機械設計エンジニアを面接する方法
たまには本業のサラリーマン話でも。
当社は基本的に中途採用に限定していますが、即戦力の社員を採用しません。それはなぜか。
即戦力は給料が高いからです(笑)。
それも理由の一つですが、もし同じ業種だったとしても会社によって仕事の仕方は違います。即戦力になる人に当社のやり方を教えても「前の会社では」「こうした方がいい」と言い始める人が多いのです。それはチームワークを乱す原因になるのです。
だから私が人材に求める要素は少ないです。
1. 設計基礎を学校で学んでいる(前職は問わない)
2. 機械/工具が好き(当社はメーカーです)
3. 緊張感無く人と話せる
4. 持ち物にこだわりがある
5. 躾ができている
これらを新人面接で見る私のコツをまとめてみました。
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1. 設計基礎を学校で学んでいる
応力計算や強度計算なんて、毎日するものではありません。ただし機械設計には「この重さなら、これくらいのボルトが4本くらいあればいいかな」という感覚は必要です。面接では「長さ1mで20kgの物をボルトで固定するなら何を何本?」と質問します。動作や振動,耐用年数は条件にしないので、正解はありません。
前職を問わないのは、機械を学んだのに他の業界に行って、また機械業界へ戻ってこようとしている人だからです。違う仕事をしてみて「やっぱり自分は機械が好きだ」と思ったか、高収入を目指して自分のスキルを活かそうという理由が多い。事情や真意は面接では読み取れません。
面接時には「この電話機を60秒間でスケッチして」と紙と鉛筆を渡します。スケッチというのが引っ掛けで、普通の人は斜めから見た投影図をデッサンするのですが、デキるエンジニアは3面図を起こします。
2. 機械/工具が好き
毎日毎日機械を触る(考える)仕事ですから、嫌いではできません。好きな方が興味も湧くし、なぜこうなっているかという疑問も湧くのです。単純労働のように労働力を提供する仕事ではなく、頭で考えて体を動かす仕事なので、やっぱり好きな方がいいのです。
それを見抜くのは「趣味がそれ系かどうか」です。バイクやクルマ,自転車,パソコンなどが趣味で、それを自分でイジっているかどうかがポイント。何をイジってどんな失敗をしたかを聞けば、どれだけ好きかが分かります。
3. 緊張感無く人と話せる
エンジニアとはいえ、客先に出向いて打ち合わせをしたり、装置立ち上げでお客様に説明したりします。この時に緊張で話せなかったり、違和感(嫌悪感)を与えるような人は会社の代表として派遣できません。
面接の場はとても緊張します。30分程度話してから、趣味など仕事以外の話をしていても緊張感が溶けない人は、初めて会うお客様と打ち解けることは難しいと判断しています。エンジニアは自社製品を通して、お客様とコミュニケーションする必要があるからです。
4. 持ち物にこだわりがある
面接時の腕時計・ペン・携帯・バッグ・スーツ・ネクタイ・靴、なんでもいいんです。自分の持ち物にこだわりがあり、なぜそれを好んで選んだかを話せる人はエンジニアの素質があります。エンジニアはモノづくりにこだわる側の人ですから、自分が選ぶモノはこだわりがあるモノを選ぶべきという持論です。
5. 躾ができている
ここまでの面接で見てきた所作や話し方、スーツの着こなしなどでは見抜けないのが躾です。なぜ躾が必要かというと、製造業において【5S】整理・整頓・清掃・清潔・躾が重視されるのですが、躾だけは会社で教育できないのです。
これを見抜くのは【箸の使い方】で確認するのが一番です。躾ができていれば箸は使えます。ある会社では社長と焼魚を食べるのが面接らしいのですが、さすがにそれはできないので箸さばきだけを見ます。
割り箸を使って、小さなナットを時間制限無しで10個移動させてもらいます。これは意外と性格が出るテストで、ナットの裏表を揃えたり,一列に並べたり,ピラミッド型に並べたり。手先が器用かどうか、正確さとスピードどちらを優先するかなども確認できます。
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以上すべてではありませんが、私が機械設計エンジニアを面接する方法です。同じ業界の方は少ないと思いますが、採用面接を担当する方の助けになれば幸いです。