【ショートショート】諸人去りて/聖なる誓い
クリスマスにちなんだショートショートを二作用意しました。
しみじみ話と笑える話を一つずつです。
小説の世界観づくりの一環として、『はと子劇場』は役に立っているのでしょうか、足を引っ張っているのでしょうか。後者のような気もしなくもないです。せっかくビルドしたワールドを自らぶち壊さぬよう、途中から有料にしました。
諸人去りて
薫子ちゃんと遊ぶのは決まって空き地だった。交代で歌うのが私達の遊びで、誰も来ない空き地はそれにぴったりの場所だった。学校で配布される『歌はともだち』という歌集やテレビの歌番組で流れる歌謡曲が私の主なレパートリーで、薫子ちゃんは賛美歌だった。互いが知らない歌を教え合っているようでもあった。
クリスマスを間近に控えたその日も、私達は歌い交わしていた。
私が歌い終わり、薫子ちゃんが歌い始めた。
諸人こぞりて 迎えまつれ
久しく待ちにし シュワ来ませり
シュワ来ませり シュワ来ませり
シュワ、シュワ来ませり
私も一緒に歌った。
その日私達はずっとシュワシュワと歌った。
気に入った私は、一人シュワシュワと歌いながら帰った。
薫子ちゃんが歌の意味を話すことも、私が聞くこともなかった。
薫子ちゃんはある日突然いなくなってしまった。
あとになって転校したと聞いた。
薫子ちゃんがいるんじゃないかと空き地に行ってみたりもしたが、時々睨んでくる野良猫さえいなかった。
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潜っても 潜っても 青い海(種田山頭火風)