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退職合意書の作成ポイント&拒否されないためにはどうすればよい?

こんにちは。弁護士・ビジネスコーチの波戸岡光太です。

退職に関する問題は、企業と従業員の双方にとって非常にデリケートなテーマです。特に「退職合意書」の作成やその同意を巡る交渉は、適切に進めなければ後々大きなトラブルに発展する可能性があります。今回のエッセイでは、退職合意書とは何か、そしてそれが拒否された場合にどのように対応すべきかについて詳しく解説していきます。


退職合意書とは何か?

 まず、退職合意書の基本的な役割について理解しておきましょう。退職合意書とは、会社と従業員が合意のもとで退職に関して交わす書面です。この書面には、退職の条件やその後の遵守事項が記載され、双方の合意が明確にされます。例えば、退職日や退職理由、退職に伴う金銭の交付、さらには退職後の秘密保持や誹謗中傷の禁止など、具体的な項目が記載されることが一般的です。
 
退職合意書は、在職中の債権債務を清算し、退職後のトラブルを防ぐための重要な手段です。例えば、従業員が退職後に企業秘密を漏洩したり、SNSで会社に対する誹謗中傷を行ったりするリスクを減らすため、退職合意書に守秘義務や誹謗中傷の禁止を盛り込むことが多いです。また、退職時に未払いの賃金や解決金が発生する場合、その支払い条件も明確にしておくことで、金銭トラブルを防ぐことができます。

退職合意書を作成するケースとその理由

退職合意書を作成するケースには、いくつかの典型的なパターンがあります。例えば、早期退職者を募る場合や、問題社員に退職勧奨を行う場合、また従業員が一方的に退職を希望した場合などです。これらの場合には、会社と従業員との間で退職に対する見解の相違が生じることが予想されるため、事前に退職合意書を作成しておくことが望ましいとされています。
 
また、退職後における企業秘密の漏洩リスクや、SNS上での誹謗中傷などのリスクを軽減するためにも、退職合意書は重要です。これにより、退職後のトラブルを未然に防ぎ、企業としてのリスクマネジメントを強化することが可能となります。

退職合意書の書き方と注意点

退職合意書に記載する内容は、会社や従業員によって異なりますが、一般的には以下のような項目が含まれます。
 
1.合意退職の確認
 退職が会社からの一方的な解雇ではなく、合意の上で退職したことを明記します。
2.離職理由
 従業員が退職勧奨に応じた場合は会社都合、自己都合で退職する場合はそれを記載します。
3.退職日までの出勤の要否
 最終出社日や業務引き継ぎに関する取り決めを記載します。
4.退職時の金銭交付
 解決金や退職金など、退職に伴う金銭の支払い条件を記載します。
5.私物・貸与品の扱い
 従業員に貸与していた備品の返却に関する規定を記載します。
6.守秘義務
 退職後の企業秘密の保持についての取り決めを明記します。
7.口外禁止、誹謗中傷の禁止
 退職合意書の内容や合意に至った経緯を口外しないこと、相手を誹謗中傷しないことを規定します。
8.清算条項
 退職に伴う全ての債権債務が清算されたことを相互に確認します。
 
これらの項目を盛り込むことで、退職後のトラブルを防ぐだけでなく、退職に際しての双方の理解を深めることができます。

退職合意書に法的拘束力はあるのか?

退職合意書は、法的に義務付けられた書類ではありませんが、双方が合意し署名捺印することで一定の法的拘束力を持ちます。また、この書面を作成すること自体が、会社と従業員の双方に自覚を促し、違反行為をしようという動機を抑止する効果も期待できます
 
ただし、合意書に盛り込む内容によっては、法的に有効かどうかの判断が難しいケースもあります。特に、「引抜行為の禁止」や「競業避止義務」、「違約金」などを規定する場合は、専門家に相談して適切な内容にすることが重要です。

退職合意書を拒否された場合の対処法

退職合意書は、会社を守るために作成されることが多いため、従業員がこれを拒否することもあります。退職合意書を拒否された場合、無理に従業員を説得して署名させようとするのは避けましょう。無理に署名させた場合、その合意書は自由意思によるものではないとされ、効力が否定される可能性があります。
 
従業員が退職合意書を拒否する理由としては、「会社に有利な条件ばかりが記載されている」、「自分にとってメリットがない」と感じていることが多いです。このような場合、従業員に退職合意書を結ぶことのメリットをしっかりと伝えることが重要です。
 
例えば、退職時に解決金を支払うことで、従業員に金銭的な安心感を与えることができます。また、退職後に企業秘密を守ることや、SNS上での誹謗中傷をしないことを従業員に説明し、相互に信頼関係を築くことも重要です。

専門家への相談を検討しよう

退職合意書を巡る交渉がうまくいかない場合、早い段階で法律の専門家に相談することをお勧めします。労使問題は法律が関係する専門領域でもあり、問題がこじれる前に適切な対応をすることでトラブルを未然に防ぐことができます。
 
弁護士に相談することで、退職合意書の内容を適切に見直し、従業員との交渉をスムーズに進めるためのアドバイスを得ることができます。また、従業員とのコミュニケーションを円滑に進めるための具体的な方法についても、専門家からのサポートを受けることができるでしょう。

最後に

退職合意書は、企業と従業員の双方にとって重要な書面です。この書面を適切に作成し、双方が納得した形で退職を進めることができれば、退職後のトラブルを大幅に減らすことができます。
 
企業としては、退職合意書を作成する際に従業員の意見を尊重し、相互に納得のいく条件を盛り込むことが求められます。そうすることで、従業員が退職後も企業に対して良好な印象を持ち、社会的な信頼を維持することができるでしょう。
 
退職合意書を巡る問題に直面した際は、焦らずに冷静に対処し、専門家の力を借りることで最良の結果を得られるよう努めましょう。これにより、企業のリスクを最小限に抑え、円満な退職を実現することができるはずです。

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