胃腸が弱くて増量に困っている人へ
僕はよく増量に悩む。小学生から大学生まで野球をやっていたこともあり,常に大きくなることが望まれてきた。そして大きい身体の自分が好きだ。しかし一方で,IBDということもあり胃腸がとても弱い。というより胃腸が弱くなる食べ方をする傾向がある。ここでは自戒も込めて,胃腸が弱くて増量に悩む人に向けてその手法を発信する。
まず,少し前談をさせてほしい。僕は高校生のときから身長は変わっていないのにも関わらず,
63 kg(高校時代)
76 kg(大学時代)
60 kg(クローン病再燃期)
68 kg(クローン病寛解期)
と体重の増減が激しい。大学卒業後にクローン病を患ったこともあり特に消化器が弱くなってしまったが,高校時代も決して快調とは言えなかった。いま振り返ると胃腸を弱らせる原因が2つあったと思う。そしてそれは今も気を付けなければならないと自覚している。経験とデータを交えて胃腸を強くする2つの手法を提案する。
1.お腹が空くまで食べないこと
これは実に本能的であり単純なのだが,増量しようと思うとお腹が空いていなくても食べようとすることが多い。確かに空腹は脂肪や筋肉を分解してエネルギーに変えるので,お腹を空かせた状態でエネルギー消費することは増量上良くない。しかし,お腹が空かせたほうが増量上良いことがいくつもある。
言うまでもなく経験上,空腹時のほうが唾液の分泌が良い。空腹時はおかずなしでも炊きたてご飯をおいしく食べられる。唾液の分泌が多いということはでんぷんの消化吸収が確実に良くなる。空腹は最高のスパイスというが,お腹を空かしてから食事を摂る理由はこれで十分かもしれない。しかし,これだけではない。
脳神経細胞は空腹時に増量できるように体に働きかける。
哺乳類が空腹のときに活性化される、脳の新規の神経細胞を発見しました。
この神経細胞は延髄の網様体にあり、視床下部で感知した空腹の信号を受け取ると、エネルギー消費(熱産生)を抑制するとともに、摂食や咀嚼を促進することがわかりました。
空腹信号によりエネルギーを貯蓄しようとするようだ。つまり,空腹状態を作り出すことで体は摂取カロリーを貯蓄に回してくれる。
さらには,腸内でも同様の働きが見られる。
飢餓などで生じるケトン体の 1 つ β ヒドロキシ酪酸はGPR41,交感神経
を抑制しエネルギー消費を減少させる。
https://doi.org/10.11405/nisshoshi.112.1939
すなわち,空腹を感じたときには脳神経細胞のみならず腸内でもエネルギー消費を減少させるようにできている。腸内細菌を整えるために16時間断食などのファスティング(断食)を勧める整骨院もある。
やはり,経験のみならず,脳や腸内の反応から見てもお腹を空かすことで良いことはありそうだ。ただ,増量時は空腹信号を受けたら即時に食べた方が良い。そのためにはお腹が空いたらすぐに食べ物を欲しがる赤ちゃんみたいになるが,増量のためならば…まあ仕方がないだろう。
2.よく噛むこと
唯一,消化活動の中で意識的にできることは噛むことだけだ。努力するとしたらコレにつきる。
噛むことによって唾液の分泌が多くなるため,でんぷんの分解は確実に進む。さらに食べ物を小さく細かく砕くことにより,胃における消化を助けることができる。しかし,それだけではない。
実は,噛むという動作そのものにより胃排出速度が向上するという研究がある。
咀嚼運動量や感覚情報量の増加が食後期胃運動を賦活する
https://doi.org/10.7144/sgf.18.72
ガムなどで噛む動作をしたあとの方が消化が早いというのだ。すなわち,よく噛むことにより胃をウォームアップすることができる。
3.まとめ
食欲は自律神経やストレス,胃腸状態により左右されるためお腹を空かすというのは自分の意思では難しい。しかし,いかなる局面でも噛むことは努力できる。胃腸が弱いけど増量したい場合,まず噛むことが大事だ。お腹がすいている時,どうしても早食いしたくなる。その気持ちはわかるがグッと堪える。その積み重ねが良い身体作りに繋がるだろう。