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やばい田舎の中学校社会科実践

 初めまして、ハトムギです。中学校で社会科を教えてます。

私が住んでいる場所はとても田舎です。サル、犬、キジに限らず、鹿や猪とも戯れることができます。(集まれ、リアルどうぶつの森。)

 そんな、ど田舎で中学校2年生を対象に取り組んだ授業を紹介します。内容は、「身近な地域の調査」です。


❶授業の導入

自分たちの住んでいる町の良さを発見すべく、「町を紹介するとしたら、どこへ連れていく?」と問いかけました。

「この町、何もないよ。」

 衝撃の一言が飛んできた。
教員なら、一度は経験したことがあると思うが、
「ああ終わった」と思う瞬間だった。
今回は、絶望選手権過去最速記録を更新した。

ぼうっと固まっていた私に、一筋の光が差し込む。女子生徒が手を上げて待っているではないか!他の意見もあるみたいだよ。どうぞ!

「田んぼ」

終わった。目の前が真っ白。家康が三方ヶ原で、ちびってしまった気持ちがよくわかる。今なら、家康と親友になれる。
「じゃあ、この町に何を作ればいいと思う?」と苦し紛れに問いかけた。

「AEON(イオン)」

 安西先生。早くチャイムを鳴らしてください。この後の記憶は、はっきりと覚えていません。

 授業後、私は猛省した。そして、脱糞した家康の『しかみ像』のごとく作戦を練り直した。

ー 人は悲しみが多いほど強くなれる ー

 そこから行動を始める。以前から存在は知っていた、

❷「地域おこし協力隊」の元へ。


すぐに、援軍を要請。いや、実際には、こちらから赴いた。#足で稼ぐ

 アポなしで会いに行ったため驚かれたが、学校の先生であることを伝えると、快く対応して下さった。

 授業のことを伝えると、「ぜひ子どもたちの意見を聞いてみたい」と言ってくれた。そして、「地域おこしアイデアを、生徒がプレゼンする」という授業が決まった。

後に、劉備玄徳も驚くことになる「三顧の礼」ならぬ「一顧の礼」だ。

 「一顧の礼」を発動する前に、注意がある。それは、管理職の許可を得ずに、まずは会いに行く事だ。とにかく会いに行く。
そして、許可は後から取りに行こう。仮に、今回はNGであったとしても、どこかで繋がる。ちなみに、「地域おこし協力隊」は役場の職員であり、公的な存在だ。その事を知ったのは、お会いした後である。

 話を戻す。次の日、「地域おこし」のアイデアを役場の人に、プレゼンすることを伝えた。「皆のアイデアが実現するかもよ」という言葉をそっと添えて。

「まじか…」「緊張する」という声もあったが、「これを提案したい!」と生徒は思い思いのアイデアを出し、プレゼン作りを進めた。しばらくたって、重要なことに気づいた。

AEONの案が消えた。

 一夜城のごとく、儚く、消えた。生徒が「本気になった」と思う瞬間であった。

 プレゼン当日。授業を聞きつけて、新聞社の方が駆けつけてくれた。ここで、重要なポイントがある。
それは、「新聞に自分の名前は出すな」である。代わりに、学校長の名前を入れてもらう。これは是が非でも入れてもらう。自分の手柄に絶対しない。それはなぜか?次の仕事がしやすくなるからだ。

 新聞は江戸時代から400年以上続く、情報ツールだ。この信頼度を舐めてはいけない。新聞に載るのは、学校長として名誉あることだ。もちろん、良い事で掲載される事に限る。
 私の次のミッションは、「桃鉄を学校に導入する」であった。おかげさまで、校長からは、「どうぞどうぞ」と言わんばかりのダチョウ並みの速さで許可が出た。

 プレゼンは、大成功だった。先生以外にプレゼンをする機会なんてそうそうない。フィードバックも頂き、大満足で終えた後、

❸さらなる急展開を迎える。


「これ、町長にプレゼンしませんか。」

 「え。できるんですか。」正直、驚いた。そして、少しビビってしまった自分もいた。。しかし、ここで終わって欲しくない。本当に実現する一歩手前まできている。(#現実味を帯びた夢は怖い。)
「やりましょう」と震えた声で話した。

 実際の町長プレゼンは、報道陣を前に代表生徒が行った。
生徒は、「スケボーパークを作りたい!」のプレゼンを始めた。

本気で実現させるために、この日までに着々と準備を進めてきた。そして、

❹田舎流行語大賞が生まれる。

「この町からオリンピック選手が生まれるかもしれませんよ。」

 町長の心に突き刺ささった。
このキラーワードは町長プレゼンの前、教頭先生からアドバイスを頂いて、考えたものだった。
どんな言葉が大人に響くのか?おじさんのことはおじさんに聞くと良い。#教頭も凄いぞ。

真夏の大冒険。

今度は大人の番ですと言わんばかりに、小さな町にのろしが上がった。
 そこからは、町長を中心に役場の方々がたくさん動いてくださったのだと思う。スケボーパークは現在、建設中であり、今年度中には完成見込みだ。

 この実践は、あまりにもとんとん拍子でうまくいきすぎた。たまたまうまく行って再現性がないように感じる。しかし、振り返ってみると偶然ではなく、必然だったと気づく。その理由を3つあげる。

❺田舎でPBLがうまくいく3つの理由

 まず、1つ目は、教員の信頼度だ。先生の信頼度は大企業以上である。地域おこし協力隊の方がすんなりと受け入れてくれなければ、そもそもスタートしていない。

 考えてほしい、誰が見ず知らずのおっさんの話を聞いてくれるだろうか?アップルで働いているから、話を聞いてくれと言われても誰が聞くか。初対面では完全に、怪しまれる。

 しかし、先生はどうだ?
先生というだけで、「おお!あそこの中学校の!」となる。なかなか、こんな仕事はない。
おそらく、今後、教員による地域おこし協力隊の奪い合いが日本中で繰り広げられる。なので、すぐに会いに行くことをお勧めする。
外部の方達は、「先生は忙しいから」と、何かやりたいと思っていても諦めているケースが多い。
実際に行動してみると、待ってましたと言わんばかりのおもてなしを受けることになるだろう。

 そして、2つ目。少子高齢化社会が起因している。どういう意味か。
町長や議員さんの多くは、高齢の方が多い。そして、その方たちにとって、生徒たちは孫だ。つまり、「孫がこんなに頑張ってるなら、人肌脱ごうじゃねえか」ということだ。
 名付けて、「おじいちゃんたちは凄いんだぞって所を、孫たちに見せようぜ大作戦である。」
日本は最高の環境が整っている。むしろ、少子高齢化社会だからこそ、チャンスが転がっている。

 最後に3つ目。田舎だからこそ実現した。都会などの大きな自治体になると、こうもいかない。田舎だからこそ、リープフロッグして、都会にはできないことを実現してしまう。

インド、アフリカの次は、「INAKA(田舎)」だ。
そのうち、メイドインジャパンの教育として普及していくだろう。

 20年後の町を20年後に生きる子どもたちが作る。最高の授業だ。

そして、この町を作った子どもたちは大人になる。自分の、子供にこう言うはずだ。

「これ、お父さんが作ったんやで」
「え!本当に!!お父さんすごい!」
「まあな、太郎は何を作りたい?」

「USJ!」

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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