サッカー協会会長の発言を解読してみた【NHK生出演】


先日「発狂記事」を書いた中村です。

ハリルホジッチ解任でサッカークラスタが発狂している理由


NHKに田嶋会長が出演し、ハリルホジッチ監督の解任理由を語っていました。どういう意味だか解読できないという声がネット上に渦巻いていたので、とりあえず文字起こししてみます(職業病)。

一字一句を間違えずに起こすと理解しづらいので、多少は文語に寄せていますが、会話文のニュアンスは大体残すことにしています。

また、出演時間の全部について文字起こしをしたわけではなく、ネットでとりあげられ「だれか解読してくれ……」と嘆きの声が聞かれた部分についてのみ解読を試みています。

【趣旨】
・田嶋会長の発言は意味不明だけど、チーム内の信頼関係を最重要だと考えていることはわかる

・それは、信頼関係に基づいたチームなら勝っても負けても美しいというアマチュアリズム

・一方でハリルホジッチ監督は、何が何でも勝ちに行きたいというプロ中のプロ

・ハリルホジッチは温泉旅行の宴会で裸踊りをするべきだった

・次の監督は裸踊りが出来るかどうか選ぶというような類の絶望


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JFA田嶋幸三会長(以下、田嶋):試合に勝った負けたというだけで、監督の契約を解除するというのは考えていませんでした。

信頼関係が薄れる、コミュニケーションが薄れてくる、そういうものはチームを強くするための土台です。その土台が薄れてしまったと言うこと。

その土台がしっかりしていれば、仮に負けたとしても、新しい戦術や、新しいシステムを対応することが出来ると思いますが、残念ながらその信頼関係が薄れてきたということを一番の理由として皆さんに説明しました。

アナウンサー:その決断の岐路になったのが、先月、格下でもあるウクライナに勝てなかったことですか?

田嶋:試合の結果と言うよりは、内容だとか選手たちの望む気持ちなどを汲んでこの結果になりました。この結果だけじゃなくて、去年から我々は色々ディスカッションしていました。

アナウンサー:それは信頼関係が足りないとか、コミュニケーションが足りていなかったことに気づいていたということですか?

それだけじゃなくてそれをもっとよくしてはをサポートしようとずっとやっていたんです。

今回選手に聞いてわかったのですが、自分がでれないから監督を変えてくれなんて言うような選手は一人もいない。日本のサッカーを考えてくれているのがわかってとても嬉しかったし、スタッフも監督と実際に話したりしていました。

そして西野技術委員長もサポートする立場で、ハリルホジッチ監督と話し、色々変えてもらうようにいってきたのも事実です。

ただ、今回3月のところで、我々は何とかひっくり返すというか、段々バランスが崩れてきたようなものを何とか元に戻したいと思っていたものが、残念ながらもっと悪くなってしまったということですね。それで契約解除ということに至ったということです。

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「で、どういう意味ですか?」

と聞き直したくなる人が多数だろうと思いますので、考えてみましょう。この発言をボロクソに言うことも出来るわけですが、それもアンフェアで不毛なので、まずは、なるだけ田嶋さんの言いたいことに沿って考えてみることにします。

この会見が理解しづらい理由は、具体的な事実をベースとした話の組み立てではなく、組織内の「心象」が重大な論拠として構成されていることです。

具体的にハリルホジッチ監督の何が悪いのかというと、何も悪くないわけです。でも確かに、ハリルホジッチ監督は悪くて、自分は正しいのです。

「心象」で物事を評価するというのは、非常に危険な考え方で、自分のやっていることが絶対的に正しくなってしまいます。自分や自分の周囲が聖域になってしまうわけですね。

賢者とは自らについて疑いの目を向けられる人のことであるわけですが、そういう意味では愚者の発想であることは間違いありません。

ただ、賢者などそうそういないわけで、ほとんどの人は愚者であるとも言えます。ぼくも愚かな判断、愚かな行為をたくさんしてきました。理不尽な理由で人を嫌ってきたし、人について悪口を言ってきました。

心が整っていない頃は、SNS上に嫌いな奴の誹謗中傷を(以下自粛)。

「具体的な事実」に基づいて話すのに慣れているサッカークラスタにとって、田嶋会長が話している内容はまったく意味が分かりませんでした。しかし、田嶋会長とその周囲の人にとっては、「よくぞ言った!」なのだろうと思います。

では、少しずつ発言内容を検討していきます。

まず「試合の勝敗によって監督の解任を判断したわけではない」という発言ですが、これは事実だろうと感じました。

W杯への出場を決めているにも関わらず、親善試合で引き分けたから解任という事例は「狂気の沙汰」であることくらいはわかっていて、「試合の勝敗」を解任理由として掲げることには無理があることはちゃんと理解していることが判明しました。

先日の発狂記事を書いた時点では、それすらもわかっていなんじゃないかと思っていたので、微粒子レベルの小さい単位ではあるが少し安心した次第です。

さて、次の発言からは難易度があがります。頑張りましょう。

もちろん、文字起こしをした結果が、若干読みづらく感じられるのは話し言葉だからでもあります。試しに、自分で話した内容を文字起こししてみると、全然意味がわからないことを言っているものです。

田嶋会長はスピーチのプロではないので仕方がない……、いや、会長だからもっと上手でもいいかもしれないけど……、いや、もっと上手であるべきか……。んがぐぐ。

まぁまぁ、それはさておき、普通の人は文字起こしするとこうなるもので、「この人何言ってるんだ……」と戦うのがライターの仕事でもあります。

では発言。

「信頼関係が薄れる、コミュニケーションが薄れてくる、そういうものはチームを強くするための土台です。その土台が薄れてしまったと言うこと。」

チームメイトが密に連絡を取り合ってお互い信頼しあうのが一番大切なこと。

これが田嶋会長の正義だし、最も重視している考え方なのだろうなと感じた次第です。これは、部活的発想ともいえます。3年間同じ部活で活動することで、かけがえのない絆ができるわけです。また、そういった団結した状態では、強い力が出せるという考えがあるのかもしれません。

そして、日本代表でも部活的な信頼関係が発生するべきだと考えているのではないかと思います。

日本代表は、試合のときにだけ集まるバラバラの集団です。所属しているクラブも違うし、年齢も違います。プレースタイルも、趣味嗜好も、思想も違います。

だから、信頼関係を強化するのはもっとも難しい集団だといえます。しかしながら、結果を出すチームが、強い信頼関係で結びついているというのも事実です。そういう意味では、間違った考え方ではないかもしれません。

これからの代表には、言葉が通じないけど国籍は日本という選手が入ってくることも想定できます。

しかし、そういう選手が何人か入ると、コミュケーションの土台が揺らぐことになります。なので、オールジャパンの一致団結からは遠ざかります。

同様に、思想も、言語も異なるハリルホジッチ監督とは、どうしても部活的に仲良し感が醸成できないという問題がありました。

ふざけんな、そんなのてめぇの問題だろう!勝つためには、何でも取り入れるのがプロだろう!!

と言いたくなりますが、見ていると田嶋会長の発言がプロフェッショナリズムではないことに気づきます。

プロフェッショナリズムでは、自分や所属する集団の評価を高め、少しでも多くの金銭が得られるように努力します。一方でアマチュアリズムでは金銭が目標ではなく、スポーツを愛することが目的です。

田嶋会長の考えでは、みんな部活的に仲良くなって、その後もずっと仲良くしているという状態が、団体スポーツであるサッカーのもっとも美しいところで、お金や結果も、大事だけど、最優先ではないのだろうと思います。

いやいや、おまえはスポンサーとの利権で、金まみれじゃないか!

という世間の声もあると思うし、実際に稼いでいるとは思います。しかし、スポンサーとも、同じく部活的な仲間として付き合っている可能性もあります。ただ、これには論拠がありません。そうかもね、というお話です。

部活的な理想を追い求める田嶋会長に対して、ハリルホジッチ監督は、選手一人一人がより強い存在になり、さらに、戦術的な役割を確実に実行できるようになることで強いチームを作ろうとしました。そこには「仲良しのほうが力を発揮できる」というような発想は一切ないわけです。そんな考え方があることを想像すら出来ないのではないだろうと思います。

どうしてかというとハリルホジッチ監督が真っ先に変えようと思ったのが「日本人の軟弱さ」だからです。そして、その軟弱さの権化が田嶋会長的な部活仲良し論ということなのかもしれません。

そりゃ合わないよな、というお話ですね。次に行きます。

「その土台がしっかりしていれば、仮に負けたとしても、新しい戦術や、新しいシステムを対応することが出来ると思いますが、残念ながらその信頼関係が薄れてきたということを一番の理由として皆さんに説明しました。」

信頼関係が一番重要なものと考え、信頼関係が薄れたことで解任したと言っています。

「ふざけんな、てめぇ何言ってやがる!!」

というのが、欧州サッカーをはじめとしたプロに徹するマネージメントを当たり前のものとして見ているサッカークラスタの意見です。これも9割くらい一致するのではないかと思います。

日本では、チームビルディングのために、みんなで鬼ごっこをしたり、飲み会をしたり、裸踊りをしたりすることはとても重要です。

某大手広告代理店の営業担当者は、一緒に飲むと反射的に全裸になってしまう癖を発揮していました。そうやって裸の付き合いをする中で、特別な信頼関係を作り、仕事をとってくるわけですね。

そういう意味では体育会系組織と言われている大手広告代理店も、部活的仲良しさに基づいて、仕事をしていると言えるかもしれません。これも想像ですが。

そして、信頼関係があるチームなら、仮に負けたとしても友情は残るわけです。俺たちは負けたけど、頑張ったよなと思えたならば、次につながるわけです。

広告制作会社に勤めていた友人がこんなことを言っていたことを思い出しました(細部は曖昧ですが)。

広告のプロジェクトは失敗することもあるんだけど、その時も笑って次の仕事にいけるような関係にしたい。だから、バチバチぶつかりあうみたいなことはあんまりし、そういうタイプの人は結局やめてしまう。

サッカー協会から発信される空気感と、この制作会社にいた友人の言う空気感は一致しているように感じています。そして、そりゃ鬼のハリルは浮くよなぁとも感じるわけです。

部活的な信頼関係について調べてようと思い、田嶋会長の選手歴を調べてみてところ日本代表として7試合に出場しています(1979年から80年)。今ざっと調べたところでは大きな国際大会に出場したことはないようです。

ただ、同時期のW杯予選の記録は残っていました。

1980年12月
中国vs日本 記録

0−1で中国が勝利した試合で、田嶋さんは同年は代表に選出されているので、この試合に出ているようなメンバーと日本代表で共に過ごしていたと考えていいと思います。

監督 川渕三郎
Jリーグの初代チェアマンです。

田嶋さんも川淵さんも古河電工でプレーした選手というところに注目する必要があります。

清義明さんの「ハリル監督解任、電通「陰謀論」を深読みする」という極めて優れた論考には以下のように記述されています。

日本のサッカー界は「丸の内御三家」がつくってきたとも言われる。つまり、かつての社会人サッカーの強豪、古河電工・三菱重工・日立製作所の3社ОBが日本サッカーの保守本流であり、このメンバーが現在に至るまでサッカー界を支えている、別の言い方をすれば「牛耳っている」のである。

口の悪い人は、川淵さんが田嶋さんの黒幕だなんて言い方をします。川淵さんのツイートをみると「解任に敬意を表したい」と書いていることなどから同じ考えだということがわかります。

ちなみに先ほどの試合のメンバー表を見てみると、都並敏史、風間八宏、木村和司などが並んでいます。注目するべきは、原博実、岡田武史という名前もあることです(もっと詳しい人ならいろいろ知っている名前もあるかと思いますが)。

原博実さんといえば、霜田正浩さんとともに、ザッケローニやハリルホジッチの招へいにかかわった人物です。原博実さんとは会長選を争い、勝利した後は閑職に追い込まれ、追い出しているという話もあります……。先ほど紹介した清義明さんの記事を引用します。

ハリル監督を招聘した原博実氏は、かつて日本サッカー協会の会長選挙に出馬し、現職の田嶋氏と争ったことがある。結果は僅差で田嶋氏が勝利したのだが、選挙後には田嶋氏が原氏に対して2階級降格を提示し、「報復人事」を行ったと報道されている。これを避けて、原氏は下部組織であるJリーグの副理事長のポストに落ち着いた。
ハリル監督解任、電通「陰謀論」を深読みする

漫画『20世紀少年』のような話ですね。今のサッカー協会、あるいは、今起こっている事象の原因は、すべてあの頃の交友関係にあった……、というようなお話です。

外部からすれば「知らんがな、仲良しだろうが、仲悪かろうがちゃんと仕事しろ」となるわけですが、本人たちにとってはそれが世界の全てかもしれません。往々にして人というのはそういうものでもあります。

もしかしたら、一緒に代表で苦しい戦いをした仲間とは、その後もずっと信頼関係を持って仕事をしてきたという実感があるのかもしれません。

当時のサッカーは、マイナースポーツで、チームも弱く、お金も全然集まらない中で、海外まで遠征して試合をしてきたわけです。その中で培われた信頼関係は、その後も崩れることはなかったのでしょう。一部崩れれているように思えますが、「自分たちのほうが正しく、あいつらは裏切り者」と考えれば、まったく矛盾しません。

ともかく田嶋会長が、選手同士の信頼関係を重視していることと、それが現在の仕事にも繋がっていることがわかります。次にいきましょう。

「試合の結果と言うよりは、内容だとか選手たちの望む気持ちなどを汲んでこの結果になりました。この結果だけじゃなくて、去年から我々は色々ディスカッションしていました。」

これもかなり難解ですが、非常に日本的な表現です。選手がやめさせろと直訴したのではなく「こういった内容の試合をしてしまうようなハリルホジッチ監督が解任されたほうが、代表チームが良くなるはずだと選手は考えているはず」という類推です。

知的な作業としては、誰がどの程度不満を抱いていて、それを定量化し、解決可能かどうかを模索するべきです。しかし、こういった部活仲良し的な文脈では「空気を悪くするやつは悪」という断罪が成立するため、不満がたまってそうに見えることはのっぴきならない大問題です。

戦術がどうのとか、ワールドカップで勝つための定石がどうのとかは二の次です。とにかく平和で、みんな仲良しなままワールドカップにいって、勝っても負けても、可愛い後輩たちに慕われるというのが、もっとも美しい未来なのだろうと思います。

ちなみに田嶋会長は、「様々な」とか「色々」という言葉をよく使います。一方でハリルホジッチ監督は、物事を具体的にして整理します。

「我々は3つの点について議論した。1対1の強さ、プレッシングの強度、CKのディフェンスだ。」

同じ事を田嶋会長が言うとこうなります。

「1対1で勝つと言うこともとても大事ですが、大事なことは色々あって、我々は様々なことを総合的に判断しながら少しずつ、確実にチームを強くしようと考えながらやってきているわけです。その中には当然1対1でしっかり勝っていくと言うことも含まれますし、プレッシングもやっていかなければならない。そして日本のウィークポイントとも言われるCKへのディフェンスも重要な問題として含まれていました。これを一つの原因で解決しようとするのではなく、色々な話をする中で、信頼関係を土台として作りながら、一歩一歩進んでいくことが大事です。」

論理的ではなく、結論も不明瞭なので文が長くなります。そして何を言っているかもわかりづらいです。ただ、同じ仲間なら空気を察して、理解します。

一方で、ハリルは極めて論理的な話し方をします。効率がいいし、具体的だからわかりやすいわけです。

「アナウンサー:それは信頼関係が足りないとか、コミュニケーションが足りていなかったことに気づいていたということですか?

田嶋会長:それだけじゃなくてそれをもっと良くして、サポートしようとずっとやっていたんです。

今回選手に色々聞いてわかったのですが、自分が出れないから監督を変えてくれなんて言うような選手は一人もいない。日本のサッカーを考えてくれているのがわかってとても嬉しかったし、スタッフも監督と実際に話したりしていました。」

文字起こしがあっているのか若干不安になるので聞き直してみましたが、本当にこう言っています。

「自分が出れないからやめろなんて誰も言いません」
のところのトーンは強くメロディアスでした。この口調はなかなか魅力的で、一緒喋っていると好感度があがりそうな印象もありました。こういう口調で仲間のことを褒めれば、その人に愛されるようにもなるんだろうなという印象です。だからこそ会長選にも勝てるわけですね。

「自分が出れないからやめろなんて誰も言いません」というのが一番言いたいことなのでしょう。これを強く主張することは、出演前から決めていたと思います。だから、事実ではないかもしれないなとぼくは感じました。実際に、出場できない選手からの不満があったという報道はちらほらみつかります。

香川は「このタイミング(で外すの)か、と感じる。W杯に向けたガチの戦いを、僕たちが積み上げてきた戦いをやれる絶好の機会だと思っていた。(外れた理由は)分からない」と不安と不満を吐露した。
ハリル監督「香川はハートがダメ。闘争心が見られない」 精神面での成長を期待

出場できない選手からの不満はありますが、それは正当な理由があって言っているのであって、「俺を呼ばないのはおかしい」という理由で怒っているわけではないということですね。

書いていても何の事やらわからなくなりますが、こういうことです。

「俺は会社を首になった。首になったから言うわけでは断じてないが、そもそもうちの会社のやっていることは間違っている。これでは会社が成長しない」

でも、「いやいや、首にならなかったら言ってないでしょ」と突っ込みたくなる事案でもあります。

自分の感情が正しい。

こういう考え方が貫いているかなと思います。ぼくは元研究者なので理系ベースな考え方なのですが、「真実」を追い求めるための試みに感情は不要です。

事実がどれだけの確しからしさで事実なのかを考え、それを論理的に構築し、統計的な根拠を与えることで説得力を持たせます。「俺がこう思うから正しい!」というのはまったく通用しないのです。

ハリルホジッチ監督は、研究者的な事実ベースの理屈をこねる人なので、「感情的にわかりあえないから解任します」という説明は、まったく意味が分からないでしょう。

だから、ハリルホジッチ監督も意味不明で到底受け入れがたいと感じるわけだし、サッカークラスタ的にも「そんな理由は聞いたことがない」となるわけです。いや、日本国内ではちょこちょこある事案なので、サッカークラスタは聞いたことはあるわけですが……。

「西野技術委員長もサポートする立場で、ハリルホジッチ監督と話し、色々変えてもらうようにいってきたのも事実です。

ただ、今回3月のところで、我々は何とかひっくり返すというか、段々バランスが崩れてきたようなものを何とか元に戻したいと思っていたものが、残念ながらもっと悪くなってしまったということですね。それで契約解除ということに至ったということです。」

そして、最後のところが解任理由なのですが……。まぁこれも理由になっていないわけですね。

良いと悪いの判断が、自分が感情的に良いと思うかという点なので、ハリルホジッチ監督と話せば話すほどわかりあえないと思ったことでしょう。そういう意味では、確かに状況が悪くなっていったと感じたのかもしれません。

ぼくがサッカー的に怒っていることは「発狂記事」として表現しましたが、以前していた仕事の上司が、これとまったく同じしゃべり方をする人で、まったく仕事にならなかった経験から二重に怒っているというのもあります。

少しでも売上げを上げようとか、世界一のお店にしようとかいうことよりも、みんなが仲良くしていることが大事で、おまえは和を乱す(というか、俺が主役であるべきなので、おまえが目立つことは許せない)というような主張をされるわけです。

日本企業にはこういう上司が多いんじゃないでしょうか。どうでしょう。

上司の気持ちをつかむのはうまいので上には受けがいいのだが、理屈立てて説明できないから下からすると悪夢になるというようなタイプです。上には絶対NOを言わないが、下にはパワハラ気味であるというタイプですね。

時間を巻き戻してハリルホジッチ監督にアドバイスするとしたら、一緒に温泉に行って、一晩中酒を飲んで、「俺は勝ちたいんだ!だから必死なんだ!でもこんなに勝ちたいのは日本におまえがいるからなんだ!」と熱弁したらどうかと勧めてみます。

「俺は下の毛まで白くなってるんだぜ」とか言いながら裸踊りをかましましょう。きっと爆笑が取れます。そうしたら、田嶋監督はハリルホジッチ監督を全力で守る騎士になっていたかもしれません。

今回の発言を検討することで、田嶋会長が悪人でも黒幕でもなく、何の悪意もないということがわかりました。

田嶋会長は「今ここでハリルを切らないとみんなのためにならない」と本気で憂いていたし、みんなに感謝されると思っていたのではないかと思います。だって、緊急会見の時に少しニヤニヤしていましたからね。

ハリルホジッチ監督は、勝っても負けても日本を去ります。我々サッカークラスタは、その結果から学べることがあり、それが日本サッカーの発展に繋がると考えました。

しかし、田嶋会長の論理では、「日本を去ってしまうような人は何も残さない。今の状況は悪くなっていく一方だから日本人の監督にしよう。それであれば、勝っても負けても、一緒に戦った仲間としてこの先も信頼関係を持ち続けられるはずだ」ということになります。

ここまで書いてきたことが何かわかりますか?

絶望ですよ。

次の監督も田嶋会長を主としたサッカー協会が選出します。

だから、次の監督は裸踊りが出来るかどうかが大切になります。サッカー協会の仲間として入れるかどうかですね。サッカークラスタの皆さんは、誰なら日本の宴会芸になじめるかどうかを是非考察してください。虚しくなると思いますが。

田嶋会長と仲間たちとうまくやっていけることが最優先で監督が選ばれることが明らかなわけです。だから、日本人監督が選ばれた場合でも、「いやいや、おまえじゃないだろ!」という突っ込みが出てくること可能性もあります。

ただ、開き直って、感情論でチームをまとめて、勝っても負けてもチームの和が乱れることのないような「日本らしいサッカー」を模索していくのもいいかもしれません。

ただ、そういうサッカーをしていた時代の日本代表は、弱かったわけです。具体的に言うと、韓国代表には全然勝てなかったわけです。「世界のサッカーから学ぶ」という姿勢を持ち続けたからこそ、時折勝てるところまで引き上げることが出来ました。

しかし、今でも韓国代表のほうが、日本よりも強く、筋の通ったサッカーをしています。韓国代表のほうが応援したくなるチーム作りをしています。ファイティングスピリッツがあるし、デュエルも強いです。そして絶対に勝というという意志があります。

政治的なあれこれにはそれぞれ主張はあるかもしれませんが、それはサッカーチームの完成度とは別の話です。日本らしい仲良しサッカーをやってもなかなか勝てないと思います。

今回露呈した「勝っても負けても信頼関係が」という日本の意識は、戦いに赴く態度としては非常に軟弱です。「負けても」なんて予防線は1ミリたりとも張ってはいけません。

そして、軟弱な精神を持ったチームは、ワールドカップの強国にはまずいないでしょう。勝つか負けるかでサッカー選手としての人生はまったく違うものなります。具体的に言うと、生涯年収が億単位、10億単位で変わる可能性も十分にあります。

「仮に負けても仲間と信頼関係が持てれば」という発言をサッカー界隈では聞いたことがありません。惨敗すれば、国に戻った時に犯罪者扱いされ、勝利に導けば英雄なわけです。

今回の談話で、田嶋会長の考えていることはだいぶ理解できました。まったく支持はしませんが、ハリルホジッチと意思疎通ができずに、困っていたことも間違いないと思います。

確かに、今のサッカー協会が「感情」とか「信頼関係」とかを重視する状態では、勝利のために部活的仲良し感を後回しにするハリルホジッチ監督の元で、W杯を勝ち上がるのは難しかったかもしれません。

なので、田嶋会長のも理はあります。

ただ、ぼく個人は、解任されるべきなのは田嶋会長のほうだと思います。

そして、事実ベースでの議論と、論理的な構築を基礎として、日本サッカーの新しい形を模索し続けて欲しかったと思う次第です。

勝っても負けても仲良しならいいという趣旨の発言は二度と聞きたくありません。

しかし、これからは、「仲良し理論」ですべてが進んでいきます。

さぁみなさん、絶望するのはこれからですよ……。

ただ、ぼくはぼくで戦います。

プロフェッショナルに徹するサッカーをもっと深く学び、それを表現していくことで、日本サッカーの知識レベルをあげていこうと思います。


日本代表がW杯で勝ち上がっていくところが死ぬまでに一度は見たいんだ!!


この記事の後に、ハリルホジッチ監督や、サッカー協会について、サッカーメディアがどう報じているのかについて「キュレーション&考察記事」としてまとめを作りました。

今回の「解読」から日本村の風習がかなり大きな問題であったことが浮かび上がりましたが、キュレーション記事では、通訳やメディア関係者の証言などから、ハリルホジッチ監督をとりまくコミュニケーションの実態についても考えました。

14000字とかなりの分量で、6000字くらいまでは無料コンテンツです(以降は100円)。是非こちらもご覧下さい。


Vol.1はこちら



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