「鬼滅の刃」 無限城編の違和感
無限城編は非常にツッコミどころが多いが、中でも深刻なのは「鬼殺隊側が決定的に連携できていないこと」だ。
鬼殺隊側とは当主の産屋敷、柱や隊士、無惨討伐のため協力することになった珠世と愈史郎を指す。
そしてこの「産屋敷」「柱・隊士」「珠世・愈史郎」間での連携が全く取れていない。
具体例に触れる前にまず無惨と産屋敷の最終決戦に向けた準備について改めて確認してみる。
〈無惨〉
・鳴女に隊士の位置を補足させる
・無限城に鬼を集め下弦程度の力を持たせる
・産屋敷邸を探し、襲撃する
・事前に補足していた柱や隊士を無限城に落とし、強化した鬼や上弦の鬼に迎え撃たせる
何の対策もなしに産屋敷の前にノコノコ現れた点を除けば、鬼殺隊を葬る準備としては悪くない。おそらく鬼殺隊を壊滅させた後で禰豆子の居場所を特定し吸収、太陽を克服する計画だったのだろう。
続いて産屋敷。
〈産屋敷〉
・自らを囮に無惨をおびき寄せ家族もろとも爆発し、先制攻撃
・まきびしで回復を妨げ浅草の男の血鬼術で固定する
・無惨が隙を見せたところで珠世が薬をぶち込む
・柱を集結させ総攻撃を仕掛ける
・薬で弱体化させ夜明けまで猛攻を続ける
単行本の解説や作中の描写から無限城を地上へ排出することも作戦の内だったと考えられる。
一見おかしくないように見えるが、問題はこの作戦が全く柱に伝えられていないことだ。産屋敷の死後、最前線で戦うことになる柱が重要な情報を共有していないと分かる描写が、最終決戦では非常に多い。
例えば
・産屋敷の死後、息子が指揮をとり無限城の戦況を把握する様子から無限城に飛ばされることも想定内だったと思われるが、それを柱や他の隊士に伝えていない
・鳴女には愈史郎が最適と産屋敷が判断しているが、伊黒と甘露寺はそれを知らないため長い間翻弄される
・愈史郎の目くらましの札をほとんど使わない
などがそうだ。
そもそも五日以内に無惨がくることが分かったならその時点で柱全員で作戦を考えるべきだろう。伏せるのは産屋敷自身が囮になることだけでいい。
夜明けまでの持久戦も予想できていたのだから柱との話し合いは必然である。
また、23巻に書かれた無惨討伐の戦略で上弦の鬼の存在が全く考えられていないことも不自然だ。
さらに鬼殺隊と珠世の間でも情報共有ができていない。
珠世が4つの薬を使ったことや無惨の細胞破壊を止める血清の存在を、柱だけでなく新しく当主になった産屋敷の息子も知らない。
特に4つの薬に関しては愈史郎か悲鳴嶋あたりが一度でも切り札が残っているような素振りを見せていれば唐突感が薄れるのに、それもない。だから薬が取ってつけたようなものに見える。
最後の決戦は藤の花の家紋の家にも伝えられていると書かれており、煉獄の弟や蝶屋敷のアオイたちが祈る様子も描かれているため、最終決戦となることは分かっていたはず。
にもかかわらず柱はいきあたりばったりで戦う羽目になっている。
最終決戦に向け準備万端な無惨に対し、作戦を練るだけ練って伝えていない産屋敷、準備の出来ていない柱、協力する割に重要な情報を共有していない珠世。
この連携不足、もとい構成の未熟さにより無限城編はぐだぐだなものになってしまったのだ。