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【短編小説 ルチアーノ -白い尾のオナガ- 4】Rain 雨

4 Rain 雨

雨はぽつぽつと降り出したかと思うと、あっという間に土砂降りになった。
「アズーラの言った通りだ」
ルチアーノは木の枝に急ぎ降り立ったが、苔で足を滑らせ、真下の水たまりにばしゃんと落ちた。
泥水で汚れた羽を繕っていると、いいことを思いついた。
「泥を塗ったら、青灰色になるかもしれない」
水たまりの泥をすくい取って尾羽に塗り広げると、鮮やかな青が淀んで、それらしく見えてきた。
ルチアーノは、尾羽を早く見せたくなり、なかなか止まない雨を恨めしく見上げた。
「少し重いけど、飛べそうだ」
小雨になるのを待って、仲間の住む森に向かった。
ねずみ色の雲の切れ間から、水色や薄桃色の空が見えた。
「じきに日が暮れる。急がないと」
いつの間にか霧のようになった雨の中、ルチアーノは先を急いだ。

仲間達の集う木々が見えてきた。ギューイギューイと、鳴き交わす声もする。
「見て! 僕の尾羽、青くなったよ」
ルチアーノは皆からよく見える枝に降りた。青い汁と泥が羽先から滴り、尾羽はみるみる白に戻っていく。
「なんだそのまだらな尾羽は! 偽物じゃないか」
「僕、青くなったんだよ」
鋭く睨むティランノに言い返した。
「嘘だ! 嘘つきは仲間じゃない。さっさと出ていけ」
両翼をばっと広げ、今にも飛びかかりそうなティランノに、ルチアーノはたまらず飛び立った。
「あいつの尾羽、前より白くなっていなかったか? 次に帰ってきたら、噛みついてやろうか、むしり取ってやろうか」
悔しい、悔しいと地団駄を踏むティランノに、取り巻き達はぶるりと羽を震わせた。

潜っても 潜っても 青い海(種田山頭火風)