新規事業に「リーガルチェック」は欠かせない!
こんにちは。弁護士・ビジネスコーチの波戸岡光太です。
皆さんは新規事業を立ち上げるときに必要な契約書は、どのくらいあるかご存じでしょうか?業務委託契約書、秘密保持契約書、雇用契約書など実に様々です。
今回は新規事業を開始するにあたり不可欠な契約書のリーガルチェックをはじめ、新規事業立ち上げに役立つ制度をご紹介します。
「リーガルチェック」って何をする?
リーガルチェックでは、単に契約書に間違いがないかをチェックするだけではなく、新規事業の場合には、その取引自体に法律に反している部分がないかどうかを確認し、検証します。
契約当事者間では合意ができていても、それが何らかの法令に違反していては、事業や取引自体を遂行することができません。通常の事業はもちろん、これまで経験のない新規事業を行う場合には、専門家によるリーガルチェックを受ける必要性は高いと言えます。
新規事業開始時にリーガルチェックが必要な理由
リーガルチェックを受けずに新しいビジネスを始めた場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。
先ず、法令違反を指摘された場合、新規事業が継続できないリスクが発生します。
行政指導が入り、サービスが提供できなくなったり、変更を余儀なくされたりすることもあり、法律に反したビジネスを行えば罰せられることもあり得ます。
また、契約書に不備があった場合には、相手から損害賠償請求、契約の無効を主張される可能性があります。サービスが継続できなくなれば、サービス利用者とトラブルになる可能性もあり、会社の社会的信用が低下したり、事業全体に影響が及んだりすることも考えられます。
それだけではありません。事業が成り立たなくなれば、新規事業構築にかかった資金の回収は困難になります。トラブルに対処するために専門家に依頼すれば、その分のコストがかかるなど、費用面でもリスクがあります。
リスクを防ぐために確認したい法規制
新たに契約書を締結する場合、「弁護士に契約書の作成そのものを依頼する」ケースと、自社で作成した契約書や相手方から示された契約書について「弁護士のリーガルチェックを受ける」の方法があります。自社で契約書を作成する場合に確認していただきたい法規制について、事業別にまとめました。
■決裁事業
決済事業でポイントを提供する場合には、資金決済法や割賦販売法などの対象になることがあります。ユーザー間でのやり取りを行う場合には資金移動業にも該当する可能性がでてきますので、これらの法適用対象となるかのチェックが必要です。
■BtoC事業
企業と個人間の取引では、消費者契約法や特定商取引法の適用が問題になることが多いです。BtoB取引と異なり、損害賠償責任の免責条項をはじめとして、企業が有利になる条項は、たとえ相手の同意を取っていても無効とされたりするので注意しましょう。また、個人情報保護法の対策もぬかりなく行っておく必要があります。
■美容品の販売事業
美容品や化粧品は、商品に含まれる成分や表示の仕方によっては、意図せず薬機法はじめ医療関係法の適用対象となるので、この分野のリーガルチェックを怠ってはなりません。
■仲介事業
ビジネスにおける仲介業には、必要な登録や許可、届出が多くあります。紛争解決には弁護士法、不動産の賃貸や売買の仲介には宅地建物取引業法、求職情報では職業安定法、投資情報には金融商品取引法などが該当します。
■食品販売事業
食品を巡っては、食品衛生法、食品表示法、食品安全基本法など、様々な食品分野の法律が適用され、また、取り扱う食品によって規制が異なる場合があるので、要注意です。
■運送事業
運送事業についても、行政との関係で種々の法律があります。例えば自動車で顧客輸送を行うときは、旅客自動車運送事業として許可をとる必要があります。
リーガルチェックの進め方
新規事業におけるリーガルチェックは、どのように進めるとよいのでしょうか。スムーズにリーガルチェックを進めるための3つのステップを紹介します。
Step1.ビジネススキームの分析
先ずは、法的なリスクはどこにあるのか、スキームの全てにおいて予め充分に分析することが重要です。
リーガルチェックした結果、問題点があり、変更を余儀なくされた場合でも、初めから網羅的に検討しておけば、いきなり対処困難な事態に陥ることはありません。
Step2.分析後の問題対処
リスクや問題点を洗い出すことができたら、次はその対処に移ります。
重要性や緊急性を考え、問題に応じた変更や回避策を講じることが必要です。どの問題から対処すべきかは検討が必要で、ビジネススキームの中核部分に関連する問題は、真っ先に対処すべきです。
また、新規事業については法整備が追いついていないこともありますので、その点も含めて考える必要があります。
Step3.質問&リサーチ
事前の調査では、法律だけでなく各所が出しているガイドライン、法的な背景などの資料も確認しておきましょう。判例や論文などのリサーチも時には必要になってきます。その上で、対処すべき問題について、関係各所へ直接確認が必要な場合もあります。
新規事業で活用できるさまざまな制度
新規事業に関連して活用できる制度もあります。利用するには相応の法律の知識が必要になったりますが、以下に挙げる制度を活用するのも一つの手段です。ただ、リーガルチェックそのものをしてくれるわけではないので、やはり、プロのチェックは必要です。
1.法令適用事前確認手続
ノーアクションレター制度とも言います。事業開始前に具体的行為について所管の行政機関に確認を求め、その行政機関が回答を行うとともに、当該回答を公表します。
2.グレーゾーン解消制度
産業競争力強化法に基づいた制度です。新しく始める事業が現行規制の適用範囲なのか明確でない場合、具体的な事業計画に即してあらかじめ確認できます。
3.新事業特例制度
新規事業が現行の規制では行えない場合、特例措置を提案することで、安全性の確保を条件として企業単位で規制の特例措置の適用を認める制度です。
4.規制のサンドボックス制度
ブロックチェーンやロボットなどの新技術や新しいビジネスモデルの実施が現行の規制との関係で困難である場合、事業者の申請に基づき、規制官庁の認定を受けた実証を行い、実証により得られた情報やデータを用いて規制を見直し、社会実装へと繋げていく制度です。
まとめ
新規事業を開始するにあたり、契約書のリーガルチェックは不可欠です。リーガルチェックでは法律や判例等との照合が必要ですが、場合によっては法整備が追い付いていないこともあります。事業のスムーズな開始や継続、そしてトラブル回避のためにも、ぜひ、プロである弁護士のリーガルチェックを受けることをおススメします。
私が新規事業におけるリーガルチェックの依頼を受けるときに最も意識していることは、“新規事業の仕組み”を正しく理解することです。時には、今まで私が聞いたことがないビジネススキームのリーガルチェックを行うこともあります。その際は丁寧なヒアリングと想像力を働かせることを欠かしません。
まずは、皆様の新規事業について、じっくりとお聞かせください。
新規事業には企業経営者の想いが詰まっています。可能な限りその想いを実現していただきたい。法律の見落としによって、その新規事業がブレーキを掛けられることがないよう、しっかりリーガルチェックさせていただきます。
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