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刃物専門編集者の憂鬱 その6 「え、オレが選ぶんすか!? 2023 - 2」

こんにちは。「編集者&ライターときどき作家」の服部夏生と申します。
肩書きそのままに、いろいろな仕事をさせていただいているのですが、ちょっと珍しい「刃物専門編集者」としての日々を、あれこれ書いていこうと思います。



■JKGナイフコンテストの審査会、行ってきましたよ。


前回も書いたが、日本における最大規模のナイフコンテスト、「JKGナイフコンテスト」が今年も開催され、その審査会が先日行われた。

 応募総数は39点。これらが一堂に並べられた中を、審査員たちが眺めながら、選考していくのである。

 今回で38回目。僕が審査員の末席のそのまた末席を汚すようになって何回目かは忘れたが、個人的には、過去最高のクオリティだと感じた。

 だから、選考は大変だったけど、ものすごく楽しかった。

 今回の受賞作はもとより、応募作は、2023年の10月 21日(土)と 22日(日)に東京・銀座の時事通信ホールで開催されるJKGナイフショーで展示される予定だ。興味のある方が、ぜひとも足を運んで実物を見ていただければと思う。繰り返すが、ほんと、力作ぞろいである。

 どの作品が受賞したかは、ショーでの公式発表をお待ちいただくとして、ここでは、審査会直後にお伺いした審査員の方々のコメントをご紹介しようと思う。掲載は伺った順、敬称略である。


■審査員の方々の総評=「今年はレベルが高い」


鈴木康友(JKG会長)

ここ数年、コロナ禍でリモートでの選考がメインになっていたので、一堂に会して選考することは久しぶりでした。やっぱり実物を目にすると、いいですね! ナイフは道具ですから、実際に手に取ることで、魅力が何層倍にもなって伝わってくる。改めて、そう実感しました。力作揃いでしたので、一同、選考にも力が入りました。

堀 英也(JKG理事)
今年の作品は、どれもレベルが高くて、驚かされました。私もナイフを作っているのですが、うかうかしていられない、と感じました(笑)。(編注:堀さんは、2018年JKGナイフコンテスト・優秀シースナイフ賞、2019年・JKG大賞を受賞している。作っている、というレベルではない作家です)

岩﨑琢也(鈴木メモリアル賞選定者)
工作精度とか研磨技術では研鑽して世界レベル的にもそれらしい作品にはなっていますが、全てがナイフモドキを超えてはいない感じがします。外国人が造る日本刀、着物、和食、俳句のような感じです。原点に戻ってナイフとはなにか?を突き詰める必要があると感じました。(編注:コメントをご送付いただきました)

井上 武(JKG理事)
素晴らしい作品ばかりで、いいものを作ろうという強い思いを感じました。毎回、出品作のレベルが上がっていっていることも、嬉しい限りです。JKGのナイフメーカーのクオリティは世界的に見ても高いと感じてます。今度のJKGナイフショーなどで、プロとして活躍する作家さんたちの作品を手に取っていただいて、さらなるレベルアップを目指していただきたいですね。

山本 徹(JKG会員)
今年は、バラエティ豊かな作品が揃ったと感じました。フォールディングナイフ作家としては、フォールダー(折りたたみナイフ)の数が多かったことも、とても喜ばしい(笑)。ナイフ制作は思った通りの出来にならないことも多いと思うんです。それでも挑戦をし続けて、その人にしか出せない個性を、表現していただきたいな、と思っています。

相田東紀(JKG事務局)
おかげさまで今年も多くの応募をいただきました。初応募の方も何名かいらっしゃり、ナイフメイキングの裾野の広がりを実感しました。X(旧Twitter)をはじめとするSNSで、制作途中の写真などを公開してもOK、としたことで、ネット上での盛り上がりもあったように思います。応募作は、JKGナイフショーで展示の予定です。ぜひご覧になっていただければと思います。



■審査員の方々の「推し作品」も伺いました。

 審査員の方々には、今回特に印象に残った作品についても伺ってみた。受賞作とは無関係で挙げていただいているのだが、念のために、作品名は伏せ字にさせていただき、JKGナイフショーでの発表後に、公開させていただこうと思う。
(23/10/22 公開しました!!)

鈴木康友(JKG会長)
今年は、非常にレベルの高い作品が揃ったと思いますが、中でも個人的に印象に残ったモデルは、南陽介作「八枚切(やまいぎり)」でした。今までにないデザイン。「ナイフ」の可能性を広げるという意味でも、非常に意欲的な作品だと感じました。

堀 英也(JKG理事)
大城将宏作「ストレートハンター」が特に印象に残りました。非常に洗練され、完成されたデザイン。ベースがしっかりしているから、遠くから見て、彼の作品だとすぐにわかる「個性」がより引き立つ。すばらしいと感じました。

井上 武(JKG理事)
特にアートナイフに印象的な作品が多かったように思います。独自性の高いデザインやアイデアが表現されている作品を拝見すると、新しい可能性を感じさせられて、嬉しいですね。

山本 徹(JKG会員)
私も、大城将宏作「ストレートハンター」が印象に残りました。オーソドックスなラブレススタイルに、自分らしさをうまく組み入れて、個性がしっかり出ていると感じました。

相田東紀(JKG事務局)
コンテストの応募作には、毎年レプリカ作品も集まるのですが、その多くは、ラブレスを筆頭としたクラシカルなモデルを元にしたもの。そういった意味で、松田菊男さんの作品をベースに、加工などに独自性も組み込んだ、小林慶次作「Ultimate Twilight 2 (究極の黄昏2号」は、新しいスタンダードの到来を感じさせられて、印象に残りました。

■『ナイフカタログ』ってイカした本があるらしいよ。

 ちなみに僕はホビージャパンという出版社から出ている、刃物に関する本の編集などを担当させていただいている。
 今回のコンテストの記事も、2023年11月15日発売予定の『ナイフカタログ』等で紹介させていただく予定だ(リンク先は昨年の『ナイフカタログ』です)。

 こちらもぜひチェックしていただきたい。



⚫︎追記(23/10/13)
このnoteのマガジン「刃物専門編集者の憂鬱」は、服部夏生という個人が運営しているメディアである。必要と感じた場合は、個人・団体に事前に許可を得るし、発言・登場する方に確認を取る。だが、このマガジンに出ているものは、僕が最終的に掲載の可否の判断をしている。
掲載の責は服部夏生にあり、他の団体・個人にはありません。


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