
まずは異星の神について。
彼はかの存在がこの星に顕現することを予期していたのだろうか?
その答えはカルデアスが変色したタイミングから推察できる。
カルデアでは地球(の魂)のコピーたるカルデアスを観測し、百年先の文明の光を以って未来の証明としてきた。そのカルデアスが変色したのは物語開始の半年前だという。
そう、半年前だ。マリスビリーが亡くなったのが物語開始の四年前、つまり彼の存命中には人理編纂などという異常は観測されていなかった事になる。
もちろん変色の原因が異星の神降臨の儀式にでもあったのだとすればタイミングなど問題ではないだろう。しかし、それならば相応の準備がなされているはずだ。
白紙化を免れるため彷徨海へ逃げ延びたシオンをして、カルデアのレイシフト技術は異星の神へも有効であり、地球侵略を開始するならまずカルデアを潰してからだと言う。狙われる事は想定できたはずだ。
魔術世界を知らない一般人でもなし、確実に特攻とれる神造兵装も用意せずに喧嘩を売るだろうか?
以上の事から、異星の神の顕現はマリスビリーにとってイレギュラー、想定外であったと私は考える。
vs災害の獣ども?
では、七つの人類悪ビーストに対してはどうであったか。
クラス・ビースト。“既にどの時空にも存在する”在り方『単独顕現』を持ち、通常のサーヴァントでは太刀打ち出来ないレベルの霊基を持つまさしく災害。本来、打倒のためには冠位クラスが喚ばれる程の存在である。
やはりカルデアスの変色前であったことから、少なくとも人理焼却については予測など出来ていなかったことだろう。出来ていればあんな魔術もクソもない物理的なテロで壊滅寸前にまで至らなかったはずだ。
しかし、その他のビーストまではそうとも言い切れない。
というのも、既に四(五)体のビーストを打倒していることから分かる通り、カルデアの設備はビースト討伐に特化している。
特異点の発見→レイシフト→調査・修正といつものパターンではあるが、時空間移動する相手を見つけ追っかけて行って倒さなければならない、と実は割ととんでもない事をしている。しかも七騎以上は確定しており、最善を望むなら冠位クラスの戦力が求められるだろう。
如何に型月世界と言えど、果たしてこれらが可能な組織などどれほどあるだろうか?
また、マリスビリーが用意した七人のクリプターと大令呪。“世界そのものを塗り替える”と言われるこの特権を使用すれば、いずれ時間の復元力に正される特異点でのビースト討伐も“確かにあった出来事”として歴史に刻むことが出来るのではないか。
机上の空論
では、マリスビリーの目的はビースト討伐であった、と仮定して考察を進めてみよう。
その場合最大の問題が残っている、ビーストはどうしたら顕れてくれるのか?
確かに抑止力の召喚、降霊儀式・英霊召喚についてもその対象についても存在する、と書物にある。戦い抜く技術も戦力も用意した。しかし、倒すと定めた相手が目の前に顕れてくれなければそんなもの“机上の空論”、お伽話と変わらない。
ではどうするか。簡単である、ビーストが顕現する世界にしてしまえばいい。
炎上汚染都市 冬木。特異点と化したあの地で行われていた聖杯戦争は、いつの間にか違うモノにすり替わっていたという。さらに原作者は過去のインタビューにて、データのコリジョンが起きた結果サーヴァント達に異変があったと語っている。
コリジョン、“衝突”である。私はその“衝突”を起こした犯人こそマリスビリーであり、その結果FGO世界にビーストが顕現するようになったと考えた。
残念ながら、どうやったら“衝突”なんて事が起こせるのかは現時点で不明である。
しかし、何と何が“衝突”したかを特定できればその目的は推察できるはずだ。
まず一つはSN世界である事に異論はないだろう。2004年冬木市であること、セイバー・アルトリア、アーチャー・エミヤ、そしてクラスこそ違うもののクーフーリン。よく知ったFateシリーズ始まりの第五次聖杯戦争である。
そしてもう一つ。私はこれを1991年に起きた一度目の東京聖杯戦争、亜種ではあるもののビーストが顕現した蒼銀世界であると考えた。
理由はサーヴァント達の不自然さだ。
本来、聖杯戦争に神霊は召喚されない。にも関わらずシャドーサーヴァント、ライダー・メデューサは神霊としての霊基でしか持ち得ないハルペーを所持していた。
そしてアーチャー・エミヤ。彼は霊長の守護者として召喚される時には着用しないという赤原礼装を中途半端に着用していた。
つまり“神霊”と“霊長の守護者”が召喚された世界とコリジョンを起こしていたと考えられる。そしてその条件を満たしたサーヴァントが蒼銀世界にはいる、ランサー・ブリュンヒルデだ。しかも彼女の召喚にはオーディンが介入しており、特異点F/Xにはそのオーディンが力を与え擬似サーヴァントとなったキャスター・クーフーリンがいるときている。
特異点を生み出す技術がカルデアに備わっていたことも見逃せない。
人為的に特異点を作り出すにはレイシフト(もしくはそれに準ずる手段)があれば可能な事は始皇帝の幕間にて語られている。
また、モルガンによってコフィン無しのレイシフトは一方通行でしかないこと、しかし受信者さえいれば“情報”を送る事が可能であることが証明されている。
特異点作成が可能な魔術工房の主で、コフィン無しで“情報”を送り2004年の冬木で受け取る事ができた人物。
マリスビリー・アニムスフィア。彼は人為的に特異点を作り出し、異世界の聖杯戦争との“衝突”の果てにビーストの顕現する世界へ作り替えようとしていた、と考察した。
マリスビリーのホワイダニット
マリスビリーの真の目的、それはビーストの顕現そして打倒だという考察はご理解いただけただろうか。
しかしこれではまだ足りない、なぜビースト打倒がキリシュタリアの行おうとしていた事と同列なのか、根源到達方法たり得るのかの証明がまだだ。
そこで私が考える“ビーストとはなにか”を説明しておこう。
ビーストとは煩悩であると考える。
それはあらゆる“苦”を生み出す反転した欲求。アラヤから取り外された人々の無意識下の集合体、末那識から生まれたもの。
そしてビーストはある規則性を有している。それは『マズローの欲求七段階説』との対応である。
これを今回の考察に当て嵌めてみよう。
即ちマリスビリーの真の目的とは、ビースト=煩悩の打倒、この世全ての苦からの解放。
翻ってそれは『全ての人が幸せになる』第六魔法の成就である。
魔法と根源到達は切っても切れない関係だ。魔法とは根源の渦に直接つながるもの、マリスビリーは根源到達の手段として魔法を成そうとしていたのではないだろうか。
また、ビースト=煩悩であると考えると各異聞帯の歪さにも説明がつく。マリスビリーの“机上の空論”を継いだ七つの異聞帯。それは彼らクリプターにとっての理想、煩悩どころか欲求のない世界であった。
ロシア異聞帯では生理的欲求、生きたいという欲求が欠落した結果、他者への憐憫が生まれなかった。
北欧異聞帯では安全欲求の欠落の為、唯一神の支配下でなんの不満もなく安全圏を広げるという意識すら持ち合わせていなかった。
中国異聞帯では社会的欲求が欠落していた為に家族という概念すらなく、文化と言えるものも発展しなかった。
インド異聞帯では承認欲求の欠落というより、比較する相手すら次のユガにはもういなかった。
ギリシャ異聞帯では認知的欲求が欠落していた為、ただ神々から与えられる愛玩になんの不満も抱いていなかった。
ブリテン異聞帯では審美的欲求の欠落の為、秩序や正しさなどという美徳を尊ぶ土壌が生まれなかった。
そして恐らく、最後の異聞帯は自己実現欲求の欠落した世界となるだろう。
残念ながら、本来『欲求』なくして世界の発展はあり得ない。人々が何かを願い求めた結果が発展であり、発展し得ない世界は剪定事象となり終わる運命となる。それを無理矢理続けた結果が異聞帯である。
そしてそう、その逆の編纂事象とは。完成も崩壊もおとずれない、永遠に続いていく物語なのである。
六つの異聞帯を乗り越え、カルデア一行は最後の異聞帯へと挑むだろう。果たしてクリプター達の願いを全て否定し、全ての欲を打ち倒した先に彼らはどんな世界を見るのだろう。
そしてその先、残された特異点『冬木』でどのような答えを導き出すのか。
まず間違いないのは、この考察とも呼べない妄想をネットの海へ放流した私は早晩、羞恥心でのたうち回るという事だ。どうかハズレていても笑い飛ばしてほしい、マリスビリーそこまで考えてないと思うよ、と。